名作映画の「パロディ版」を制作して、そこに飼い猫を主演させた一連のビデオが、インターネット上で大人気です。現時点で、ユーチューブには35万人以上のフォロワーがおり、約70万人ものファンが、インスタグラムに注目しています。
猫はなぜインターネットでブームなの?
インターネット上では、まだまだ猫ブームが続くようです。特に今、世界中が先の見えない状況にある中で、いったなぜこれほど猫に人気が集まるのでしょうか。答えは簡単ではありませんね。
実際、多くの科学者や研究者が、どうしてこれほど人々が猫に魅入られるのか探っていますが、確たる答えは見つかっていないのです。
それにもかかわらず、いろいろな仮説があります。例えば、猫は人間の赤ちゃんに似ていて、大きな目や小さな鼻は、両者に共通の特徴です。だから進化論的には、人間が猫好きなのは当然だとする科学者もいます。
さらに、ラドハ・オミーラさんは、猫の「自意識の欠如」のせいで、人気があるのだといいます。
「つまり、このような自意識のなさは、現在の消費社会では珍しくなったんです。というのも人間は、他人に見られることを常に意識しています。その一方で、オンラインのビデオで撮影された猫たちは、まったくカメラを意識していません。」
「猫の映像を見ることで、人々は2つの喜びを感じるのです。1つは、監視社会から自由になった自分を想像してみる喜びです。そしてもう1つは、管理監視社会なんて、大した問題じゃない!と感じる喜びです。」
と彼女は記事に書いています。
こういった説明は、まだまだほかにもいろいろありますね。
名作映画「パルプ・フィクション」に猫が登場!
でも今は、猫がインターネット上を支配しているという事例のひとつを見ることにしましょう。こちらのビデオは、「アウル・キティ」という名でユーチューブに投稿されたものです。
猫好きなだけでなく、タランティーノ監督の名作映画「パルプ・フィクション」のファンなら、これは垂涎ものです。
こちらのユーチューバーは、自分たちのかわいい飼い猫リジ―を出演させて、名作映画「パルプ・フィクション」のミニ・パロディ版を作り上げました。インターネット上で大人気になっています。(なかには、パロディ版は、オリジナルよりさらによい、という人もいるほどです)

https://www.youtube.com/watch?v=H7G1yjDfwL4
2年前から猫出演のパロディ映画を制作
実は、このユーチューブのページは、映画製作者でアニメーターのティボ・チャーロッピンさんと、作家でウェブサイト編集者のオリビア・ブーンさんが運営しています。
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この2人は、名作映画やテレビ番組のパロディを次々に制作していて、いつも猫のリジ―が出演しています。作品は、人々からとても愛されていて、現時点でユーチューブには35万人以上のフォロワーがおり、約70万人が彼らのインスタグラムをチェックしています。
「2018年の11月に始めたのですが、その時にもう、ぼくはフリーのビデオ編集者として、自宅勤務をしていました。1つの仕事と別の仕事の合間にも、創作的な活動を続けようと思ったんです。」
「すでに友人や家族向けに『おもしろビデオ』を作り続けていたので、『猫のリジ―を登場させて、おもしろおかしいビデオを作ってみようか』と思い立ったんです。」
「そういうわけで、アイデアは浮かんだんです。おまけに、リジ―はとてもかわいくて一緒に遊ぶのを喜ぶので、これは難しくないだろうと思いました。オリビアもぼくも、映画が好きなので、『ジュラシック・パーク』にリジ―を登場させたら、おかしいだろうと思ったんです。」
「オリビアはこの考えを気に入って、友人たちと相談して、企画が始まりました。ビデオを投稿するのに、アカウントを持っていたほうがいいだろうと、ユーチューブに登録したとき、『アウル・キティ』という芸名も生まれたんです。」
「オリビアと僕は、いまも楽しい趣味としてこの企画を続けていますし、リジ―もまた、背景のスクリーンの上で遊ぶのが大好きなんです。こちらは当初と何の変わりもないのですが、いまや世界中にファンがいるようになりましたね。」
「アイデアは、ごく自然にわいてきます。猫と背景を、おもしろおかしく組み合わせる方法を考えるだけのことなんです。リジ―を既存の映像、たとえば映画の場面に置いてみると、いい感じになるんです。」
「新しいビデオを作るのは、平均して2週間ほどかかります。どれも内容はいろいろで、それぞれ苦労もありますが、やりがいのある作業です。制作中も、いろいろおもしろい出来事があるので、たいてい新作発表の前に『舞台裏の話』を公開しています。これも人気みたいです。」
とティボさん。
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保護猫だった主演の「アウル・キティ」
リジ―はいま3歳で、赤ちゃんのときに、保護施設から引き取られてきました。
「3歳のアウル・キティの本名は、リジ―ですが、赤ちゃんのときから『アウル』と呼んでいます。なぜかというと、目が真ん丸で、洋なし型で、夜になるとよく見えなくなるからなんです。ソーシャルメディアのアカウントの名前を考えていたとき、ユニークで覚えやすい『アウル・キティ』がいいと思ったんです。」
と、ティボさんは説明しています。リジ―の性格については、
「とても優しく、ひょうきんで、好奇心いっぱいです。もう1匹の猫ジュリエットと抱き合ったり遊んだりするのが好きで、2匹はまるで姉妹のようです。撮影裏の映像も公開し、ファンのみなさんにリジ―の本当の姿を知ってもらうようにしています。」
とティボさんは話します。でも、実際の猫を出演させてビデオにするのは、難しくないのでしょうか。
「猫を撮影するのは、すごく忍耐心が必要です。大変ではありますが、リジ―のムードがちょうどいい状態で、場面にぴったり合ったタイミングのときは、すごく簡単に進みます。」
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「猫と良い関係を保って、あれをしたらこう反応する、と熟知していることが大事ですね。猫は本能で反応するので、そういう意味では、驚くほど予測可能です。」
「とくにリジ―は極端に遊び好きで、気のいい猫なんです。だから、いっしょにしごとをするには、最高ですよ。」
ビデオのアイデアについてもティボさんは語っています。
「オリビアと僕は、ブレーン・ストーミングをしてアイデアを出し合い、それをお互いに比べ合います。何かおもしろくておかしい、それでいて技術的に可能なアイデアに行きつくと、とにかくやってみるんです。フォロワーからも提案をもらったり、ファン投票で次の企画を決めたりします。」
「これまで、『スター・ウォーズ』『ハリー・ポッター』『ジュラシック・パーク』『ヒックとドラゴン』『シャイニング』『タイタニック』『フィフティ・シェイズ・オブ・グレイ』『卒業白書』などの名作映画に、アウル・キティは出演してきました。『ゲーム・オブ・スローンズ』や『ライオン・キング』『ストレンジャー・シングズー未知の世界』にも登場しています」と、ユーチューブの説明にあります。
リジ―の飼い主は、新作パロディ作品への提案も歓迎しています。
リジ―は保護施設から引き取られた猫ですが、ティボさんとオリビアさんは、こういう猫をぜひ救ってほしいといいます。
「こんなに評判になるとは思わなかったのですが、ここまで多くの人々が見てくれるようになったので、ぼくたちも、猫を保護施設から自宅へ引き取ることを進める活動に協力しています。リジ―を引き取った、地元の保護団体と協力して、『ペットショップやブリーダーから買うのではなく、保護された猫を引き取って家族に迎えよう』というメッセージを広めるようにしています。」