保護猫の一時預かりボランティアをしている女性は、多頭飼い飼育崩壊によって手放され、施設に収容された30頭以上の猫の中に運命の出会いを感じ…。
劣悪な環境で繁殖し続けた猫たち
事の始まりは、賃貸アパートで猫を多頭飼いしていた飼い主が、悪臭等のトラブルで立ち退きを余儀なくされたことでした。
その猫の数は30頭以上!
飼い主は立ち退くか猫を手放すかの二択で、猫を手放すことを決め、保健所に引き取りを依頼したのです。
保健所職員と保護団体のスタッフ数名が現場に向かうと、2DKの掃除されていない室内は悪臭と排泄物とゴミが散乱している状況。
空の食器と空の水入れが、足下に転がっていたと言います。
30頭以上の猫たちは子猫から成猫までいましたが、悪臭と汚れに身をまとい、劣悪な環境と食事のせいかほとんどが下痢をしており、感染症や泌尿器トラブルを抱えるなど、健康状態に問題も見られました。
飼い主の話では、もともとは、メスのスコティッシュフォールド1頭。同棲相手がオス猫を保護して連れ帰ってきたことで、気づいたら子猫が生まれていたそうです。
室内飼いで不妊手術をしていなかったため、発情のたびに親子や兄弟で交配して数は増えていく一方。そしてこの状態にまで至ってしまったという典型的な多頭飼育崩壊でした。
30頭以上の猫が収容されましたが、ボランティアの女性が気になったのは生後3ヶ月ほどの大きさの2頭の子猫です。
折れた耳に短く太い手、足先は丸々としていて一見愛らしい外見ですが、軟骨の形状異常による「骨瘤」という遺伝性疾患の症状でした。
もともとスコティッシュフォールドは先天性疾患を抱えやすく、近親交配ともなればその確率は格段に高くなります。
先天性疾患がある場合、通常の里親希望者への譲渡はないのが現状です。予後を見据えて知識のある人への譲渡か処分しか残されていません。
ボランティアの女性は、普段は動物病院で看護師をしています。
しかし、知識と経験があっても障害のある猫を引き取るには不安があり、なかなか踏み切れなかったそうです。
女性は保護施設でお世話のお手伝いをしていましたが、猫に罪はない、動物看護師として運命の出会いかもしれないと考えるようになり、お迎えすることに決めたのです。
お迎えしてからの新たな課題
先住猫との面会もクリアし、女性の家族の一員に加わった子猫は『ぐりこ』と名付けられました。
これまでトイレで排泄するという習慣がなかったぐりこは、あちこちに排泄をしてしまうため、トイレを覚えてもらうまでに3ヶ月かかったそうです。
更に、保護した当初から抱えていた下痢や軟便といった状態はなかなか改善されず、床に落ちている便を踏んでしまうこともしばしば。
病院での診断は大腸炎だったそうです。
「排泄のことではしばしば悩まされますが、ぐりこの性格と愛嬌の良さはピカイチ」だと女性は語ります。
マイペースとツンデレで寄り添うことがなかった同居猫たちとも、ぐりこお得意の甘え上手で寄り添う姿が見られるのだとか!
迎え入れて本当に良かった
大変だと感じていたことが、いつしか日常の一コマとなり、純粋で真っすぐで愛らしい姿に癒される日々。
それまでの環境や障害、悪癖などは、取るに足らないことだと女性は言います。
猫に罪はなく、猫に寄り添い、理解してあげることでいつか解決策は見つかるのです。