イギリスの退役軍人のティムは友人2人とともに、戦時下のウクライナでミニバンを運転してライオンと狼をルーマニアに避難させた。ミコラーイウ動物園も動物のために経済的支援を求めている。
ライオンと狼をミニバンに乗せてルーマニアに運ぶ

出典:https://www.boredpanda.com/brits-rescue-zoo-animals-ukraine/
イギリスといえば女王、ビッグベン、スコーン、アフタヌーンティー、ロンドンブリッジなどを思い浮かべる方がほとんどでしょう。でも、イギリスに住んでいる私のような人間に言わせると、最も常軌を逸した人間、最もおもしろい人間、最も心の温かい人間でいっぱいなんです。それで、今回紹介するようなことも起きるのだと思います。
ティム・ロックスと2人の友人は、ウクライナの南東でロシア軍との前線から20キロのところにあるザポリージャから動物を助けるという任務を引き受けました。侵略者のおかげで危険にさらされている動物の命を助けるためにこのような行為が必要になったのです。

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ティムは45歳のイギリスの退役軍人で、この話のときはウクライナのリヴィウにいましたが、以前はイラクのクルド自治区のメンバーといっしょにISISと戦っていました。
ティムはウクシライナでできるだけたくさんの人を助けたいと思っていましたが、偶々ホテルで会った自然保護論者からザポリージャの動物園にいるライオンと狼の困難な状況を聞き、これは自分たちの天職だ、一肌脱がなければ、と思ったのです。
ティムは友人2人に声をかけ、3人で、動物園にいるライオンと狼を助けるために戦時下のウクライナで過酷な1200マイルの旅をすることに決めました。
3人はまず、ケージの寸法を見て動物たちをどうやってバンに乗せるか検討しました。そして、トイレ用品、おむつ、粉ミルクなど、ザポリージャにまだとどまっている人々のための支援品を乗せて出発しました。東に向かって交代で運転して24時間走り続け、いろいろなチェックポイントを通過して動物園に着きました。

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ザポリージャに到着してみるとライオンのシンバはすでにケージに入っていました。狼のアケラはコンテナに入れる前に獣医が麻酔で眠らせていました。快適でストレスのない旅をするためです。動物たちを囲いからフォードのミニバンに移すにはクレーンとJCB掘削機を使いました。
クレーンのオペレーターも掘削機のオペレーターも一言も英語を話せず、ティムたちもウクライナ語を話せなかったので、作業終了までに3時間もかかったそうです。幸いなことに通訳がいてなんでも訳してくれて、ケージも少し余裕をもって中に入ったので、ここでの作業は無事完了しました。
出発のときには警察の警護がつき、空襲警報のサイレンが鳴り響いていました。夜間外出禁止が始まる時間まで35分に迫っていたのです。
読んでいる我々がそう感じるように、彼らにとっても現実離れした状況でした。「俺たち、後ろにライオンと狼を積んでるんだぜ、と運転中絶えず話していました。実際、振り返ると私たちの肩越しにライオンと狼がいたんです」

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彼らはルーマニアに行く途中に何回か、ジャングルの王者に餌をやろうと試みている様子をSNSに投稿しました。ティムは「友達がライオンの檻に手を入れてライオンに食べ物をやった」と投稿し、また大きな肉の塊をやるように友達に勧めました。
友達が差し出した食べ物にライオンが近づいて、注意深く調べた後にゆっくりとかじっていました。ライオンのことは「いい子」と呼んでいました。ティムは「自分はバンでライオンを運ぶのは初めてなので、もし何か間違ったことをしたとしたらごめんなさい、ライオンの専門家様」とも投稿しています。
ウクライナの街々を激しいロシアの砲撃をかいくぐって運転している間、彼らは何度かチェックポイントを通りました。積荷を「ライオンと狼」と申告すると、今は戦争中だ、冗談言ってる暇はない、と怒る警官もいました。
そんなときはティムは警官をバンの横に連れて行ってドアを開けて見せました。すると、ナルニア国物語のアスラン王のように堂々としたライオンが姿を見せたのです。
ミッションコンプリート!

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国境を過ぎてルーマニアに入ると彼らは獣医に会い、そこで書類を整えるのに2時間かかりました。それから北東部の町であるラダウティにある動物園に向かいました。
ノンストップで運転できるように警察が青いライトを光らせた護衛の車をつけてくれて、残りの何百マイルかを運転しました。動物園に着くと、ここではフォークリフトと20人のルーマニア人を使って動物を持ち上げ、無事、新居に移動させました。
「俺たちがこの仕事をやり遂げるなんて誰も思ってなかったよ」とティムは言います。けれども彼らは動物を安全な場所に避難させることができたことがとても嬉しかったようです。3人でゆっくりお茶を飲み、動物園の中を見て歩きました。

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彼らは他の動物も助けたいと思いましたが国境を越えて移動し支援をするのはますます難しくなっていました。ティムの言葉を借りれば、人間を助けようとする人たちはたくさんいるけれども、おかしなことに他の誰も動物を助けたいと思っていないので、動物を助けるのは自分たちの仕事だと思った、ということです。
人々がトラや狼を生きたまま自分の車で運ぶのを想像できないのが驚くべきことかどうかは確かではありませんが、ティムのように挑戦的なことのために一肌脱ぐ人間がいることは皆さんに覚えておいてもらいたいです。
ミコラーイウ動物園

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ティム達のような行動が必要だったのは、動物園もロシア軍の攻撃対象であり、動物たちは隠れる場所もなく逃げまどう危険があるからです。ティム達が行ったところの近くにあるミコラーイウの動物園は、動物園のほとんどのスタッフが避難するかロシア軍と戦うために従軍していなくなった後に動物たちを生かしておいてほしいと国際的な支援を求めました。
ミコラーイウ動物園は「戦時体制」で運営されている、と園長が今月初めにFacebookに投稿しています。彼は、動物園のスタッフは空襲警報のサイレンが鳴っても毎日仕事に行って動物たちに食べ物をやり体を洗ってやっているとも書いています。
園長は人々に戦争の間動物園を経済的に支援するためにeチケットを購入することを検討してくださいとお願いしています。動物園は白クマ、カバ、ライオン、狼、象、シマウマ、霊長類その他たくさんの動物がいて、動物園のサイトによれば、そのすべての動物が戦争に巻き込まれる可能性があります。

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ミコラーイウはロシア軍の激しい砲撃にさらされ、動物園も例外ではありません。それでも園長はここにとどまってストレスを受けている動物たちの世話をする決心をしました。
Voice of Americaとのインタビュー動画で園長はeチケットは予定より1か月早く完売したと語っています。そして、世界中からの寄付に感動したとも言っています。
ミコラーイウ動物園はヨーロッパ中のいろいろな動物園から食物や医薬品の寄付も受けています。ヨーロッパ動物園・水族館協会はミコラーイウ動物園やウクライナのいくつかの別の動物園に経済的支援をすると言いました。

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上の地図はロシア軍に攻撃されたウクライナの地域を示しています。地図の下の方の黒海の近くに、下線をひいた2つの地域が見えます。この話に出てきた2つの動物園があるところです。動物や人間の不必要な流血を避けるためにはもっとたくさんのことをする必要があるのではないでしょうか。
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