戦禍のウクライナからライオン11頭を救出、安全な環境へ避難させる取り組みが、人々の熱意と努力で実現しました。逆境に負けず信念を貫いた人々に、世界中から賞賛の声が上がっています。
大規模な戦場からの救出
戦禍のウクライナから11頭のライオンを救出し、安全な環境へ空輸した今回の取り組みは、「これまでで最大の戦争地域からの救出」だと賞賛の声が上がっています。

出典:https://metro.co.uk/2022/09/27/eleven-lions-from-ukraine-in-biggest-ever-warzone-rescue-by-air-17461036/
2022年9月27日の夜、ライオンたちはボーイング社のドリームライナー機に乗りこみ、一時的に滞在していたルーマニアの避難所から旅立ちました。
7頭の成ライオンと2頭の子からなる群れ(プライド)は、米国コロラド州にある野生動物サンクチュアリへ向かいます。このライオンたちは、2つの動物活動団体が協力して救出、世界中の話題となりました。
残りの2頭は、英国人男性たちがワゴン車に乗せてウクライナから脱出。ドーハまではほかのライオンと一緒ですが、その後は南アフリカの保護区域へと移送されます。
ドーハからそれぞれの楽天地へ

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救出にあたったのはライオネル・デランゲさん(野生動物保護活動家)と、長年の友人リオン・ヒューマンさん。途中、旅行許可書を盗まれてしまうというハプニングにより、30時間にも及ぶ劇的で眠れない時間を費やした末、やっとのことで飛行機に同乗することができたといいます。
ライオネルさんは、ウォリアーズ・オブ・ワイルドライフの代表。ブカレストへと向かう航空機に搭乗する準備中、取材に答えました。
「ライオンたちはドーハまではみんな一緒です。そこから米国の野生動物サンクチュアリへ向かうグループと、南アフリカ・シンボンガの保護区域へ向かうミアとシンバの2頭に分かれます。戦争地域からこれほど大規模な救出活動を行った例は、これまでにありません。これが成功したことに感謝しています。多くの国々の政府が協力してくれて、旅行許可書を円滑に発行してくれました。たった4ヵ月の間にこれが実現したのは、奇跡といえます」

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ライオネルさんと友人は、トランシルバニアのタルグ・ミュールズのホテルでかばんを盗まれてしまうというハプニングにも遭遇。なんとそこにはライオンのフライトのための書類も入っていたのです。
南アフリカ共和国はルーマニアに大使館がないため、慌ててハンガリー国境まで運転し、緊急書類を作成してもらうという場面も。
「あわただしい2週間でした。友人がパスポート類をなくしてしまったので、今朝の午前1時までは何もできませんでした。わたしの書類は手元にありましたが、彼を置いていくわけにはいきません」と、ライオネルさん。
「帽子をかぶって顔のよくわからない男が、そしらぬ顔で近づいてきました。あとで監視カメラを見ると、彼がかばんを持ち去っていったことがわかりました。きのうの朝6時から、ライオンたちを飛行場へ運んで準備を始めていたのです。午後4時半に準備が整いましたが、盗難のためにあわててハンガリーまで行かざるを得なくなりました。南アフリカが発行するビザが必要だからです。そこでハンガリー国境まで大使館の人に来てもらい、道端で許可を出してもらったのです」

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「そのあとすぐ戻って、ブカレストに9時に到着しました。30時間にわたる、寝ずの行動です。移動中、ライオンには少しひっかき傷や青あざができましたが、おおむね健康状態は良好です。これからライオンは幸せに暮らせるのだと思うと、喜びがこみあげてきました」
9頭の群れはもともとオデッサにいて、ロシアからの爆撃やミサイルで命の危機にさらされていました。所有者には資金的な余力がなく、餌も尽きてきたため、5月24日にルーマニアへと避難してきたのです。
ウクライナ、モルドバ、ルーマニアの国土を970キロも横切って、4台の車で移送された9頭のライオンたち。戦下のため警察の先導もつきました。

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13の団体が協力し、ライオンに麻酔をかけたり檻に運んだりして、タルグ・ミュールズの一時保護施設へ運びました。
一方シンバとミアは、すでにルーマニアに移送されており、市営動物園に保護されていました。シンバは東部ウクライナでロシア軍の攻撃にあい、命の危機が迫っていました。
英国人ティム・ロックスさんとジョナサン・ウィービングさんが救出してくれたのです。
「ウォリアーズ・オブ・ワイルドライフ」の信念は、動物たちを動物園に囲うのではなく、できるだけ自然に近い環境で生活させることです。このため今回の保護区域への移送が行われました。同団体はコロラド州とテキサス州に計3カ所の自然公園を所有しています。総計1万エーカーの広大な土地です。

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11頭はドーハに到着後、9頭がコロラドへ向かい、2頭は南アフリカでライオネルさんが所有する保護区域へ向かいます。2頭はそこで先住のライオンたちとともに生活をします。いずれの場所も、自然が豊かで生来の生育環境に近いうえ、自由に歩き回る広さがあります。
「きっとライオンたちにとっては天国みたいでしょうね。これまで移送したライオンたちは、みんなこの場所がすぐに気に入りました。電気柵もなく草地が広がっています。これからはすばらしい暮らしが待っていますよ」
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