あるバス運転手の機転によって誘拐されていた犬が救出されました。勇気、そして愛ある彼の行動に世界中から称賛の声が寄せられています。
バス運転手が感じた犬と飼い主の違和感
アメリカ・オレゴン州ポートランドの交通公社『TriMetバス』の運転手、マイケル・トーマスさん(通称マイク)は、バスを運行中に道路の真ん中を歩く男性と犬を見かけました。
男性がラブラドール・レトリバーの首輪部分を持つようにして歩いていることに違和感を感じたマイクさんは、ハザードを点滅させてバスを停止させたのです。
すると、男性は犬を道路に置き去りにしたままバスに乗り込もうとしました。そこでマイクさんは男性に『あの子はあなたの犬?』と声を掛けると、その男性は『あぁ、でも大丈夫』と返してきたといいます。
本来、TriMetバスでは盲導犬や介助犬、もしくはキャリーに入れている場合のみ犬の乗車を許可していますが、大の犬好きであるマイクさんはその犬を路上に放置しておくことはできませんでした。
例外として犬の乗車を許可することを決意し、『犬を連れて来て。路上にいさせたままでは危険です。』と男性を促しました。
乗車後さらに不審な点が…。
マイクさんに犬との乗車を促された男性は、バスに乗り込み犬の口にテニスボールをくわえさせました。
マイクさんは男性の行動、犬との関係性について違和感を感じていたため、乗車後もその行動を気にかけていたところ、なんと乗り合わせた女性に『犬を売る』という話を持ちかけていたというのです。
マイクさんが男性に『いつからこの犬を飼っているのか』と聞けば『今日引き取ったってところ』と曖昧に答え、『犬の名前は何か』と聞けば答えられない。
マイクさんが感じた違和感は確信へと変わっていきました。
男性を問い詰め、犬を緊急保護!
『この犬は正式に引き取られたのではない』そう考えたマイクさんは、犬が運転席の近くへ来た時に首輪のタグを確認。そこには『クーパー』という名前、そして飼い主さんの電話番号が記載されていました。
『誘拐』を確信したマイクさんは犬の首輪を掴み、バスを降りようとする男性に『犬を飼い主のもとへ返す』と伝えました。
男性は特に反論することもなく、黙ってバスを降りたといいます。走行中、乗客には事情を説明した上でクーパーを見守ってほしいと協力を仰ぎました。
クーパーはテニスボールを口にくわえたままとてもおとなしく座っており、とてもよく躾が行き届いた利口な犬だと思ったとマイクさん。
そして最終地点まで無事にバスを走らせた後、交通警察によってクーパーの飼い主へ連絡がいくこととなりました。
無事、飼い主さんと再会した『クーパー』
クーパーの飼い主は、ポートランドに住むジェーン・マーフィーさんという女性でした。
ジェーンさんは行方不明になった愛犬を必死で探していたといいます。クーパーを救ってくれたマイクさんには、感謝の言葉と共に無事に帰宅したクーパーの写真を送ったといいます。
そして後日、TriMetバスはマイクとジェーンさん、そしてクーパーが再会するための場を手配しました。マイクさんクーパーのために用意したおやつを渡せば、クーパーは大きくしっぽを振りながらじゃれつきました。クーパーは救ってくれたマイクさんを覚えていたのです。
ジェーンさんは
”この世界には彼のような素晴らしい人がいるのだと実感しました。もしあのままクーパーを失っていたら、私の人生は違ったものになっていたと思います。”
と、改めてマイクさんへの感謝を語りました。マイクさんが大の犬好きであったからこそクーパーの誘拐に気づき、救い出すことができたのでしょう。
ジェーンさん、そしてクーパーにとってのスーパーヒーローへ世界中から称賛の声が寄せられています。