生涯相手を替えずに添い遂げるといわれているペンギン。でも実際には「離婚」するカップルも多いというのです。しかも地球の気候変動によって、その率は高まっていくという見解もあるそうで…?
ペンギンは夫婦の手本?
さてペンギンといえば、ロマンチックな習性があるといわれていますね。

出典:https://www.livescience.com/are-penguins-really-monogamous
メスのアデリーペンギンは、凍てつく海で何ヵ月も漁や泳ぎをしながら過ごした後、毎年同じ繁殖場所に滑り降りていくといいます。コロニーに立ち並ぶオスたちは大声で鳴き、毛づくろいをしながら呼びかけますが、メスはこれを無視してヨチヨチと進み、前年に契りを結んだ夫の元へまっすぐにたどり着くのです。
早く到着したオスのほうは、巣をきれいに掃除してその到着を待つ。そんなペンギンたちは、夫婦関係の手本ともいえます。でも本当にすべてのペンギンたちが生涯にわたって相手に忠誠を尽くすのでしょうか…。
実は、そういうペンギンは珍しいのです。大部分は繁殖期になると単独の個体を伴侶にしますが、巣に落ち着く前には、ほかの複数のペンギンとも交尾することがわかっています。種によってその度合いは異なるものの、ペンギンの恋愛は、実際は信じられているよりも複雑なのだとか。
「ペンギンは一夫一婦制ではありません」というのは、ニュージーランドにあるオークランド大学で行動生態学を専門にしているエマ・マークスさん。彼女は、コロニーに集まる鳥の繁殖行動と、つがい相手の選択について研究しています。
「ペンギンなどコロニーを形成する生き物は、季節ごとに巣を作ってひなを育てる相方が1羽だけいるという点では、一夫一婦制といえます。でもほかの個体とまったく交わらないわけではないのです」と、彼女は話します。
つまりペンギンは、複数の相手と交尾するのです。自分の巣で繁殖を開始する前には、コロニーにいるほかのペンギンを物色し、なかにはすでに相手のいる個体にちょっかいを出して「メロドラマ」並みの大騒動になることもあるのだとか。

出典:https://www.livescience.com/are-penguins-really-monogamous
昨年、契りを結んだオスがコロニーに戻らなかった場合は、残されたメスは別のオスを選んでつがいになります。でも選ばれたオスと前年に夫婦になっていたメスが戻ってきて、自分の巣に別のメスがいるのを見つけた場合、大げんかが起こります。たいていは前年に夫婦になっていたメスが勝利を得るそうです。
このような三角関係は複雑な結果を生みます。メスが産んだ卵が、必ずしもつがいのオスの子とはいえないのです。2018年のZoo Biology誌には、米国ユタ州のジェンツーペンギンがつがいになり子育てをしたものの、2羽のヒナは別のオスの遺伝子を持っていたという事例が紹介されています。
自然界でこの現象がどの程度起きているか、科学者にはわかりません。発信装置などの機器によって夫婦関係の調査は行われていますが、生まれたヒナの遺伝子調査までは手が及んでいないからです。
社会的には「一夫一婦制」
とはいえペンギンは、社会的には一夫一婦制だといえます。南極のような過酷な環境でヒナを育てるには、2羽の協力が不可欠。協力しながら巣の維持や卵の孵化、餌探しなどを効率的に分担するためです。
「生活上、一夫一婦制は必須なのです。ヒナを育て上げるには2羽の協力が不可欠で、それなしでは繁殖は失敗に終わります」と、エマさん。
そんな関係が長期に続き、毎年繁殖期になると同じ相手の元へ行くこともあるのです。種によってその確率は違ってきます。
ガラパゴスペンギンの89%が相手に固執する一方で、皇帝ペンギンはわずか15%であるとの研究もあります。全体として、59~89%のペンギンは同じ相手と添い続けるそうです。
「前年の繁殖がうまくいった場合、ペンギン夫婦が長期的に一緒にいる確率が高くなります」ヒナがきちんと成長し、オスが高台のよい場所に巣を確保してくれれば、メスも満足するのです。
「コロニーにはほかのペンギンがたくさんいて、選択肢は広いのです。前年の繁殖が失敗した場合、ペンギンが『離婚』する可能性は高くなるでしょうね」
ペンギンの離婚率を算定するのは困難です。すべてのペンギンが同じ繁殖地に戻るとは限らないし、新しいカップルが誕生しても、それが好みによるのか(離婚)、相手がたとえばアザラシに食べられて戻れなかったことによるのか(死別)はわかりません。
最近の研究では、ペンギンの個体数は、餌になるオキアミの減少とともに減っていることがわかりました。気候変動と人間の漁業活動によって、オキアミの生息数が減少したためです。
温暖化で海氷が変化し、ペンギンが以前の繁殖地までたどり着けない例も増えています。たとえたどり着けても、迷って疲れ果てたオスは繁殖の意欲をなくしてしまうことがあるのです。
こうした変化のため、かつて毎年2万5000組のつがいを受け入れて皇帝ぺンギンの繁殖地になっていた南極の「ハレ―湾」は、2016年以降ヒナが誕生していないという悲劇が続いています。
「気候変動のため、ペンギンの繁殖率は下がり続けていくでしょう。そして繁殖が失敗すれば、ペンギンが結婚相手を替える率も増えていくのです」と、エマさんは語られました。
出典:https://www.livescience.com/are-penguins-really-monogamous