サランラップの名前の由来がすごい!戦争と愛が生んだ奇跡の発明物語

雑学

サランラップの「サラン」の意味、あなたはご存知ですか?

毎日のように使うサランラップ®。「ラップ」は英語のwrap(包む)から来ていることは想像がつきますが、「サラン」の部分については謎に包まれています。実は、この名前には素敵な物語が隠されているんです。

みなさんは、サランラップ®の名前の由来を考えたことはありますでしょうか?「何か科学的な用語かな」「外国の地名?」など、さまざまな推測が飛び交いそうですが、実際の由来を聞くと誰もが「へぇ!」と驚く、とても温かい story が込められています。

思いがけない発見から生まれた愛妻家たちの発明

サランラップ®が誕生したのは、1940年代後半のアメリカ。ある日曜日、ラドウィックとアイアンズという2人の技術者が、妻たちを誘ってピクニックに出かけました。この何気ない休日の外出が、後に世界中で愛用される製品を生み出すきっかけとなったのです。

ラドウィックの妻が持参したレタスのサンドイッチ。それは、夫が会社で試作していた特殊なフィルムで包まれていました。そのフィルムの見た目の美しさと保存性の高さに、ピクニックに参加していた近所の奥さんたちが興味津々。

「このきれいなフィルム、どこで買えるの?」「私も欲しい!」と、たちまち評判になったのです。

この予期せぬ反応に、2人の技術者は大きな可能性を感じました。翌日すぐに会社に報告し、食品保存用フィルムとしての開発に着手。そして製品名を考えるとき、2人は妻たちへの感謝の気持ちを込めて、サラ(Sarah)とアン(Ann)、この2人の名前を組み合わせて「サラン」と名付けたのです。

実は軍需品だった?意外なサランラップの生い立ち

しかし、この製品には意外な前史がありました。サランラップ®の素材となる「ポリ塩化ビニリデン」という特殊な合成樹脂は、もともと第二次世界大戦中の軍需品として開発されたものだったのです。

当時、太平洋戦線で戦う兵士たちは、高温多湿の過酷な環境に悩まされていました。銃や弾薬を湿気から守り、ジャングルでの行軍時に水虫を防ぐ靴の中敷き、さらには蚊帳の代わりとしても使用される、まさに軍事用の万能フィルムだったのです。

戦後、この素材の新しい用途を探していた技術者たちは、チーズの包装材料として細々と製造を続けていました。「他に使い道はないのだろうか」と模索していた矢先、あのピクニックでの出来事が起きたのです。奥さんたちの何気ない反応が、軍需品を台所の必需品へと変える大きなターニングポイントとなりました。

このエピソードを知った当時の同僚は「2人の奥さんたちのおかげで、私たちの会社は救われたんだ」と語っていたそうです。戦後の需要低迷に悩んでいた会社にとって、この家庭用品としての転換は、まさに天啓のような出来事だったのでしょう。

日本への上陸物語と驚きの価格

1960年、サランラップ®は日本に上陸します。しかし、当時の日本の一般家庭には冷蔵庫すらほとんど普及していない時代。発売当初の価格は7メートル巻きで100円。今の感覚だと「安いじゃない?」と思うかもしれませんが、当時の100円は現在の1,000円以上の価値がありました。

ここで興味深い数字をご紹介しましょう。当時の新卒初任給は大卒で13,030円、高卒で7,740円。コーヒー1杯が50円、かけそばが30円という時代に、7メートルのラップを100円で売るというのは、かなり勇気のある価格設定だったことがわかります。

「これは一体何に使うの?」

多くの主婦がそう首をかしげる中、サランラップ®の普及への道のりが始まったのです。

画期的な技術力が生んだサランラップの実力

実は、サランラップ®には数々の驚くべき特徴が隠されています。一般的なポリエチレン製のラップと比べると、その性能の違いは歴然。引っ張っても破けにくく、酸素や水分の透過を極限まで抑える特殊な素材で作られているのです。

例えば、酸素透過度を比較すると、サランラップ®は60(cc/m2・day・atm)に対し、一般的なポリエチレン製は13,000。なんと200倍以上の差があります。これを分かりやすく例えると、一般的なラップが「網戸」なら、サランラップ®は「ガラス窓」のような違いがあるのです。

また、破けにくさを示す強度は470MPa。一般的なラップの220MPaと比べると、2倍以上の強さを誇ります。これほどの性能を持つ素材が、台所用品として開発されたわけではなく、軍需品から転用されたというのも納得できますね。

知られざる日本独自の進化

興味深いことに、2004年にアメリカのサランラップ®は環境への配慮から素材を変更しましたが、日本では伝統的な素材を守り続けています。旭化成は、この優れた性能を維持することにこだわり、現在も宮崎県延岡市で原料を生産し、三重県鈴鹿市の工場で製品化を行っています。

日本のサランラップ®へのこだわりは、パッケージデザインにも表れています。1966年に採用された黄色いパッケージは、約50年もの間、日本の台所に彩りを添え続けてきました。その後も、使いやすさを追求した数々の改良が重ねられ、2018年にはより切りやすいM字型の刃が導入されるなど、進化は現在も続いています。

技術者の間では「日本のサランラップ®は、世界でも類を見ない品質管理の賜物だ」と評価されているそうです。製造工程では、わずか0.01ミリの厚みのムラも見逃さない徹底したチェックが行われているのだとか。

60年たっても色褪せない2人の愛妻家の物語

2020年、サランラップ®は日本での発売60周年を迎えました。冷蔵庫の普及率わずか10%だった時代から、電子レンジの登場、そして現代の食生活の多様化まで、日本の台所とともに歩んできた歴史があります。

そして今なお、製品名に刻まれた2人の妻、サラとアンの名前は、多くの人々の暮らしの中で生き続けています。偶然から生まれた発明が、夫たちの感謝の気持ちとともに製品名となり、やがて世界中で愛される製品へと成長していったのです。

技術開発の歴史には、往々にして偶然の発見が重要な役割を果たします。しかし、サランラップ®の場合は単なる偶然以上のものがありました。2人の技術者が妻たちへの愛情を込めて名付けた製品が、60年以上もの間、世界中の家庭で愛用され続けているのです。

素敵な由来を持つサランラップ、あなたも誰かに教えてみませんか?

「サランラップってどうして『サランラップ』って名前なの?」

そう聞かれたとき、あなたはこの素敵な物語を話すことができます。2人の愛妻家が、妻たちへの感謝の気持ちを込めて名付けた製品名の話を。それは単なる雑学を超えて、技術開発における人間味あふれるエピソードとして、きっと多くの人の心に響くはずです。

戦後の軍需品が、ピクニックをきっかけに台所の必需品となり、そして妻たちの名前とともに世界中に広まっていった―。この驚くべき変遷の物語は、日常何気なく使っているものの中にも、たくさんの人々の想いや歴史が詰まっていることを教えてくれます。

次にサランラップ®を使うとき、その透明なフィルムの向こう側に、2人の技術者が妻たちへの愛を込めて作り上げた物語を、ちょっと思い出してみてはいかがでしょうか。

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