『推し』の昔の呼び方は何?昭和から令和まで愛の表現を深掘り!

雑学

あなたの「推し」への愛、昔の人はこう表現していた

「好きなアイドルは?」「誰が推し?」

こんな会話、最近よく耳にしませんか?若い世代を中心に定着した「推し」という言葉。でも、ちょっと考えてみてください。この便利な言葉が使われる前、人々は一体どうやって「推し」への愛を表現していたのでしょうか?

実は、時代によって実に様々な呼び方があったんです。例えば、昭和の時代。「キャンディーズは誰が好き?」という問いかけに、「私はミキちゃん派!」と答えるのが定番でした。また、松田聖子さんのファンは「聖子ちゃん命!」と熱く語り、宝塚の観劇者は「○○さんの贔屓(ひいき)です」と優雅に表現していました。

これらの言葉には、それぞれの時代の空気感が詰まっているんです。今回は、そんな「推し表現」の歴史を掘り下げていきましょう。きっと、あなたの両親や祖父母が青春時代に使っていた言葉に出会えるはずです。

1. 昭和の定番「○○命」から「推し」への進化

1980年代、アイドル文化が花開いた時代。「命」という言葉は、当時の若者たちの間で絶大な人気を誇っていました。例えば、「近藤真彦【命】」「松田聖子【命】」という具合です。これは今でいう「ガチ推し」や「神推し」に近い、とても強い想いを表現する言葉でした。

「命」という言葉を使う若者を見て、当時の大人たちは「大げさだ」と眉をひそめたとか。でも、考えてみれば「推し」だって、最初は同じような反応だったかもしれません。新しい言葉は、いつの時代も若者たちの中から生まれてきたんですね。

面白いのは、「命」派の次に台頭してきた「〜派」という表現。「光GENJI」のファンの間では「赤井派」「大沢派」という言い方が一般的でした。これは、グループの中の推しメンを表現する新しい方法として広まっていったんです。

この時期には他にも「親衛隊」という独特な呼び方も。「今週は松本伊代の親衛隊に行く」なんて会話が、学校の廊下で交わされていたそうです。今から考えると少し大げさな響きがありますが、それだけ熱量の高いファン文化が育まれていた証とも言えるでしょう。

ちなみに「命」という表現、実は令和の今でも細々と使われているんです。「推し」全盛期の今だからこそ、あえてレトロな表現を使うファンも。「〇〇命」と書かれた手作りうちわを見かけたら、きっとそれは昭和文化への愛も込められているはず…

2. 「贔屓(ひいき)」から「マブ」まで知られざる歴史用語

時代をさらに遡ると、もっと興味深い表現方法に出会えます。特に歌舞伎や宝塚の世界では、「贔屓(ひいき)」という言葉が長く使われてきました。現代の「推し」と比べると、どことなく格式高い響きがありますよね。

実は「贔屓」という言葉、単なる「お気に入り」以上の深い意味を持っています。芸術家を支え、育てていくという意味合いが込められているんです。ある意味で、現代の「推し活」の先駆けと言えるかもしれません。江戸時代の観客たちは、好きな役者の浮世絵を集めたり、応援うちわを作ったり…今で言う「推し活」そのものですよね。

さらに面白いのが「マブ」という言葉。「まぶしい」から来ているという説があり、主に大正時代から昭和初期にかけて使われていました。「あの役者はワタシのマブよ」なんて言い方をしていたそうです。今で言うところの「眩しすぎる推し」といったところでしょうか。

3. バブル期に生まれた「タソ」文化

1990年代、インターネットが一般に普及し始めた頃。独特なネットスラングとして「○○タソ」という表現が広まりました。「タソ」は「たん」「たま」などと同様、「ちゃん」の変化形です。「初音ミクタソは俺の嫁!」というフレーズは、当時のネット文化を象徴する決まり文句でした。

この「タソ」文化は、現代の「推し」文化に意外な影響を与えています。例えば、推しを「嫁」と呼ぶ文化や、推しに対して敬意を込めて「様」を付ける「推し様」という呼び方。これらは「タソ」文化の延長線上にあるんです。

面白いのは、当時はアニメやゲームのキャラクターに対して使われることが多かった「タソ」が、実在の人物にも使われるようになっていったこと。「推し」という言葉も同じように、アイドルファンの間から一般へと広がっていきました。

2000年代に入ると、モーニング娘。のファンの間で「推しメン」という言葉が使われ始めます。これが後の「推し」の始まりとなるわけですが、実は当時は「担当」という言葉も同時に使われていました。特にジャニーズファンの間では「担当」や「担」が一般的で、今でもその文化は残っているんです。

4. 令和時代に花開いた「推し」表現の多様性

時は流れ、2020年代。「推し」という言葉は驚くほど多様な派生語を生み出しています。例えば「箱推し」。これは推しているグループ全体のことを指す言葉で、まるでライブハウスという「箱」に入っているメンバー全員を応援する様子から生まれた表現なんです。

また「推し増し」という言葉も。これは新しく推しを増やすことを指します。「箱推し」が増えすぎて財布が大ピンチ!なんて声もよく聞きますよね。このように、推しへの愛情表現は時代とともにどんどん豊かになっているんです。

特に興味深いのが「推し活」という言葉の誕生。これは単なる「応援」以上の意味を持つようになりました。早稲田大学演劇博物館の展示によると、実は室町時代から、人々は好きな芸能者を応援するための様々な活動をしていたそうです。現代の推し活は、そんな長い歴史を持つファン文化の延長線上にあるんですね。

「推し」文化が教えてくれる意外な発見

言葉は時代とともに変化します。でも、誰かを心から応援したい、その想いは昔も今も変わらないのかもしれません。「命」と叫んだ昭和の若者も、「推し活」に励む現代の若者も、その根底にあるのは同じ熱い想いなんです。

新宿の古書店でバイトをしている大学生は、こんな体験を話してくれました。「お店に宝塚の古い雑誌が入ってきたんです。その中に手書きのファンレターのコピーが挟まっていて。今の推しへの想いと、全然変わらなくて驚きました」

次に友達と「誰が推し?」って話になったとき、「昔はね、『命』って言ってたんだよ」なんて話を振ってみてはどうでしょう。きっと、世代を超えた素敵な会話が生まれるはずです。

そうそう、最近では「推し活考古学」なんて言葉も生まれているそうです。歴史の中に眠る「推し文化」を発掘する新しい楽しみ方かもしれませんね。さて、あなたのご両親や祖父母は、どんな言葉で「推し」を表現していたのでしょうか?今度聞いてみると、きっと素敵な思い出話が聞けるはずです。

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