『一富士、二鷹、三茄子』には続きがあった!江戸の粋が詰まった縁起物の秘密

雑学

「一富士二鷹三茄子」の意外すぎる続き

「一富士二鷹三茄子」といえば、誰もが知っている日本の縁起物。でも、この後に「四扇五煙草六座頭(※1)」と続くことを知っている人は、実はほとんどいないんです。

江戸時代の辞書『俚言集覧(※2)』の余白に書かれていたこの続きは、当時の人々の遊び心と知恵が詰まった言葉遊び。なんと、前半の3つと後半の3つがそれぞれ対になっているという、粋な仕掛けまで隠されていたんです。

※1:しせんごたばころくざとう:四つ目が扇、五つ目が煙草、六つ目が座頭(琵琶法師の座に所属する盲目の演奏家)という意味
※2:りげんしゅうらん:江戸時代に編纂された俗語辞典。庶民の言葉や言い回しを集めた貴重な資料

実は深い!縁起物の前後で隠された面白い対応関係

江戸の人々は、「一富士二鷹三茄子」の続きを考えるとき、ただ単に縁起物を追加しただけではありませんでした。それぞれの言葉には、前半と後半で実に面白い対応関係があったのです。

まず「富士山」と「扇」は、どちらも末広がりの形をしています。商売繁盛や子孫繁栄の象徴として、江戸の人々の願いが込められていました。

次に「鷹」と「煙草」。鷹が空高く舞い上がるように、煙草の煙も天に向かって立ち昇ります。これは運気の上昇を表現したもの。江戸時代の人々の遊び心が感じられますね。

そして「茄子」と「座頭」。一見すると何の関係もなさそうですが、実は両方とも「毛がない」という共通点があります。これを「怪我なし」と掛けて、家内安全を願ったというから面白い。

こんな風に、一つ一つの言葉に込められた意味を紐解いていくと、先人たちの知恵と工夫の深さに驚かされます。

四葬式五雪隠?もうひとつの意外な続き説

実は「一富士二鷹三茄子」の続きには、もうひとつの説があるんです。それが「四葬式五雪隠(※3)」。最初に紹介した「四扇五煙草六座頭」とは打って変わって、なんとも縁起の悪そうな言葉が並んでいます。

でも、これには江戸の人々の粋な考えが隠されていました。この説によると、縁起の悪い物を夢で見ることで、現実では逆の良いことが起こるという「逆夢(※4)」の考え方を取り入れているのです。

面白いことに、この説は特に庶民の間で広まっていたとか。華やかな縁起物も素敵だけど、あえて縁起の悪いものを持ち出して「逆に良いことがあるはず!」と楽観的に考える。そんな江戸の人々の底抜けに明るい性格が垣間見えますね。

※3:しそうろうごせっちん:四つ目が葬式、五つ目が雪隠(トイレのこと)という意味
※4:ぎゃくむ:夢で見たことの逆のことが現実に起こるという考え方

知られざる初夢と宝船の深い関係

実は、江戸時代の人々は初夢で良い夢を見るために、さまざまな工夫をしていました。その代表が「宝船(※5)」の絵を枕の下に入れて寝るという習慣です。

特に面白いのが、宝船の絵に書かれている和歌。なんと上から読んでも下から読んでも同じ言葉になる「回文」になっているんです。

「長き世のとおの眠りのみな目覚め波乗り船の音の良きかな」

これを三度唱えてから寝ると、良い夢が見られるとされていました。まるで今日の私たちが就寝前にスマートフォンでSNSをチェックするように、当時の人々は宝船の絵を眺めながらこの歌を唱えていたのかもしれませんね。

※5:江戸時代、正月の縁起物として人気があった船の絵。七福神が乗り、宝物を積んでいる様子が描かれている

初夢の日にちをめぐる江戸っ子たちの知恵と工夫

ところで、初夢っていつ見る夢なのか、実は意外と知られていません。現代では1月2日の夜に見る夢とされていますが、これには江戸の人々の生活習慣が関係していたんです。

当時の江戸っ子たちは、大晦日から元日にかけてほとんど眠らない習慣がありました。そのため、元日の江戸の町は人通りがまばら。多くの人々は2日になってから活動を始めたといいます。

こうした生活リズムから、初夢は2日の夜に見るものとされるようになりました。面白いことに、室町時代には立春の朝に見る夢が初夢とされていたそうです。時代とともに人々の生活スタイルが変化し、それに合わせて初夢の日取りも変わっていったというわけです。

江戸の粋を楽しむ!初夢にまつわる豆知識の楽しみ方

「一富士二鷹三茄子」とその続きには、江戸時代の人々の遊び心と知恵が詰まっています。単なる縁起物の羅列ではなく、言葉遊びや掛け言葉、逆説的な発想など、実に奥が深いんです。

例えば「四扇五煙草六座頭」の方は、見た目や形状の面白い対応関係を考えた「洒落者(※6)」たちの遊び心。一方の「四葬式五雪隠」は、あえて縁起の悪いものを持ち出して「逆に良いことがあるぞ」と発想を転換させた庶民の知恵。どちらも、その時代を生きた人々の創意工夫が感じられますね。

さらに、宝船の絵に書かれた回文の和歌を三度唱えるという習慣も、今に伝わる江戸の文化。「願い事は三度唱えると叶う」という言い伝えは、もしかしたらここから来ているのかもしれません。

今度、誰かと初夢の話で盛り上がるとき、「実は『一富士二鷹三茄子』には続きがあってね…」と切り出してみてはいかがでしょうか。きっと、江戸の人々が考えた粋な仕掛けに、みんな興味津々になるはずです。

※6:しゃれもの:江戸時代、おしゃれで洒落た振る舞いをする人々のこと。特に、言葉遊びや粋な趣向を好んだ

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