月の土地を買うことはできる!
夜空に輝くお月様を見て、「遠く離れたあの地を買うことはできるのかな」と想像したことはありますか?実は、月の土地を買うことはできます。
この地球外の不動産販売を始めたのは、デニス・ホープという人物です。アメリカのネバダ州にルナエンバシー社の本社を構え、日本に向けた事業展開も行っています。
そんなルナエンバシー社が販売する月の土地は、「1エーカー(約4,047㎡)あたり2,700円」という驚くほど安い価格で購入できます。1エーカーとは、サッカーコート1面分に相当するので、値段を思えばかなり広いですよね。
しかし、この事業で気になるのは、一般的な不動産売買のようにデニス・ホープ氏が月をすべて所有した上で土地の販売をしているわけではないということです。どうしてルナエンバシー社は月の土地を売り、お客さんはそれを買うことができるのでしょうか。
月の土地の販売・購入ができる理由
そもそも、月は誰のものなのかという点が重要です。月の所有権について明示している国際的な取り決めには、「宇宙条約」と「月協定」の2つがあります。
個人の所有権には言及していない「宇宙条約」
日本やアメリカなどを含め、世界の100カ国以上が批准している宇宙条約の正式名称は、「月その他の天体を含む宇宙空間の探査および利用における国家活動を規律する原則に関する条約」です。
1967年に発効されたこの条約では、どの国家も月や天体における権利を主張できないことが明示されていますが、個人が所有する権利を主張したり、売買することには言及していません。
そのため、ルナエンバシー社のCEOであるホープ氏は、国連やアメリカ、当時のソ連に対して申し立てを行ったが、明確な異議は唱えられなかったため、販売を開始したのです。
締約国が少なすぎて効力が弱い「月協定」
ただし、この盲点を修正しようと1984年に発効された「月その他の天体における国家活動を律する協定(月協定)」では、国家だけでなく各種団体や個人が月の土地や資源を所有することを禁止しました。
ところが、宇宙旅行の実現などを目指し、宇宙開発を進める主要国はこれに賛同せず、批准・署名国はわずか17カ国のみに留まっている状況です。
日本だけでなく、アメリカやロシア、中国も批准していないのでは世界への効力は弱く、ルナエンバシー社を筆頭に各企業や個人が月の土地の所有権を主張したり、売買することに対する抑止力は今のところほぼありません。
月の土地を購入したら手に入るもの
現在、月の土地を買いたいと思ったら、ルナエンバシー社のホームページを通じて購入することができます。
購入すると、「月の土地権利書・月の憲法・月の地図」「月の土地権利書(和訳)」「月の憲法(和訳)」「土地所有権の宣言書コピー(英文)」「オリジナル封筒」がもらえるため、ちょっと特別なプレゼントとしても活用されているようです。
土地への投資は一般的にはリスクも伴いますが、月の土地に関してはあくまで記念としての要素が強く、話のネタにちょうどいいインパクトの大きな買い物と言えるでしょう。
注意点としては、土地の所有者として日本で「登記」するものとは違い、1企業が販売しているものを購入しているに過ぎないので、国際的な取り決めが変更されたり、万が一宇宙人がすでに土地を所有して暮らしていたりすれば、所有権を法的に主張できない可能性があるということですね。
月の土地を買うのはロマンを楽しむということ
月の土地を購入するのは、空を見上げて「月には自分の土地が存在する」「いつか宇宙へ行けるようになったらその土地をどう生かそうか」など、想いを馳せるためでもあります。
月はまだ世界中みんなのものという位置づけなので、土地を購入する時には法的な権利が確実ではないことを理解した上で、宇宙へのロマンを楽しむ気持ちで買うと良いでしょう。