一生に一度は『お伊勢参り』…江戸の人にとっての海外旅行レベルだった

雑学

お伊勢参りが「一生に一度」と言われる理由

日本人なら一度は耳にしたことがある「一生に一度はお伊勢参り」という言葉。この言葉の由来は江戸時代までさかのぼります。当時、多くの人々が人生で一度は伊勢神宮を目指し、全国各地から歩いて参拝しました。

江戸時代のお伊勢参りは、空前の大ブームでした。1705年には約362万人もの人々が伊勢神宮を訪れています。その後も参拝者は増え続け、1830年には数百万人にも達しました。これは、当時の日本の人口比で考えると驚異的な数字です。

内宮には太陽の神である天照大神が、外宮には食べ物を司る豊受大神が祀られています。このふたつの神社が人々の信仰の中心となり、多くの参拝客を引き寄せました。

江戸時代は「おかげ参り」で伊勢が大人気だった

江戸時代には「おかげ参り」と呼ばれる参拝ブームが何度か起こりました。特に1830年頃には人々の熱気は最高潮になり、数百万人という参拝客が全国から殺到しました。

また、珍しい逸話も残っています。「おかげ犬」と呼ばれる犬が、主人の代わりに伊勢まで参拝したという話も伝えられています。首にお金や住所を書いた札を付けた犬が、旅人に助けられながら無事に伊勢神宮に到着し、代参を果たしたという心温まるエピソードです。

内宮と外宮のふたつの神社が、この「おかげ参り」の中心的存在でした。

昔の人は江戸から伊勢まで約500kmを歩いて行った

江戸時代、伊勢神宮までの旅は簡単ではありませんでした。江戸(今の東京)から伊勢までは約500km前後で、当時の人々は1日平均34kmを歩き、約14日〜17日ほどで旅しました。

さらに、旅の費用も決して安くはありませんでした。当時の旅費は庶民の場合2〜5両程度で、現代の価値に直すとおよそ40万〜100万円とされています。これは一般庶民にとって、一生を通じて一度できるかどうかという大きな金額でした。

それでも人々が伊勢を目指したのは、人生で一度は「神さまに感謝の気持ちを伝えたい」「神さまに願いを届けたい」という強い想いがあったからです。伊勢神宮への旅は、まさに人生の一大イベントだったのです。

昔だけじゃない、いま行く人も多い伊勢神宮

現代でもお伊勢参りの人気は衰えません。2023年の年間参拝者数は約717万人を超えています。鉄道や高速道路の整備により、以前より気軽に行けるようになりました。

伊勢参りに訪れる人の多くは、人生の節目として旅を楽しんでいます。「家族の大切な記念になった」「人生の節目として心に残った」と、実際の参拝者も語っています。

また、「気持ちがリセットされ、心が落ち着いた」と感じる人も多いです。静かな境内や豊かな森の空気が、特別な安らぎを与えているのです。

そして、何度も訪れたくなる魅力もあります。例えば、20年に一度の「式年遷宮」です。これは神殿を新しく建て直し、神さまを新鮮な気持ちで迎えるための儀式で、多くの人が再訪のきっかけにしています。

伊勢志摩の美しい自然や独特な文化も、繰り返し訪れる人を惹きつけています。

まとめ

江戸時代のお伊勢参りは、徒歩約500kmの道のりを歩き、当時の庶民にとっては2〜5両(現代換算40万〜100万円)を要する「一生に一度」の特別な旅でした。交通が便利になった現代でも、伊勢神宮が持つ独特の雰囲気や特別な静けさは昔と変わりません。時代を越えて人々を惹きつけ続けるのは、昔からの憧れや願いを自分自身で実際に確かめられる、他にはない貴重な体験だからなのです。

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