「からし」と「マスタード」、なんとなく違うのは知ってるけど…
「おでんには和からし、ハンバーガーにはマスタード」なんとなくそう使い分けている人も多いのではないでしょうか。でも、この黄色い調味料、いざ「何が違うの?」と聞かれると、詳しく説明できる人は少ないはず。
実は筆者も先日、子どもに「なんでおでんにマスタードを付けちゃダメなの?」と聞かれて、うまく説明できませんでした。確かに見た目は似ているし、どちらも鼻に抜けるような辛みがある。でも、なんとなく違う。この「なんとなく」をすっきりさせたくて、徹底的に調べてみることにしました。
すると、からしとマスタードには実に面白い違いがあることがわかってきました。原材料はもちろん、製法や使い方まで、それぞれの特徴には深いわけがあったのです。
この記事では、からしとマスタードの違いについて、分かりやすく解説していきます。知れば知るほど面白い、この黄色い調味料の世界。ぜひ最後までお付き合いください。
からしとマスタードの3つの違い!実は同じ植物だった!?
意外かもしれませんが、からしもマスタードも同じアブラナ科の植物から作られています。ただし、使う種子の種類が異なるんです。これが第一の違いになります。
1. 原材料の違い ~種類が違えば辛さも変わる~
からしの原料は「オリエンタルマスタード」という種子。鼻にツーンと抜けるような強い辛みが特徴で、日本の伝統的な和からしに使われてきました。一方、マスタードの主な原料は「イエローマスタード」。オリエンタルマスタードと比べると辛みが穏やかで、料理にたっぷりかけても楽しめます。
面白いことに、マスタードには「ブラウンマスタード」という種子を使うこともあります。これは粒マスタードによく使われる種子で、プチプチとした食感と独特の風味が特徴なんです。
2. 製造方法の違い ~水だけか、調味料入りか~
からしの製造方法はシンプル。種子を粉末にして水やぬるま湯で練るだけです。このシンプルさが、からし特有の強い辛みを引き出すポイント。粉からしを水で溶くと、化学反応で辛み成分が一気に引き出されるんです。
一方、マスタードはちょっと複雑。種子を砕いたあと、酢、砂糖、ワインなどさまざまな調味料を加えて作ります。実は、この調味料には辛みを抑える効果があるんです。だから、マスタードは比較的マイルドな味わいになります。
ちなみに、チューブ入りのからしやマスタードには保存性を高めるため、食用油脂や食塩が加えられています。でも基本的な製法の違いは同じですよ。
3. 辛さと風味の違い ~使う量で選び分けよう~
からしの辛さは「一瞬で鼻に抜ける」のが特徴。少量でもビリッと効くので、薬味として使うのにぴったり。おでんやお刺身に添える程度の量で、十分な効果を発揮します。
一方、マスタードは「じわじわと広がる」マイルドな辛さ。たっぷり使っても食べやすく、サンドイッチに塗ったり、ドレッシングに混ぜたりと、調味料として幅広く活躍します。
興味深いのは、この辛さの違いが日本とヨーロッパの食文化の違いも反映しているということ。日本では薬味として少量使う文化が発達し、ヨーロッパではソースとして使う文化が根付いたんです。
からしとマスタード、同じ植物から作られるのに、こんなにも違いがあるんですね。でも、これを知ったところで、まだ旅は半分。それぞれの種類や使い方にも、もっと面白い発見が待っています。
からし | マスタード | |
---|---|---|
原材料 | オリエンタルマスタードの種子 (和からし用) |
イエローマスタードの種子 ブラウンマスタードの種子 (種類により使い分け) |
製造方法 | 種子を粉末にして水やぬるま湯で練る (シンプルな製法) |
種子を砕いて酢、砂糖、ワインなどを加える (複雑な製法) |
風味と特徴 | ・一瞬で鼻に抜ける強い辛み ・少量で効果を発揮 ・薬味として使用 |
・じわじわ広がるマイルドな辛み ・たっぷり使える ・調味料として使用 |
実は昔から親しまれてきた黄色い調味料の物語
からしとマスタード、その歴史は意外と古く、しかも壮大です。なんと古代エジプトにまで遡るという記録が残っているんです。
歴史好きの方なら「へぇ」と思うかもしれません。実は、古代ギリシャの数学者ピタゴラスも、マスタードについて言及していたそうです。当時は、サソリに刺されたときの応急処置として使われていたとか。今では考えられないような使い方ですよね。
日本でも、正倉院の文書にからしの記録が残っています。面白いのは、最初は薬味としてではなく、からし菜として食べられていたこと。今でいう、からし菜のお浸しのような感じでしょうか。からしが薬味として使われるようになったのは、室町時代以降だったそうです。
そういえば、江戸時代の料理本「料理物語」(1643年)には、なまかつおやぬたなますにからしを使うレシピが載っているそうです。今と変わらない使い方をしていたんですね。
知ってるようで知らない!容器の違いにも意味があった
「そういえば、マスタードは瓶で売っているけど、からしはチューブが多いな」と気づいた人はいませんか?実は、これにも理由があるんです。
からしは薬味として少量ずつ使うもの。一度開けると辛みが飛んでしまうため、その都度、必要な量だけ出せるチューブ型が重宝されてきました。これは日本独特の容器文化なんだとか。わさびもチューブ型が多いのは、同じ理由からなんです。
一方、マスタードは比較的たくさん使うため、チューブでは足りなくなってしまいます。それに、マスタードは酢やワインが入っているので、開けても辛みが飛びにくいんです。
さらに面白いのが、マスタードと瓶の相性。瓶の中で熟成が進み、辛み以外の風味が増していくんです。また、ヨーロッパから船で運ばれる際、赤道近くを通過する高温にも耐えられるよう、保存性の高い瓶が選ばれたという歴史もあります。
からしの種類と特徴 ~和の味わいを彩る名脇役~
からしには、実はいくつかの種類があります。それぞれに個性があって、使い方も少しずつ違うんですよ。
「和からし」と「洋からし」という言葉を聞いたことがある人も多いはず。これって、どう違うのでしょう?実は、この呼び分けにも歴史があるんです。
昔、日本では主にオリエンタルマスタードの種子を使っていました。ところが、明治時代以降、欧米からイエローマスタードの種子が入ってきた。そこで、古来からのからしを「和からし」、新しく入ってきたものを「洋からし」と呼ぶようになったんです。
1. 粉からし ~振りかけて手軽に使える万能選手~
粉からしは、からし菜の種子を粉末状にしただけのシンプルな形。でも、このシンプルさが逆に魅力なんです。
お味噌汁に少しふりかけたり、和え物に加えたり。特に、おひたしやごま和えに粉からしを加えると、ピリッとした刺激が加わって、より香り高い一品に仕上がります。
面白いのは、粉からしは水を加えることで辛みが強くなること。これは化学反応によるもので、粉からしに含まれる成分が水と結びつくことで、あの特徴的な辛みが生まれるんです。
2. 練りからし ~日本の食卓に欠かせない名わき役~
おでんや納豆に添えられる練りからし。これは粉からしを水やぬるま湯で練ったものです。最近は保存性を考えて、食用油脂や食塩が加えられているものが多いですね。
練りからしは、水と混ぜてから時間が経つと辛みが弱くなっていきます。だから、市販のチューブ入り練りからしには、辛みを長持ちさせる工夫が施されているんです。
特徴 | 使い方・向く料理 | |
---|---|---|
粉からし | ・からし菜の種子を粉末状にしたもの ・水を加えると辛みが強くなる ・振りかけやすい形状 |
・お味噌汁に振りかける ・おひたしやごま和えに加える ・和え物の味付け |
練りからし | ・粉からしを水やぬるま湯で練ったもの ・時間とともに辛みが弱まる ・チューブタイプが一般的 |
・おでんの薬味 ・納豆に添える ・刺身の付け合わせ |
マスタードの世界 ~個性豊かな洋の味わい~
マスタードの世界も実に多彩。国や地域によって、それぞれ特徴的なマスタードが生まれました。
1. イギリスマスタード ~伝統が育んだ黄金色の調味料~
イギリスマスタードの特徴は、その鮮やかな黄色。これは、ターメリック(ウコン)が加えられているから。辛みは和からしほどではありませんが、マスタードの中では比較的強めです。
イギリスでは、ローストビーフやサンドイッチに欠かせない調味料。また、魚料理のソースにも使われるそうです。
2. ディジョンマスタード ~フランスが誇る美食の名品~
フランス・ディジョン地方発祥のこのマスタードは、ブドウの果汁「ヴェルジュ」を使って作られます。上品な酸味とフルーティーな香りが特徴で、サラダのドレッシングやソースの材料として重宝されています。
3. アメリカンマスタード ~みんなが知ってる黄色い相棒~
ホットドッグやハンバーガーでおなじみの黄色いマスタード。イギリスマスタードと同じくターメリックで色付けされていますが、味は甘みと酸味のバランスが特徴です。
特徴 | 使い方・向く料理 | |
---|---|---|
イギリス マスタード |
・ターメリックで鮮やかな黄色 ・マスタードの中では比較的辛め ・刺激的な風味 |
・ローストビーフ ・サンドイッチ ・魚料理のソース |
ディジョン マスタード |
・ブドウ果汁(ヴェルジュ)使用 ・上品な酸味 ・フルーティーな香り |
・サラダのドレッシング ・ソースの材料 ・肉料理の付け合わせ |
アメリカン マスタード |
・ターメリックで色付け ・甘みと酸味のバランス ・マイルドな味わい |
・ホットドッグ ・ハンバーガー ・サンドイッチ |
知って楽しい!からしとマスタードの豆知識
実は、からしやマスタードには意外な使われ方もあったんです。例えば、昔は民間療法として胸に貼って使われていたことも。また、ヨーロッパでは中世時代、庶民が使える唯一のスパイスだったという記録も残っています。
今では調味料として使われるのが一般的ですが、その歴史は実に深いもの。次に友達や家族と食事をするとき、こんな話題を振ってみるのも面白いかもしれませんね。
「へぇ、からしとマスタードってそんなに違うんだ!」きっと、会話が盛り上がること間違いなしです。
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