演技が下手な人をなぜ『大根役者』と呼ぶの?意外と知られていない有力な説とは

雑学

「大根役者」に込められた意味

お芝居を観た観客たちが、特定の俳優や役者のことを「大根役者」、時には縮めて「大根」と言うことがあります。これは、演技の下手な人を指している言葉で、あざけりの意味まで込められているなかなか強烈なものです。

この言葉が誕生したのは江戸時代とされ、きっかけとなったのは歌舞伎の舞台でした。歌舞伎では、観客が役者に向けて声援を送り、盛り上げながら観るスタイルが有名ですが、当時から下手な役者にはヤジとして大根役者という言葉を投げかけていたようです。

決してポジティブな褒め言葉ではないので、使うことをためらうケースも多いのですが、いったいなぜ演技が上手くない人のことを「大根」に例えて言うようになったのでしょうか。

大根役者という言葉が生まれた理由

演技が下手な人を大根に例えるようになった理由は、言葉遊びのようなものを中心に諸説あります。中でも有力だとされているのは、以下の4つです。

1.食あたりしない食材だから

大根はどんな調理方法で食べても消化が良く、お腹に優しい野菜です。また、刺身に添えるつまのように、他の食材の腐敗を防ぐために大根の抗菌成分を用いて「食あたり」を防ぐ役割を担うこともあります。

ところが、この「あたらない」という大根の特長が、「役者として当たらない(ヒットしない/人気が出ない)」に引っかけられ、「大根=下手で売れない役者」と認識されるようになったと言われています。

2.大根はおろして使うから

大根はおろして使うことがよくありますが、江戸時代の頃も大根おろしを薬味として重宝したり、汁物に混ぜて食べていたようです。

しかし、大根を「おろす」という行為は、「舞台から役者をおろす(配役を外す)」というネガティブな表現ともつながってしまいました。演技が下手な役者はお客さんを呼べないため、舞台には上げてもらえないのです。

3.大根が白い見た目をしているから

大根と言えば、外側の皮も中身も白色です。食べる時にはおいしそうに見える色合いですが、お芝居となると白色は「素人」や「白ける」といった言葉を連想してしまいます。

素人のような芝居、舞台に上がると観客を白けさせる役者といった意味を込めて、大根役者と呼ぶようになったという説です。

4.大根が馬の脚を想像させるから

演技が上手い人は、主役級となる「人間」を演じることができますが、演技が下手な人は人間ではなく「馬」を演じたりします。

すると、舞台上ではその役者の足しか見えず、馬の脚は大根に例えられることもあったため、大根役者という言葉につながったのではと考えられています。

海外にもあった大根役者に似た言葉

日本語の大根役者に似ている言葉は、外国にも存在しています。例えば英語では、「ham actor(ハム・アクター)」と呼ばれているのだとか。

ハムは、ウィリアム・シェイクスピアの「ハムレット」に通じるもので、「芝居が下手な人を含めて誰が演じてもある程度のヒットは約束された名作だから」とか、「下手な人ほど演じたがるから」など、そう呼ぶようになった理由はさまざまあるようです。

大根役者と反対の意味を持つ言葉

演技が下手な大根役者の対義語となる言葉も、もちろんあります。反対の意味を持つ褒め言葉として有名なのは、「千両役者」でしょう。

実力と風格を兼ね備え、1年に千両もの大金をお給料としてもらう人気の歌舞伎役者という意味を込め、この名前がつけられたとされています。

大根役者の類義語に「三文役者」もありますが、これは三文程度しか稼げない出演料の低い役者を意味し、千両を稼ぐ役者とは逆の立場に置かれていました。

役者の演技に関する好みは人それぞれ

今回は、大根役者という言葉がどこからきたのかをご紹介しました。由来としては面白いものが多いのですが、実際に誰かに使うとなると避けたい言葉でもあります。

1人の役者の演技が自分の好みではなかったとしても、他の人から見れば「大根」ではないかもしれません。お芝居は純粋に楽しむ気持ちで観てみるのが1番良いでしょう。

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