音楽室の肖像画、そこにある理由とは?
「なぜ音楽室にだけ音楽家の肖像画があるのか?」。ふとしたときに誰もが疑問に感じるかもしれません。
確かに、理科室にガリレオやニュートンの肖像が飾られることもなく、家庭科室に料理人の肖像画があるわけでもありません。それが音楽室だけに限られている理由を知ると、ただのインテリアの一部だと思っていた肖像画が、どこか身近で親しみ深い存在に変わってくるかもしれません。
この不思議な肖像画の歴史をたどると、意外なきっかけと変遷が見えてきます。音楽家たちの絵がずらりと並ぶようになった裏には、誰もが思いもよらない「ある理由」が隠されていたのです。
実は楽器のおまけだった!?肖像画の誕生秘話
音楽室に肖像画が並ぶきっかけとなったのは、昭和30年代に遡ります。当時のある楽譜出版社が「楽器を学校に売り込みたい」という目標を掲げ、独自の宣伝方法として「音楽家の肖像画付きカレンダー」をおまけに付け始めたのが最初でした。実はこれが、現在の音楽室の定番ともいえる肖像画の原点となったのです。
当時、音楽家の顔を知る人は多くなく、ベートーヴェンやバッハの顔も教科書にはなかった時代でした。そのため、このカレンダーは「どんな人があの有名な曲を作ったのか」を身近に感じられる新鮮な贈り物だったのでしょう。カレンダーは瞬く間に話題となり、特に学校の先生たちに大好評。こうしてカレンダーの日付部分を切り取り、肖像画部分だけを音楽室に貼るようになりました。
その後も、毎年異なる音楽家の肖像画がカレンダーとして作られ、音楽室の風景として少しずつ定着していきました。誰かが始めたこの飾り方が、後に全国の学校に広がるなんて、当時は想像もできなかったでしょう。
先生たちに大好評!音楽室に貼られるようになった肖像画
「楽器のおまけ」だった肖像画が、どうして全国の音楽室に並ぶほど広がっていったのでしょうか?
それには学校の先生たちの影響が大きかったと言われています。カレンダーの肖像画は単なるおまけで終わるはずが、「これを音楽室に飾ると生徒に音楽家の存在が身近になる」と考えた先生たちが次々と壁に貼り始めました。
こうして一度飾られた肖像画は、翌年になると新しい音楽家の肖像画が追加され、気づけば毎年少しずつ音楽室が賑やかになっていったのです。ベートーヴェンやバッハといった巨匠の顔が並ぶこの風景は、いつしか音楽室の象徴となり、昭和42年には文部省(現在の文部科学省)が「音楽教材」として正式に肖像画を全国の中学校に推奨するようになりました。しかし、今は飾らない学校が増えているそうです。
時代と共に変わる音楽室の風景ですが、この文化が生まれた背景を知ることで、肖像画が一枚一枚持つ意味が一層深まるかもしれません。
音楽室の壁に描かれた作曲家たちの顔、誰が描いたのか?
ところで、あの肖像画は誰が描いたのでしょうか?
その答えは、「大貫松三」という洋画家にたどり着きます。彼は、日本でのクラシック音楽の普及に貢献した全音楽譜出版社からの依頼を受け、ヨーロッパで有名な肖像画をもとに、ベートーヴェンやバッハといった作曲家たちの肖像を描きました。
当時はインターネットもなく、作曲家の顔を知る手段が限られていたため、大貫氏はヨーロッパで描かれた作曲家たちの肖像画を参考に、苦労して模写を行ったそうです。例えばベートーヴェンの肖像は、ヨーゼフ・カール・シュティラーが描いたもので、これが日本の音楽室で親しまれる姿となりました。
大貫氏が描いた肖像画はただの模写ではなく、音楽室の一部としての存在感を放つ特別な作品となりました。この時代背景を知ると、肖像画が単なるデコレーション以上の意味を持っていたことが感じられます。
今も購入できる?音楽家肖像画の現在の形
現在では、音楽室に飾られていたあの肖像画たちは『全音 世界大音楽家肖像画集』という商品として販売されています。当時のおまけだった肖像画がこうして商品化された背景には、多くの人々が音楽家たちの存在を身近に感じたいという思いがあったのでしょう。
この商品は現在でも購入可能で、教育現場だけでなく、一般の家庭でもインテリアとして人気があります。ベートーヴェンやバッハの顔が、単なる「学校の音楽室の風景」から、「自宅の壁にも飾れる一枚のアート」としての価値を持つようになったのです。おまけだった肖像画が、今もなお愛され続けている理由がここにあります。
肖像画の秘密を誰かに話してみませんか?
音楽室の肖像画の背景にあったのは、意外にも単なる「楽器の販促」から始まったストーリーでした。音楽室に並ぶあの絵が、いかにして全国に広がり、文化として根付いたのかを知ると、次に音楽室を訪れたときの見方も変わるかもしれません。
この話をぜひ家族や友人にも教えてあげてください。音楽室の肖像画が私たちに語りかけるメッセージは、時代を超えた文化の名残です。その背景に思いを馳せながら、音楽家たちの顔に再び目を向けてみると、新しい発見があるかもしれません。次に音楽室に足を踏み入れたとき、この雑学を思い出して、少しだけ懐かしさを感じてもらえると嬉しいですね。
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