「おいでやす」と「おこしやす」の意外な使い分け
京都に旅行に行くと必ず耳にする「おいでやす」と「おこしやす」。「いらっしゃいませ」という意味の2つの言葉の使い分けには、実は京都独特の温かな心遣いが隠されているんです。
例えば、事前に予約して京都の老舗旅館に到着したとき。玄関で女将さんが「おこしやす」と深々とお辞儀をしながら出迎えてくれます。一方、錦市場を散策していると、お店の方から「おいでやす」と気さくな声をかけられます。
同じような意味なのに、シーンによって使い分けられるのはなぜでしょう?
「おこしやす」には遠方から来た人への感謝の気持ちが込められている
「おこしやす」には、「遠路はるばるありがとうございます」という深い感謝の気持ちが込められています。江戸時代、京都に来るには多くの人が逢坂山(おうさかやま)を越えてきました。その長い道のりをねぎらう気持ちから「おこしやす」という言葉が生まれたという説もあるんです。
京都の老舗旅館のベテラン仲居さんによると、「お客様への感謝の気持ちは同じでも、どこから来られたのか、どのくらい滞在されるのかによって、言葉を使い分けることで、より丁寧なおもてなしができるんです」とのこと。
「おいでやす」は気軽で温かみのある歓迎の気持ち
一方の「おいでやす」は、より気軽な歓迎の意を表します。商店街や市場のお店では、近所の常連さんから観光客まで、様々な人が気軽に立ち寄ります。そんな日常的な出会いを温かく迎え入れる言葉として「おいでやす」が使われているんです。
錦市場で長年商いを営むあるお店の方は、「お客さんと距離が近いからこそ、フランクに、でも心を込めて『おいでやす』と声をかけます。この言葉には、お客さんを身近に感じる私たちの気持ちが表れているんです」と語ります。
「おいでやす」と「おこしやす」で変わる店員の対応の違い
これら2つの言葉の使い分けには、実は店員同士の暗黙のコミュニケーションとしての役割もあるんです。「おこしやす」と声をかけられたお客様には、より丁寧なサービスや特別な配慮が必要だということを、言葉を通じて店内のスタッフ全員が理解するわけです。
ある老舗料亭の料理長によれば、「『おこしやす』というフレーズを耳にしたら、厨房のスタッフも身が引き締まります。予約のお客様や大切なお得意様だということが、この一言で伝わるんです」とのことです。
知れば知るほど面白い!「おいでやす」「おこしやす」の使い分けパターン
この2つの言葉の使い分けには、実に様々なパターンがあります。例えば、
- 予約客には「おこしやす」、飛び込みのお客様には「おいでやす」
- 宿泊客には「おこしやす」、日帰り客には「おいでやす」
- 馴染み客には「おこしやす」、初めての方には「おいでやす」
- 夜の予約客には「おこしやす」、昼の立ち寄り客には「おいでやす」
面白いのは、同じお客様でも、状況によって使い分けが変わることです。例えば、普段は「おいでやす」で迎えている常連客でも、特別な記念日の予約で来店された時は「おこしやす」でお迎えする、といった具合です。
あなたも京都通!「おいでやす」「おこしやす」の魅力を伝えてみよう
「おいでやす」と「おこしやす」、一見同じような挨拶言葉に見えて、実は京都の心遣いが詰まった奥深い表現なんです。この違いを知っているだけで、京都旅行がより楽しくなること間違いなし!
次に京都を訪れる機会があったら、どちらの言葉でお迎えされるか、ぜひ意識して聞いてみてください。そして、その違いの理由を友達や家族に教えてあげるのも楽しいかもしれません。きっと「へー!」と驚かれるはず。
京都の言葉の奥深さを知ることは、日本の伝統的なおもてなしの心に触れることでもあります。何気ない挨拶の言葉の中にも、相手を思いやる繊細な心遣いが息づいているんですね。
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