熟睡するときに使う『ぐっすり』という言葉
「ぐっすり眠る」という表現、普段何気なく使っていますが実は、この「ぐっすり」という言葉の語源には、意外な秘密が隠されています。日本語と思いきや、実は日本語以外の言葉が影響しているという説もあるのだとか。
今回は「ぐっすり」の由来について深掘り。最後までお読みいただくと、ちょっぴり物知りになった気分が味わえることでしょう。
実は「ぐっすり」の語源は定かではない
結論から述べると「ぐっすり」の語源はいまだによく分かっていません。一応、いくつかの説はあり、江戸時代には既に存在していたそうです。ただ、具体的にいつ、何に由来して「ぐっすり」という言葉が誕生したのかは詳しく分かっていないそうです。
英語の「good sleep(グッドスリープ)」に由来するという説
「ぐっすり」の語源においてよく取り上げられる説の一つが、英語の「good sleep(グッドスリープ)」が由来だというもの。この説によれば、「good sleep」という英語の表現が日本語に取り入れられ、音が変化して「ぐっすり」となったとされています。
英語の「good sleep」は安眠や快適な眠りを指す言葉であり、日本語の「ぐっすり」に類似する意味を持っています、さらに言えば、音の響きも似ています。ぐっすりが「good sleep(グッドスリープ)」由来とする説が生まれるのも不思議ではないのかもしれません。
「good sleep(グッドスリープ)説」には懐疑的なところも多い
しかし、「good sleep」説には、懐疑的な意見が多いです。というよりも、ほぼ否定されています。例えば、「ぐっすり」という言葉は、江戸時代の鎖国期間中からすでに使われていたことが分かっています。1790年に書かれた『黄表紙・即席耳学問』という書物には、次のような一文が登場します。
『其身六十にあまる比は、人も知る金持ちとなりしを、ぐっすり息子に譲り』
ここでの「ぐっすり」は、「すっかり」「残らず」といった意味で使われていることが分かります。
また、1871年に作られた歌舞伎の『四十七石忠矢計(十二時忠臣蔵)』の台詞にも「ぐっすり」という表現があります。
『又ぐっすり呑めるぜ、おい旦那は御如在がねえな』
こちらでは、「十分に」「しっかり」といった意味で使われています。このように「すっかり」「しっかり」といった意味から、次第に「ぐっすり寝る」という使い方が広がり、現在の「すっかり寝る」「十分に寝る」という意味が定着したと考えられます。
さらに、江戸時代よりも前の時期に刊行された雑俳『清書帳』には、すでに「ぐっすり寝る」といった意味で使われている例が見られます。ここでは、
『ちゃんと爰(ここ)へ来てグッスリと寝て』
とあり、現在の使い方とほぼ同じです。
これらのことから、「ぐっすり」は日本語に元々あった言葉であり、英語の「good sleep」から来たという説は成立しにくいと言えます。むしろ、たまたま英語にも似たような発音があっただけで、日本独自の表現であったと考える方が自然でしょう。
今回の雑学、面白かったらぜひ周りの人にも教えてみてください。