空を飛べない鳥とは?
鳥と言えば「空を飛ぶ」というイメージがすぐに思い浮かびますが、地球上には飛行能力を失ってしまった鳥たちが存在します。
代表的なのは、鳥の中でも大型のダチョウやエミュー、水族館で人気者のペンギン、果物のキウイにそっくりな名前を持つキーウィなど。ちなみに、日本にもヤンバルクイナと呼ばれる飛べない鳥が沖縄県にいます。
これらの鳥は、飛べる鳥たちとは明らかに翼の形状や体つきに関して違いを抱えていることがほとんどです。いったいなぜ自然界で生きていくのに有効活用できそうな飛ぶ力を捨てて、体を変化させることになったのでしょうか?
空を飛べない鳥が生まれた理由
周りに天敵となる生き物が少ないから
空を飛べない鳥たちも、祖先はちゃんと飛行能力を持っていました。ところが、その祖先が選んだ定住地には捕食者となる動物がほとんどおらず、「飛んで逃げる」能力を持っていなくても生きていくことができたのです。
そもそも、重力に逆らって飛ぶための筋肉を維持するには、本来なら食べ物を通じてたくさんのエネルギーを確保する必要があります。けれども、飛ぶことで得られるメリットが小さいのであれば、その能力を捨てて繁殖などに力を入れ、効率よく生きていった方が楽です。
そのため、ニュージーランドのキーウィや日本のヤンバルクイナ、南極大陸のペンギンなど、大陸ではなく海の中の孤島で暮らすようになった鳥たちの一部は、飛ぶことを放棄したのだと言われています。
「飛ぶ」以外の能力を優先したから
その結果ペンギンは、外敵から飛んで逃げる能力を必要としなくなった分、体を軽く保つ必要もなくなり、体に厚い脂肪をまとわせて寒さをしのげる体を手に入れました。そして、エサとなる魚を追いかけやすく、海の中を自由自在に泳げるヒレとして活用できるよう、翼を変化させていったのです。
このように、生息地の環境に合わせた能力を向上させるために、飛べない体に変わっていった鳥たちは他にもいます。
ダチョウやエミュー、ヤンバルクイナなどを例に挙げると、これらの鳥たちは飛ぶ代わりに「速く走る」能力が発達しています。
例えばダチョウは、サバンナで敵に襲われた時に時速70~80kmの速さで走って逃げることができるほか、万が一追いつかれても、その強靭な脚で肉食動物を蹴散らす強さも持っている地球上で最も大きい鳥類です。
空を飛べない鳥と飛べる鳥の違い
空を飛べる鳥は、内部が空洞になっている細い骨のおかげで体重が軽くなっており、飛行を妨げない体つきをしています。また、体格に比べて翼が大きいのも特徴の1つでしょう。
しかし、空を飛ばないことを選んだ鳥たちは、空洞のない太い骨格を持っていたり、ペンギンのように脂肪をまとって体重を重くしたことで、飛び立ちにくい体つきになりました。
また、翼が極端に小さくなっていたり、羽ばたくための胸の筋肉や、それを支える骨が発達していないといった特徴が見られることもあります。
ダチョウは飛べない鳥の中では珍しく大きな翼を持ってはいますが、走っている時の方向転換や日頃の体温調節に使うなど、飛ぶ鳥とは活用方法が大きく違っているのも面白い点です。飛べない鳥の発達した部位と退化した部位は、種類ごとにさまざまなのも生命の不思議ですね。
飛べない鳥の生態は興味深い!
空を飛べない鳥たちは、あえて「飛ばない」選択をしながら命を繋いできました。飛ぶのを止めて効率化させた生き方や、代わりに発達させた別の能力を見てみると、生き物の進化や退化の歴史がとても興味深く感じます。
もしも飛べない鳥たちを見ることがあれば、飛べる鳥とどこがどんなふうに違っているのか、ぜひ確かめてみてくださいね。