船底の赤はフジツボ対策の結果だった

大型船を見ると、船体の上側は白や黒、青などさまざまなのに、水面より下だけ赤いことがあります。いかにも「赤色そのものに何か意味がありそう」な見た目です。
ところが、赤いから効果があるわけではありません。
船底には、フジツボや藻類などの付着を抑える「防汚塗料」が使われています。その代表的な防汚剤として広く使われてきたのが、亜酸化銅(Cu₂O)。この物質が、もともと赤から赤褐色をしているのです。
亜酸化銅を含む塗料が赤系になりやすいため、大型船の船底にも赤が多く見られます。一方、防汚性を発揮するのは見た目の赤色ではなく、亜酸化銅が海水中で生じさせる銅イオンの働きです。
つまり、「赤く塗ったからフジツボがつきにくい」のではなく、「フジツボ対策に使う成分が赤かった」ということ。あの赤い船底は、防汚対策の結果として生まれた見た目なのです。
フジツボは船にとって単なる汚れではない

船底に専用の塗料を使うほど、フジツボは厄介な存在なのでしょうか。問題は、見た目が汚れることだけではありません。
船底にフジツボや藻類などが増えると、それまで滑らかだった表面がざらざらになります。海の中を進む船にとって、この小さな凹凸が思わぬ負担になります。
表面が粗くなれば水の抵抗が増えます。同じ速度を保とうとすれば余計なエネルギーが必要になり、同じ出力なら速度が落ちることもあります。
その影響が分かりやすいのが、神戸新聞で紹介された内航タンカー運航会社の例です。通常14.5ノットほど出る船でも、船底の汚れが進むと12ノット以下になる場合があるといいます。一社の事例とはいえ、船底についた生き物が航行性能にまで響くことが分かります。
石油タンカーの船底に赤が多いのも、タンカーだけの特殊な事情ではありません。旅客船や貨物船なども、水中にある船体をできるだけ滑らかに保ちたい事情は同じです。
水面を境に船体の色が変わって見える裏には、船を効率よく走らせるための工夫があります。
実は船底は赤じゃなくてもいい

ここまで読むと、「では船底は赤でなければならないのか」と思いたくなります。実際には、赤は防汚のための必須カラーではありません。
亜酸化銅を使った防汚塗料にも赤以外の色があり、青や黒、白などの船底も見られます。さらに、亜酸化銅を使わないタイプの防汚塗料も存在します。
船底の色と、防汚の仕組みは別ものです。赤い船底が多いのは亜酸化銅の色が表に現れやすいからであり、防汚する方法そのものが赤色に限定されているわけではありません。
港で次に船を見る機会があれば、赤い船底だけでなく、青や黒など別の色にも注目してみてください。色は違っていても、その下には「海の中で船体をどう守るか」という同じ課題への工夫が隠れています。
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