パンの袋を留める『アレ』の正体がスゴすぎる!バッグ・クロージャーを徹底解説

雑学

実は知らない人がほとんど!パンの袋の留め具の正体

「これ、なんて呼べばいいんだろう?」

スーパーで買った食パンの袋。開けるときに必ず触れる青や白の留め具、意外とその正式名称を知らない人がほとんどです。家族や友人と話すときも「パンの袋の、あれ」「留めるやつ」と曖昧な言い方をしてしまいがちですよね。

この留め具、正式には「バッグクロージャー」と呼ばれています。クロージャーとは「閉じるもの」という意味で、まさに袋を閉じる役割を持つ部品というわけです。

海外では「Bread clip(ブレッド・クリップ)」とも呼ばれており、実はパンだけでなく、野菜や果物の袋の留め具としても世界中で使用されています。特にアメリカでは、りんごやにんじんなど、生鮮食品の包装に広く使われているそうです。

日本の場合、バッグクロージャーの約8割が食パンの包装に使用されています。毎日のように目にする存在なのに、その名前を知る人は極めて少ないという、不思議な立場にあるんです。

でも、このバッグクロージャー、実は単なる留め具ではありません。70年以上の歴史を持ち、特殊な権利で守られた独自の形状、そして驚くべき製造量を誇る工業製品なのです。私たちの知らないところで、様々な工夫と技術が詰め込まれているんです。

コンビニのパンが変えた歴史!バッグクロージャー誕生物語

いったい誰が、このような便利な留め具を思いついたのでしょうか。バッグクロージャーの誕生には、意外なストーリーが隠されています。

1952年、アメリカのある男性が飛行機の中でひらめきを得ました。当時、包装機械の会社を経営していたフロイド・パクストン氏。彼はワシントン州のりんご農家から「りんごを袋詰めした後に、袋の口を簡単に閉じる方法はないか?」という相談を受けていたのです。

移動中の飛行機の中で考えをめぐらせていたパクストン氏は、ポケットナイフとプラスチックの破片を使って、今のバッグクロージャーの原型となる留め具を生み出しました。この小さな発明が、その後世界中で使われる製品へと成長していくことになります。

1960年代に入ると、パン業界での需要が急増。大量生産が可能な製造設備が整備され、バッグクロージャーは爆発的に普及していきました。日本でも1980年代になると、それまで使われていたビニール針金や紙の包装から、このバッグクロージャーへの切り替えが進んでいきます。

実は、このバッグクロージャーの普及には、コンビニエンスストアの存在が大きく影響しています。24時間営業のコンビニでは、商品の賞味期限を正確に管理する必要がありました。バッグクロージャーなら、製造日時や賞味期限を印字することができ、しかも何度でも開け閉めできる。この特徴が、コンビニの品質管理に大きく貢献したのです。

埼玉が誇る世界の工場!驚異の年間30億個生産

今、日本で見かけるバッグクロージャーは、すべて埼玉県川口市にある「クイックロック・ジャパン」で製造されています。そう、私たちが毎日何気なく使っているこの留め具は、実は日本の「地場産業」だったんです。

クイックロック・ジャパンの本社工場は、南北線・川口元郷駅から徒歩10分ほどの場所にあります。小学校ほどの敷地に、第一工場と第二工場を構え、年間なんと約30億個ものバッグクロージャーを製造しています。驚くべきことに、この数は日本のパン市場全体の需要をほぼ完全にカバーしているそうです。

「作っているのはこの会社だけなの?」と思われるかもしれません。実は、バッグクロージャーには特殊な権利が関係しているんです。その秘密は、あの独特な形状にありました。

左右非対称のデザインに隠された驚きの技術

バッグクロージャーをよく見ると、左右非対称の形をしていることに気づきます。まるでスペースインベーダーのキャラクターのような、どこか愛らしい姿。でも、この形には緻密な計算が隠されているんです。

製造ラインでは、大きなプラスチックのシートから次々とバッグクロージャーが打ち抜かれていきます。その際、隣り合うパーツがスムーズに切り離されるよう、突起やへこみが絶妙な角度で設計されているのです。

また、パンの袋に取り付ける際の作業性も考慮されています。製パン工場では1分間に何十個ものパンが製造されていきます。その高速な製造ラインの中で、確実に袋を留められるよう、バッグクロージャーの形状は徹底的に研究されてきたのです。

世界でたった一つの形!「立体商標」という特別な権利

このバッグクロージャーの形状には、実は「立体商標」という特別な権利が与えられています。通常の商標権は「名前」や「ロゴ」を保護するものですが、立体商標は「形」そのものを保護する特別な権利なのです。

例えば、ペットボトルのコカ・コーラのような、誰もが認識できる特徴的な形状が立体商標として認められる代表例です。バッグクロージャーも、その独特な形状が多くの人々に認知され、「この形を見たら、バッグクロージャーだとわかる」という状態が確立されたことで、立体商標として認められました。

この権利は半永久的に維持することができ、他社が同じ形状の製品を作ることはできません。そのため、日本国内ではクイックロック・ジャパンだけが製造を許されているというわけです。言わば「世界でたった一つの形」として、法律で保護されているんです。

「じゃあ、ずっと安泰なんじゃない?」と思われるかもしれません。でも、実はそうでもないんです。

進化を続けるバッグクロージャーの新たな挑戦

近年、マイクロプラスチック問題への関心が高まり、プラスチック製品への風当たりが強くなっています。バッグクロージャーも例外ではありません。「環境に配慮した新素材の開発が急務です」と、クイックロック・ジャパンの広報担当者は話します。

また、食パンの需要自体も大きな変動がない中、新しい活路を見出す必要も出てきています。そこで注目されているのが、バッグクロージャーと商品ラベルを一体化した「ラベルクロージャー」です。賞味期限や商品情報を直接印刷できるため、パッケージの省スペース化にも貢献できます。

毎日使うものだからこそ、驚きの発見がある

「へぇ、パンの袋の留め具にこんな歴史や技術が詰まっていたんだ!」

友達や家族と食事をしているとき、パンの袋を開けながら「実はね、この留め具のことをバッグクロージャーって言うんだよ」「埼玉の工場で年間30億個も作られてるんだって」と話してみてください。きっと「え、そうなの!?」という驚きの声が返ってくるはずです。

私たちの身近にあるものほど、実は知られていない秘密が隠されているもの。バッグクロージャーは、まさにその代表例と言えるでしょう。日常の何気ない道具の中に、技術の進歩や人々の工夫が詰まっている。そんな発見の喜びを、ぜひ誰かと共有してみてはいかがでしょうか。

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