『フライドチキン』と『唐揚げ』の違いは味付けにあった!食文化・調理法を深掘りして解説

雑学

同じようで違う『フライドチキン』と『唐揚げ』の世界

先日、海外から来た友人と居酒屋に行った時のこと。メニューを眺めていた友人が「この唐揚げって、フライドチキンとどう違うの?」と質問してきました。その時は「まあ、同じようなものだよ」と答えましたが、家に帰ってから気になって調べ始めたら、これが想像以上に奥深い世界だったんです。

実は、揚げ鶏料理には世界各地で長い歴史があり、それぞれの文化や食習慣によって独自の進化を遂げてきました。古代ローマでは紀元前から鶏肉を揚げる料理が存在し、4世紀の料理書『アピキウス』(※1)にはすでにフライドチキンの原型とも言える料理が登場しているんです。

アジアでも、中国の精進料理(※2)から発展した油で揚げる調理法が、日本の唐揚げの源流となっています。これらの料理は時代とともに進化し、今では私たちの食卓に欠かせない存在となっています。

※1:アピキウスとは、古代ローマの料理書で、現存する最古の料理本の一つです。当時の貴族の食文化を知る貴重な資料として知られています。
※2:精進料理は、仏教の教えに基づいて肉や魚を使わない日本の伝統的な料理法です。油で揚げる技術は、中国から伝来した精進料理の影響を強く受けています。

『フライドチキン』と『唐揚げ』の決定的な違いとは

見た目は似ているフライドチキンと唐揚げですが、実は調理方法に大きな違いがあります。最も重要な違いは「味付けのタイミング」です。

唐揚げは、下味をしっかりと肉に染み込ませてから揚げるのが特徴です。醤油、酒、生姜などで下味を付け、その後で片栗粉や小麦粉をまぶして揚げます。これにより、外はカラッと、中はジューシーで味の染み込んだ仕上がりになります。

一方、フライドチキンは肉自体には塩コショウ程度の味付けで、主に衣に味を付けます。ハーブやスパイスを効かせた小麦粉の衣で包み、サクサクとした食感と香り高い味わいを楽しむ料理なんです。

これらの違いが生まれた背景には、それぞれの文化圏での調理器具や食材の違いも関係しています。たとえば、日本では古くから醤油文化が発達していたため、下味を重視する調理法が一般的でした。一方で、アメリカでは大量調理に適した衣付けの手法が好まれ、それがケンタッキーフライドチキン(※3)のような商業的成功にもつながっていきます。

面白いことに、フライドチキンには意外な歴史的背景があります。19世紀のアメリカ南部では、プランテーションで働く人々の間で広まった料理でした。当時、鶏肉は高価な食材で、特に良質な部位は富裕層の食卓に上がっていましたが、骨付きの部位は手軽に調理できるフライドチキンとして親しまれていったのです。

また、調理法の違いは食べ方の文化にも影響を与えています。唐揚げは箸でつまんで食べることを前提に、一口サイズに切り分けられることが多いですが、フライドチキンは手づかみで食べることを想定して、大きな骨付きの状態で提供されることが一般的です。

※3:ケンタッキーフライドチキンは、1940年代にカーネル・サンダースによって創業され、独自のスパイスブレンドと調理法で世界的な人気を獲得したファストフードチェーンです。

フライドチキンと唐揚げの基本的な違い
特徴 唐揚げ フライドチキン
味付けのタイミング 肉に下味を付ける 衣に味を付ける
主な調味料 醤油、酒、生姜など スパイス、ハーブなど
衣の特徴 薄め(片栗粉や小麦粉) 厚め(スパイス入り小麦粉)
食べる時のサイズ 一口サイズが多い 骨付きの大きめサイズ

奥深い!日本の揚げ鶏文化の広がり

鳥の竜田揚げ

日本の揚げ鶏文化の面白いところは、地域によって実に多様な発展を遂げている点です。例えば、北海道では「ザンギ」(※4)と呼ばれる独特の唐揚げがあり、これは中国語の「炸鶏(ザージー)」が語源とされています。

実は、日本の揚げ鶏文化は時代とともに進化を続けています。1747年の文献に登場する「から揚げ」は、現代のものとは少し異なっていました。今でこそ一般的となった醤油ベースの味付けも、長い歴史の中で確立されていった手法なんです。

そんな日本の揚げ鶏文化の広がりを象徴するのが「竜田揚げ」です。この料理名の由来には面白いエピソードがあります。奈良県の竜田川は古くから紅葉の名所として知られており、醤油で下味をつけた肉を揚げた時の色合いが紅葉に似ていることから、この名前が付いたとされているんです。

※4:ザンギは、北海道で生まれた唐揚げの方言で、一般的な唐揚げより味付けが濃いめなのが特徴です。

世界の揚げ鶏料理から見える食文化の違い

実は、世界各国にはその土地ならではの揚げ鶏料理が存在します。台湾の「香鶏排(シャンジーパイ)」(※5)は、日本の唐揚げとフライドチキンの特徴を併せ持つようなユニークな料理です。肉自体にも衣にも味付けをするため、より濃厚な味わいを楽しむことができます。

アメリカでも地域によって特徴的な揚げ鶏料理があります。例えば、テネシー州ナッシュビルの「ホットチキン」は、ラードとカイエンペッパーのペーストで仕上げる独特な料理で、辛さと旨味の絶妙なバランスが特徴です。

また、イギリスやオーストラリアでは「チキン・メリーランド」という変わり種も。これは、バターミルクでマリネした鶏肉を揚げ焼きにする料理で、クリーミーなグレイビーソースと一緒に提供されます。

※5:香鶏排(シャンジーパイ)は、台湾の夜市などでよく見かける大判の揚げ鶏で、特徴的なスパイス使いで知られています。

揚げ鶏料理にまつわる意外な話

揚げ鶏料理には、思わず誰かに話したくなるような豆知識がたくさんあります。

例えば、アメリカのジョージア州ゲインズビルには、フライドチキンを手以外で食べることを禁止する条例があるそうです。2009年には実際に、ナイフとフォークを使った観光客が「逮捕」されたというエピソードも。

さらに面白いのは、日本のコンビニエンスストアで展開されているフライドチキンの開発秘話です。実は、大手コンビニのある経営者は、前職で長年にわたり畜産事業を担当していた経験を活かし、独自のフライドチキンを開発。その結果、年間数千万本という驚異的な販売数を記録したそうです。

このように、フライドチキンと唐揚げの違いを知ることは、単なる料理の知識以上の魅力があります。それは、各国の食文化や歴史、そして人々の暮らしの中で、どのように料理が育まれてきたかを知る楽しみでもあるんです。

次に友人と食事に行くとき、こんな話を交えながら揚げ鶏料理を楽しんでみるのはいかがでしょうか。きっと、いつもの料理がもっと味わい深いものになるはずです。

世界の主な揚げ鶏料理の特徴
料理名 地域 特徴的な味付け・調理法
唐揚げ 日本 醤油ベースの下味、薄い衣
フライドチキン アメリカ スパイシーな衣、骨付き
ザンギ 北海道 濃い目の味付け、にんにく効かせ
香鶏排 台湾 肉と衣両方に味付け、大判
ホットチキン ナッシュビル(米国) カイエンペッパー使用の激辛
竜田揚げ 日本 醤油・みりんの下味、片栗粉使用

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