思わず二度見してしまう「ハゲ割」の実態
「すみません、ハゲ割でお願いします」―――。
この言葉を聞いて、どんな場面を想像するでしょうか?実は、この「ハゲ割」というサービス、決して冗談ではありません。北海道から大阪まで、全国各地で実際に提供されている立派な割引制度なのです。
ホテルでは最大500円引き、居酒屋では料金の10%オフなど、その内容も場所によって様々。しかも、単なる話題作りのためだけのサービスではなく、それぞれの店舗が独自の理由や目的を持って導入しているというから驚きです。
ホテルが始めた「ハゲ割」の意外な誕生秘話
「ハゲ割」の先駆けとなったのは、2014年に北海道の層雲峡マウントビューホテルが始めたサービスです。このホテルでは、宿泊客の髪の毛が少ないと判断された場合、宿泊料金から300〜500円を割り引くという画期的な制度を導入しました。
きっかけは、ホテルの清掃スタッフからの一言でした。「排水溝の髪の毛詰まりを取り除くのが大変…」。この声を聞いた社長は、自身もスキンヘッドだったことから「そうか、俺みたいな頭なら掃除の手間も省けるはずだ!」とひらめいたそうです。
実際、髪の毛が少ないお客様の場合、以下のような面でホテル側の作業効率が上がるというメリットがあります:
- 排水溝の清掃時間が短縮できる
- アメニティの消費量(シャンプーなど)が少なくて済む
- 部屋の清掃時間も短縮できる
この合理的な発想から生まれた「ハゲ割」は、その後グループホテル全体に広がり、現在では全国約20店舗以上で実施されています。
居酒屋が独自に始めた「ハゲ割」のユニークな仕組み
ホテルとは全く異なる理由で「ハゲ割」を始めたのが、大阪・西成の居酒屋「西成屋台立呑み処 俺の出番」です。2021年にスタートしたこの店舗独自の「ハゲ割」は、最大10%という破格の割引率が特徴。しかも、ただ割引を受けるだけではありません。
なんと、この店舗では「ハゲ割認定証」という独自の証明書まで発行しているのです。認定を受けた常連客の写真は店内に飾られ、その数はすでに12枚以上。「認定されなかった」というお客様からは「まだあるんだぁ…」と複雑な反応も。実は、この認定基準には明確なルールがありません。全て店主の「独断と偏見」で決められているというから驚きです。
では、この店舗はなぜ「ハゲ割」を始めたのでしょうか?きっかけは意外にもテレビ番組でした。店主が病気から復帰した際、「何か面白いキャンペーンができないか」とテレビを見ていたところ、たまたま映った場面にヒントを得たそうです。
和歌山の2号店「鳥焼肉居酒屋 娘の出番」でも同じサービスを実施していますが、興味深いことに地域による反応の違いも。西成では「ノリのいい方が多い」ため、気軽に利用する人が多いそうですが、和歌山ではまだまだ利用者が少ないとか。
広がりを見せる「ハゲ割」のバリエーション
「ハゲ割」は、実はホテルや居酒屋以外でも見かけることができます。東京のあるお好み焼き店では、会計時に5%引きになる「ハゲ割」を導入。「毛が抜けるまで頑張って働くサラリーマンを応援したい」という粋な計らいからスタートしました。
このサービスの広がりに、IT業界の大物も反応。ソフトバンクの孫正義氏は「ハゲホーダイ」という架空のサービスを提案し、話題を呼びました。「月1回ハゲ頭を写メってソフトバンクに送ると、ハゲ率を測定して割引額が決定される」というユニークなアイデアでしたが、残念ながら実現には至っていません。
「ハゲ割」を使うための意外なハードル
「ハゲ割」を実施している店舗では、共通する悩みがあります。それは「お客様に声をかけづらい」という点。例えば、ホテルのフロントスタッフが「お客様、ハゲ割はいかがですか?」と声をかけることは、まずありえません。
そのため、多くの店舗では「自己申告制」を採用。しかし、これがまた新たな課題を生んでいます。ある店舗では「ハゲ割の存在を知らなかった」というお客様が後から残念がるケースも。また、「自分はハゲているのかどうか判断に迷う」という声も少なくありません。
サービスを提供する側も、判断には苦心しているようです。例えば、ホテルテトラグループでは「サザエさんの波平さんのような髪型」は対象外とされています。一方で「かつらを外して申告する」ケースは対象になるそう。こうした判断基準の違いも、各店舗の個性として捉えられています。
「ハゲ割」で見えてきた新しい価値観
一見すると話題作りのように思える「ハゲ割」ですが、実はそれ以上の意味があります。
ホテル業界では、環境への配慮という側面も。シャンプーの使用量が少なく、ドライヤーの使用時間も短いため、水道光熱費の削減にもつながっているそうです。
一方、飲食店では「ハゲ割認定証」を持つことが、ある種のコミュニティの証となっているケースも。「認定されたお客様同士で仲良くなる」という副産物まで生まれているとか。
知ってビックリ!「ハゲ割」の小ネタ集
面白いことに、「ハゲ割」には思わず誰かに教えたくなるような小ネタが満載です。
例えば、ホテルテトラグループでは社長の似顔絵マスコットがフロントに置かれており、照明に当たるとつるつる頭が輝くという遊び心も。また、「はげます水」「はげます煎餅」といった商品も販売しており、「人をはげます」という意味と掛けた粋な取り組みも。
また、西成の居酒屋では常連客の中に「ハゲ率」を競う文化が自然発生。「うちは3%や!」「いや、私のほうが10%や!」といった会話が飛び交うなど、独自のコミュニケーションが生まれているそうです。
このように、「ハゲ割」は単なる割引サービスを超えて、新しいコミュニケーションや価値観を生み出しているのです。あなたの周りにも、こんな面白いサービスが隠れているかもしれません。見つけたら、ぜひ誰かに教えてあげてください。きっと、予想以上に盛り上がる話題になるはずです。