温水洗浄便座の原型はアメリカの商品だった
今や日本のあちこちのトイレで当たり前となった温水洗浄便座。内閣府の調査では、2016年に一般世帯での普及率は80%を超えたのだそうです。
海外からも「日本のトイレの進化や便利さはすごい!」と評価されていますが、実は温水洗浄便座の原型となったのは日本の商品ではありませんでした。
元々は、痔の問題を抱える人向けにアメリカで開発された医療用の洗浄便座シート「ウォッシュエアシート」を、1960年代に東洋陶器(現TOTO)が輸入し、同時期に伊奈製陶(現INAX/LIXIL)も欧州から似た製品を取り寄せて販売し始めたのです。
「お尻を洗ってキレイにする」という発想は、日本ではなく欧米から取り入れたものでした。
当初は売れず・・・ウォシュレット開発の裏側
ところが、医療用に開発されたこの商品は座り心地が良くない、日本人の体格に合わず温水や温風がお尻にうまく当たらない、湯温が不安定など、さまざまな問題点を抱えていたのだとか。
そこでTOTOでは、社内の何百人もの男女の協力を得て一般向けの洗浄便座の開発をスタートさせます。便座の穴に通した針金線に肛門の位置の印をつけてもらってノズルの位置を決めたり、お尻を洗う水が出るベストな角度を探るなど、試行錯誤を重ねました。
また、ちょうどいい温かさのお湯がすぐに出るようコントロールするICも、そのまま水に濡れると感電事故の原因となります。そのため、雨が降っても問題なく作動する信号機をふまえて、樹脂コーティングした特殊なICを信号機メーカーと一緒に作り上げたそうです。
さらに、販売にも地道な努力が。CMなども流してはいましたが、ここまで普及したきっかけは、販売を担う水道工事店を営む人の自宅に取り付けてもらい、口コミを広げたことでした。
ちなみに、温水洗浄便座の代名詞ともなっている「ウォシュレット」の名前の由来は、「Let’s Wash(レッツ ウォッシュ/さぁ、洗おう)」を逆さにくっつけたもの。TOTOの登録商標となっています。
お馴染みのトイレマークは日本発
日本のトイレと言えば、出入り口にある「青は男子トイレ」「赤は女子トイレ」のマークをよく見ますね。しかし、JIS規格を通じて一般的になっているこの青と赤のトイレマークは、日本独自のピクトグラムです。
始まりは1964年の東京オリンピックの際、日本を訪れる海外の人にもトイレだということが言葉以外で分かりやすく伝わるようにと作られました。
海外では、男子用も女子用も1色で表示されていることも多いそうです。試しに、とある研究で男子トイレのマークを赤、女子トイレのマークを青にしたところ、海外の人は間違えることがほとんどなかったのに、日本人の多くは男女逆のトイレに入ってしまったとか。
清潔なトイレは多くの人の命を救う
世界各地でトイレを使ってみると、日本のトイレの優れた衛生面や快適さに驚くことも少なくありません。トイレは人間の暮らしと切っては切り離せないものですが、地球に暮らすおよそ半分の人は、きちんと整備されたトイレを使えていないのが現状です。
そのため、排泄物によって周囲の生活スペースや水が汚染され、下痢を引き起こす病気が発生することで、毎日1400人以上のお母さんたちが子どもを亡くしています。
トイレ環境や汚染水の改善ができれば、世界の病気の10%を減らすことができるそう。日本でも、ODA(政府開発援助)や各企業を通じて発展途上国のトイレ支援が行われているので、ぜひ注目していきたいですね!
トイレがあるのは当たり前じゃない!
トイレの雑学を4つご紹介しましたが、いかがでしたか?現在の日本のトイレが素晴らしいのは、各企業の努力があってこそです。
しかし、設置されたトイレや周辺の環境を衛生的に保つには、個人の努力も必要。今のトイレ環境が当たり前だと思わずに、大切に扱っていきましょう。