なぜ『くしゃみをすると噂されている』と言うの?大昔、くしゃみで寿命が縮むといわれていた!?

雑学

「誰かが噂をするとくしゃみが出る」の始まり

目の前でくしゃみをした人がいると、「誰かに噂をされているんじゃない?」と思わず話しかけたりしたことがある人は多いのではないでしょうか。もしくは、自分がくしゃみをして、そう言われたという人もいるかもしれません。

けれども、くしゃみと噂の関係性に科学的な根拠はなく、あくまで迷信や言い伝えの1つとされています。いったいなぜくしゃみと噂はつながってしまったのでしょうか?

かつてくしゃみは不吉の象徴だった

医療が発達していなかった昔の日本では、くしゃみは不吉なものとして捉えられていました。くしゃみをすると鼻から魂が抜け出てしまうため、寿命が縮んで早死にするという考え方があったのです。

実際に、ちょっとした体調不良が命取りだった時代は風邪を引くだけでも亡くなってしまう人が多く、その前兆として出ることがあるくしゃみは「悪いもの」だと思われていました。

現代なら、くしゃみは病原体やほこりなどのゴミを体内に入れないための反応で、不意に出るのが当然だと分かっていますが、かつては自分の意思でコントロールできないくしゃみが「他者の思いや力によって出るもの」だとする認識が広まっていったようです。

そして、そのうちこれがだんだんと「誰かが自分の噂をしているからくしゃみが出るんだ」という考えに転じたとされています。

悪いことが起きないようにおまじないを唱えていた

くしゃみが良くないものとして扱われていたことは、日本三大随筆として名高い「徒然草」にも記述があります。目の前でくしゃみをする子どもがいようものなら、「くさめ、くさめ」というおまじないを唱えてあげないと死んでしまうというのです。

この「くさめ」の由来は、陰陽道のおまじないの言葉である「休息万命(くそくまんみょう)」からきたという説や、クソ食らえという悪態の元になった「糞食め(くそはめ)」が変化したものだという説までさまざまあります。

やがて、「くさめ」というおまじないの言葉は「くしゃみ」へと変わり、何者かの仕業によって出る不思議な行為そのものを指すようになりました。

くしゃみは良いものという考えも存在

ところが、くしゃみは悪いものではなく、良いものだと考える場合もあったようです。最古の和歌集である「万葉集」には、「くしゃみが何度も出る」「どうやら妻が私のことを思ってくれているらしい」と詠んだ歌が収録されています。

実は、くしゃみには愛する人と会える前兆であるという考えなどもあったようで、不吉どころか誰かからの愛情の証として捉えることがありました。

くしゃみの回数によって異なる噂の内容

このように、くしゃみは良いものとも悪いものとも扱われ、一度に連続して出ることもあったりしたためか、噂の内容はくしゃみの回数によって変化するという説が一般的となっています。

中でも有名なのは、「一誹り(そしり)、二笑い、三惚れ、四風邪」ということわざ。くしゃみ1回は誰かが悪口を言っている、くしゃみ2回は誰かに笑われている、くしゃみ3回は誰かに惚れられている(恋の噂)、くしゃみ4回は風邪を引いているというものです。

くしゃみ3回以外はなかなかに困ったものですが、ちょっとした話のネタにはちょうど良いかもしれませんね。

ちなみに、このことわざには「一に褒められ、二に憎まれ、三に惚れられ、四に風邪引く」という少し変形させたものも存在します。また、くしゃみの回数に合わせた噂の内容は、地域によっても少しずつ違うようです。

くしゃみと噂の関係は昔からのもの

くしゃみが出ると誰かが噂しているという考えは、かなり昔からあるものでした。

出た回数によって噂の内容が違うというのも、かつてのくしゃみに対する良いもの・悪いものという考えが関わっている可能性があります。

くしゃみは体を守るための生理的な反応ですが、ふと出てしまった時には何回だったか数えておいて、噂の内容を想像してみるのも面白いかもしれません。

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