コンビニで見かける「肉まん」と「豚まん」の気になる違い
寒い季節、コンビニのレジ横に並ぶアツアツの中華まん。ふわふわの白い生地から立ち上る湯気に誘われて、思わず手に取ってしまった経験はありませんか?
そんなとき、「肉まん」と「豚まん」が同じ棚に並んでいるのを見て、「えっ、どっちも豚肉じゃないの?」と首をかしげた方も多いのではないでしょうか。
実は、この呼び名の違いには深い理由があります。豚肉を使った中華まんであることは同じなのに、なぜ2つの呼び名が存在するのでしょうか。その答えは、関東と関西という地域の食文化の違いにありました。
なるほど!そうだったのか「肉まん」と「豚まん」の呼び名の謎
「肉まん」と「豚まん」の違いを一言で言うと、これは関東と関西における「肉」という言葉に対する認識の違いから生まれたものなのです。
関西では、「肉」と言えば「牛肉」を指します。例えば、関西で「肉うどん」を注文すると、断りなく牛肉が入ったうどんが出てきます。「肉じゃが」も同様で、関西の家庭では一般的に牛肉を使います。
一方、関東では「肉」という言葉に特定の種類の肉のイメージはありません。豚肉でも牛肉でも鶏肉でも、すべてを「肉」と呼びます。そのため、豚肉を使った中華まんでも「肉まん」という呼び方で違和感がないのです。
この認識の違いから、関西では豚肉を使った中華まんを「豚まん」と呼び、関東では「肉まん」と呼ぶようになりました。全国的に見ると「肉まん」派が約8割を占めていますが、近畿地方では「豚まん」派が6割以上という、興味深い地域性が見られます。
中には「え?じゃあ関西の『肉まん』には牛肉が入っているの?」と思う方もいるかもしれません。でも、そんな心配は無用です。関西でも中華まんに牛肉を使うことはほとんどありません。ただ、豚肉を使用していることを明確にするために、あえて「豚まん」という呼び方を選んでいるのです。
どちらもおいしい中華まんであることに変わりはありませんが、この呼び名の違いの裏には、実は深い歴史的な背景が隠されているのです。
意外と古かった!関西の牛肉文化のルーツを探る
関西の「肉=牛肉」という認識は、実は飛鳥時代にまで遡る古い歴史を持っています。
675年、天武天皇は「肉食禁止の詔(みことのり)」を発布しました。この詔で禁止されたのは、牛、馬、犬、猿、鶏の食用でした。注目すべきは、豚肉が禁止対象に含まれていなかったことです。それにもかかわらず、この詔は「肉食禁止」と呼ばれ、ここでの「肉」は主に牛肉を指していました。
また、意外なことに、江戸時代の近江国(現在の滋賀県)では、「養生肉」という名目で牛肉の味噌漬けが作られ、将軍家や御三家に献上されていたそうです。「養生肉」という言葉からも、当時から「肉」と言えば牛肉を指していたことがわかります。
知ってびっくり!関東と関西で異なる家畜文化の成り立ち
関東と関西で「肉」の認識が分かれた背景には、それぞれの地域の気候や地形といった自然環境も大きく影響していました。
西日本には水田が多く、農耕用の牛が重宝されていました。その結果、和牛の肥育も盛んになり、後の牛肉文化の基盤となったのです。近江牛や神戸ビーフといった世界的に有名なブランド牛が関西から生まれたのも、決して偶然ではありません。
一方、東日本では放牧に適した土地が多く、牛よりも馬の飼育が一般的でした。明治時代に肉食文化が広まると、飼育がしやすく、繁殖力も高い豚が好まれるようになります。神奈川県に大規模な養豚場が作られるなど、関東の豚肉文化はこうして形作られていきました。
あなたの街の中華まん事情を話のタネに
「肉まん」と「豚まん」の呼び名の違い。単なる言葉の違いだと思っていたものの裏に、実は日本の食文化や歴史、そして地域の特色が詰まっていたのです。
最近では全国的に「肉まん」という呼び方が増えてきているものの、関西では今でも「豚まん」と呼ぶ人が多くいます。これは、長年培われてきた食文化の証とも言えるでしょう。
友人や家族と中華まんを食べるとき、「うちの地域では○○まんって呼ぶんだよ」「実は△△という理由があるんだって」と、この話をしてみてはいかがでしょうか。きっと、普段何気なく口にしている食べ物の中に、こんな興味深い物語が隠れていることに、みんな驚くはずです。
そうそう、ちょっとした豆知識を一つ。関西の「551蓮華(ろんほぁ)」の豚まんが有名ですが、この店でも東京では「肉まん」という名称で販売しているそうです。地域の文化を大切にしながら、その土地の人々に親しみやすい呼び方を選んでいるというわけです。
日本の食文化って、本当に奥が深いですね。さて、今度コンビニで中華まんを買うとき、あなたは「肉まん」と「豚まん」、どちらと呼びますか?