消しゴムを急激に冷やすと爆発するって本当?
消しゴムを急激に冷やすと爆発する──そんな話を聞いて、本当なの?と驚く人もいるかもしれません。
まず結論を言うと、家庭の冷凍庫くらいの冷たさ(–20℃前後)では消しゴムは爆発しません。ただし、液体窒素のような非常に低い温度(–196℃)に触れると、消しゴムが瞬間的に割れる現象が起こります。
正確に言えば「爆発」というよりも、「瞬間的な破裂」に近い現象です。何も知らずにいると、身近な文房具の意外な一面に驚いてしまいますよね。
ではなぜ、そんな現象が起きるのでしょうか。
消しゴムが割れる原因は中の小さなガスだった
消しゴムの主な材料はPVC(ポリ塩化ビニル)という樹脂と、「可塑剤(かそざい)」と呼ばれる柔らかさを出す成分です。普段は気づきませんが、この可塑剤は温度の変化に敏感に反応します。
消しゴムが極端に冷やされると、この可塑剤が内部でぎゅっと縮みます。凝縮して小さくまとまった状態ですね。ところが消しゴムを再び室温に戻すと、今度は凝縮した可塑剤が急に気体になって膨らみ始めます。
このような変化は肉眼では見えませんが、消しゴムの中では確実に起きています。
急激な冷却で表面だけが硬化し、内部圧力で消しゴムが割れる
急激な冷却が起きると、消しゴムの外側の部分だけが一気に硬くなります。表面だけが凍った水のようにカチカチになり、内部からの圧力を外に逃がせなくなります。
一方で、内側では先ほど述べたように気体になった可塑剤が膨張して、内側から外側へ強く押し広げようとします。
結果的に、内側の圧力が外側の硬い表面に耐えきれなくなり、消しゴムがパチンと割れることになるのです。
破裂を生む正体は『内と外の温度差のズレ』
消しゴムが破裂する瞬間を詳しく見ると、そこには目に見えない「時間差」が隠されています。
外側が急激に冷やされると、ほんの一瞬、ミリ秒単位で表面だけがカチカチになります。内側はまだ温度が十分下がっておらず、ゆっくりとしたペースで冷えていきます。
やがて室温に戻されると、外側は再び柔らかくなろうとしますが、そのスピードよりも速く、内側の凝縮した可塑剤が膨らみ始めます。このスピード差が、内部に大きな圧力を生み出すのです。
破裂の原因は、極端な低温そのものではありません。温度が急激に変わることで生じる、この内側と外側のズレこそが消しゴムの破裂を引き起こす「本当の正体」です。
なお、液体窒素のような極低温の物質は高圧ガス保安法という法律の管理下にあり、専門的な取り扱いが必要になります。
まとめ
消しゴムがなぜ破裂するのかを整理すると、ポイントは3つです。
まず内側で可塑剤が凝縮した後、再び膨張して内圧が高まること。次に外側が急冷され瞬間的に硬化し、内側の圧力を外に逃がせなくなること。そして最後に、内側と外側の温度変化の時間差が、この圧力をより一層強めることです。
破裂の直接的なきっかけは–196℃という極低温ですが、それは単なる引き金に過ぎません。本質的な原因は、内部と外部のスピードのズレが生む小さなドラマなのです。