ロブスターが不老不死だと噂される理由とは?
ロブスターが「不老不死」だと聞いたことがある人も多いでしょう。SNSやネットで一度話題になれば、たちまち広がるのはよくあること。実際、このロブスターに関する噂もそうして広まりました。ですが、そもそもロブスターが不老不死だと信じられたのには、ちゃんと理由があります。それが、「ロブスターは成長し続ける」という性質です。
ロブスターは脱皮を繰り返し、その度に体が大きくなります。さらに、内臓の一部までもが新しくなるため、「いつまでも若返る」「寿命がない」と勘違いされたのです。実際、ロブスターの平均寿命は20~50年ですが、140年以上生きた記録もあり、その長寿から不老不死説が広まったと考えられます。
ただ、実際に不老不死なのかというと、答えは「NO」。外敵や病気に襲われたり、脱皮に失敗したりと、他の生物と同じように死を迎えます。こうして、デマの一部が事実として誤解されてしまったのです。
長寿の秘密はテロメア?ロブスターの老化抑制メカニズム
ロブスターの寿命の長さには、細胞レベルでの秘密が隠されています。その一つが「テロメア」と呼ばれるもの。テロメアは、染色体の末端に存在する構造で、細胞分裂のたびに少しずつ短くなっていきます。このテロメアが限界まで短くなると、細胞は老化し、死滅します。
しかし、ロブスターはテロメアを保護する「テロメラーゼ」という酵素を作り出す能力を持っています。この酵素が、テロメアの短縮を防ぐため、ロブスターは通常の生物に比べて老化が遅いとされています。これが、ロブスターが非常に長寿である理由の一つです。
でも、これだけで「不老不死」とはいえないですよね?実際に長寿ではあるものの、環境ストレスや捕食者、病気の影響を受けるとロブスターも死に至るのです。
外的要因も関係?ロブスターの寿命を決める4つの要因
ロブスターが長寿であることは確かですが、その寿命を左右するのは内部の要因だけではなく、外的要因も大きな影響を与えます。ここでは、ロブスターの寿命を短くする4つの要因について詳しく見ていきましょう。
1つ目は、環境ストレスです。ロブスターは水温や水質の変化に非常に敏感です。急激な水温の変化や汚染された海水は、ロブスターにとって大きなストレスを引き起こし、免疫力を低下させる原因となります。結果として、病気にかかりやすくなり、寿命が短くなることがあります。
2つ目は、捕食者の存在です。ロブスターはサメやタラ、タコなどの捕食者に狙われることが多く、特に脱皮直後の柔らかい状態では外敵からの攻撃を受けやすくなります。この時期は非常に無防備なため、脱皮後に命を落とすロブスターも少なくありません。
3つ目は、病気です。ロブスターもまた、バクテリアやウイルスに感染することがあります。特に水質が悪化した環境では感染症のリスクが高まり、致命的な病気にかかる可能性が増えます。病気による寿命の短縮は、ロブスターにとって避けられないリスクの一つです。
4つ目は、脱皮の失敗です。ロブスターは定期的に脱皮を行い、これによって成長します。しかし、この脱皮には大きなリスクが伴い、失敗すると命を落とすことがあります。脱皮には多くのエネルギーが必要で、特に体が大きくなるほど成功させるのが難しくなるため、成熟したロブスターほど脱皮不全で死ぬリスクが高まります。
これらの要因からもわかるように、どれだけ長生きできるロブスターでも、不老不死というわけにはいきません。
ロブスターの寿命をめぐる最大の誤解「内臓まで脱皮するから死なない」?
不老不死説のもう一つの根拠となったのが、「内臓も脱皮で新しくなる」という話。これ、実は一部は正しいけれど、すべての内臓が新しくなるわけではありません。
脱皮で新しくなるのは主に消化器官の一部、例えば胃や腸です。心臓や脳などの主要な臓器はそのままで、完全に内臓が若返るわけではありません。ですが、この脱皮の特徴から、「ロブスターは全身が新しくなる」という誤解が生まれ、不老不死説が拡散されたのです。
つまり、ある人がSNSで「ロブスターの内臓も全部新しくなるってすごい!」と投稿したら、瞬く間にこの話が広がり、真実のように信じられるようになってしまいました。実際のところ、内臓全てが若返るわけではないので、不老不死には程遠いのです。
ロブスターの長寿研究が人類の未来を変えるかも?
ロブスターが「不老不死」と勘違いされるほど長寿であることは事実ですが、彼らが無限に生き続けるわけではありません。外的要因や老化の影響を受け、いつかは死を迎えます。それでも、ロブスターが持つ長寿の秘密には私たちも学べることがあります。
その一つが、細胞レベルでの老化抑制の仕組みです。テロメアの役割や、ロブスターの脱皮による細胞の若返りは、科学者たちにとっても興味深い研究対象です。これからもロブスターの研究が進むことで、将来的には人間の寿命や老化に関する新しい知見が得られるかもしれません。