アンパンマンの初期設定は『アンパンおじさん』だった!?やなせ氏が込めた深い思いとは

雑学

アンパンマンの原型はおじさん!?意外な初期設定

現在のアンパンマンは子供たちのヒーローとして、空腹の人に自分の顔を分け与える優しいキャラクターとして知られていますが、初期の設定はまったく違いました。1969年、漫画家やなせたかしが初めて描いたアンパンマンは、「アンパンおじさん」とも呼ばれる、丸顔で小太りの普通のおじさんだったのです。

この初代アンパンマンは、お腹を空かせた人々に焼き立てのあんパンを配る優しいおじさんとして描かれました。飛び回って助けることは同じでも、現代のアンパンマンと違い、自分の顔を食べさせるのではなく、手に持ったパンを取り出しては配って回っていたのです。やなせ氏が意図したのは、派手さを持たない、どこか地味で素朴なヒーロー。少年に「ダサい!」と罵倒されても屈せず、パンを配り続ける姿には、無償の優しさが感じられます。

やなせたかしは、当時のインタビューでこの「おじさんアンパンマン」を「格好悪い正義の味方」と表現しました。既存のスーパーヒーローが強大な敵と戦う華やかな存在であるのに対し、「アンパンおじさん」は地道に困っている人々に寄り添う姿を通して、やなせ氏が理想とするヒーロー像を描いていたのです。

子供に拒否される!?アンパンマンの切ない瞬間

現在のアンパンマンなら、「ありがとう!」と感謝されるシーンが思い浮かびますが、初期設定のアンパンマンはそうはいきませんでした。彼が焼き立てのあんパンを配っても、子供からは「ソフトクリームのほうがいい!」と冷たく拒否されることも。

一生懸命飛んで行き、お腹を空かせた子供にパンを差し出したのに、ひどい言われようです。しかし、アンパンマンはそんな言葉にも負けず、飢えた人々を助け続けます。このシーンには「本当のヒーローとは、どんな扱いをされても人を助ける存在」「本当のヒーローとは、誰かに感謝されるためにいるわけではない」という、やなせ氏のヒーロー観が込められているのです。

なぜ「格好悪い」ヒーローが誕生したのか?やなせたかしの信念

やなせ氏は、自らの著書でアンパンマンのヒーロー像についてこう語っています。「本当の正義の味方は、けっして格好いいものではなく、自分も傷つきながら助けるものだ」と。アンパンマンが傷ついたり、力を失う弱点を持つのは、この哲学が反映されているからです。

アンパンマンが単なる強いヒーローではなく、顔を分け与えたり、雨で弱ったりする「弱さ」を持っているのは、子供たちに「正義のヒーローも完全ではない」というメッセージを伝えたかったため。この設定により、アンパンマンはより人間らしい、親しみやすいキャラクターとなりました。

『風と共に去りぬ』がモデル?キャラクターたちの背景

アンパンマンには数多くのキャラクターが登場しますが、やなせ氏はアメリカ映画「風と共に去りぬ」に登場する人物たちを参考にしてキャラクターをデザインしていました。たとえば、スカーレット・オハラのようにわがままで情熱的なキャラクターがドキンちゃんとして登場し、メラニーのような控えめな性格をもつバタコさんもその影響を受けています。

この事実を知ると、アンパンマンのキャラクターたちに一層愛着がわいてくるのではないでしょうか。意外にも日本的な「アンパンマン」が、外国の映画から影響を受けていたとは驚きです。

ジャムおじさんとバタコさんの意外な正体

ジャムおじさんやバタコさんは、アンパンマンの顔が欠けたときに新しい顔を焼いてくれる心強い仲間ですが、実は人間ではありません。やなせ氏は、「アンパンマンの世界には人間は存在しない」と語り、彼らは「妖精」に近い存在として描かれています。現実離れしたキャラクターにすることで、ファンタジーの世界を壊さない工夫がありました。

また、彼らの手が指のない“げんこつ”デザインなのも、アニメ制作や人形化がしやすいように配慮された結果。こうした細部にまで配慮が行き届いているのは、アンパンマンの世界観を守り続けるための工夫です。

アンパンマンは食べないし泣かない!ヒーロー像のこだわり

アンパンマンが自ら食事を取らない理由は、頭の中の「あんこ」がエネルギー源だから。子供向けのヒーローだからといって、彼がただの「可愛さ」だけでなく、自己犠牲を表現する役割を担っているのです。

また、アンパンマンは決して「泣かない」キャラクターとして描かれています。困難な状況でも泣かず、怖がらずに弱い者を守る姿勢を通して、「ヒーローはどんなときでも前を向いている存在であるべき」というメッセージが込められています。こうした設定により、アンパンマンは単なる可愛らしさを超えた存在となっているのです。

アンパンマンの物語に隠された「真のヒーロー」の意味

アンパンマンの初期設定やエピソードには、やなせたかしのヒーロー観が色濃く反映されています。彼は「人知れず誰かを助けることこそが真の正義だ」と考え、それをアンパンマンに託しました。今では国民的キャラクターとなったアンパンマンですが、その背景には作者の思いが詰まっています。

この機会に、初期設定のおじさんアンパンマンについての雑学を、家族や友人にぜひ教えてあげてください。アンパンマンの知られざる一面を知れば、さらに親しみを感じられるかもしれません。

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