アブラカダブラの意味に隠された神秘!2000年の歴史が語る驚きの物語

雑学

イメージを覆す!「アブラカダブラ」の本当の意味とは

「アブラカダブラ!」という言葉を聞くと、多くの人は手品師が帽子からウサギを取り出すシーンを思い浮かべるのではないでしょうか。また、ディズニーランドのマジックショーや、お子さんが魔法使いごっこをする時にも使われる、おなじみの魔法の言葉です。

でも、実はこの「アブラカダブラ」という言葉、現代のエンターテインメントで使われる以前から、世界中で広く使われてきた歴史ある言葉なのです。その意味は「この言葉のように消え去れ」。聞いてビックリ!もともとは病気を追い払うための呪文だったんです。

手品の呪文として使われ始めたのは、なんと1800年代初頭から。それまでは、全く別の目的で使われていたというから驚きです。一体なぜ、このような変化が起きたのでしょうか?

古代ローマ人が信じた!「アブラカダブラ」の驚きの力

時は紀元2世紀。古代ローマの医師クィントゥス・セレヌス・サンモニクスが、当時猛威を振るっていたマラリアの治療法として、この言葉の力を記録に残しています。

面白いことに、単に唱えるだけではなく、特殊な方法で書き記す必要がありました。三角形の形になるように、1行ごとに1文字ずつ減らしていくのです。まるで、病気が少しずつ消えていくことを表現しているかのよう。こんな感じです。

ABRACADABRA、ABRACADABR、ABRACADAB、ABRACADA、ABRACAD、ABRACA、ABRAC、ABRA、ABR、AB、A

このお守りを羊皮紙に書いて首にかけると、マラリアの熱が文字とともに消えていくと信じられていたそうです。今でこそ笑ってしまいそうですが、当時の人々にとっては、切実な願いが込められた神聖な言葉だったのでしょう。

ちなみに、インターネット上では「アブラカダブラ」が花粉症の治療に使われていたという情報を見かけることがありますが、これは史実と異なります。歴史的な記録では、主にマラリアやペストといった、当時の人々を苦しめた深刻な疾病に対して用いられていたことが文献で確認されています。そもそも花粉症という概念自体、この言葉が使われていた古代・中世には存在しておらず、19世紀になってから医学的に認識され始めたものなのです。

おもしろいことに、この治療法は単なる迷信として片付けられることなく、その後も長きにわたって採用され続けました。17世紀のロンドンでは、恐ろしいペストが大流行した際にも、多くの人々が家の入り口に「アブラカダブラ」と書いて、病気の侵入を防ごうとしたそうです。

謎に包まれた「アブラカダブラ」の語源を探る

この不思議な言葉の起源については、現在でも研究者たちの間で議論が続いています。最も有力とされているのは、古代の言語であるアラム語やヘブライ語に由来するという説です。

アラム語説では「avra kedabra(私が言うとおりになる)」が語源とされています。まるでSFに出てくる音声コマンドのよう!ただ、別の解釈では「この言葉のようにいなくなれ」という意味もあるそうです。これなら病気退治の呪文として使われていた理由も納得できますよね。

一方、ヘブライ語説では「私が話すように物事が創造される」という意味の「ebrah k’dabri」が語源だとされています。古代の人々は、言葉には物事を動かす力が宿ると考えていたのかもしれません。

米プリンストン大学の写本専門家によると、「祝福された者の名」という意味のヘブライ語「ha brachah dabarah」が語源という説も。当時のヨーロッパでは、ヘブライ語は神が天地を創造した時に使った言語だと考えられていたため、特別な力を持つと信じられていたそうです。

時代とともに変わる「アブラカダブラ」の使われ方

面白いことに、この言葉は時代とともにその役割を大きく変えていきました。古代では病気を治す神聖な呪文、中世では災いを防ぐお守り。そして1800年代に入ると、なんと舞台演劇で手品師が使う掛け声として登場するようになったのです。

この変化には、当時の社会背景が大きく影響しています。近代医学が発展し始め、病気の原因が少しずつ解明されていく中で、「アブラカダブラ」は治療法としての地位を失っていきました。その代わりに、人々を楽しませるエンターテインメントの世界で新たな使命を見出したわけです。

米ストーニーブルック大学の言語史学者は「昔は病気の治療に魔法が必要でしたが、今は良い薬があります。その結果、魔法は気晴らしやショーの要素として生まれ変わったのです」と説明しています。

1900年代に入ると、「アブラカダブラ」はさらに興味深い展開を見せます。イギリスの神秘学者アレイスター・クロウリーは、この言葉に新たな解釈を加えました。彼は「アブラハダブラ」という少し異なる形を使い、これを「人類の新時代を象徴する言葉」として独自の宗教思想に取り入れたのです。

実は皆さんもよくご存知の「ハリー・ポッター」シリーズにも、この言葉の影響が見られます。作中に登場する恐ろしい「死の呪文」である「アバダ・ケダブラ」は、「アブラカダブラ」と同じアラム語の系統をルーツに持つと言われているのです。

「アブラカダブラ」が私たちに語りかける不思議な魅力

現代では「アブラカダブラ」の本来の意味を知る人は少なくなりましたが、それでもなお、この言葉は世界中で愛され続けています。魔法使いの呪文として子どもたちの想像力を刺激し、テーマパークのショーで観客を魅了し、時には小説や音楽作品にも登場します。

言語の専門家たちは、この言葉が長く愛され続けている理由の一つとして、その「謎めいた響き」を挙げています。誰にでも発音できるのに、どこか異国情緒があり、神秘的な雰囲気を漂わせているのです。

実は、この「謎めいた響き」こそが、「アブラカダブラ」の最大の魅力なのかもしれません。まるで暗号のような響きは、聞く人の想像力をかきたて、「何か不思議なことが起こるかもしれない」という期待感を生み出します。2000年以上の時を超えて、今なお多くの人々を魅了し続けているのは、そんな不思議な魅力があるからなのでしょう。

次に友達や家族に「アブラカダブラ!」という言葉を聞いたとき、ぜひこの話をしてみてください。きっと「えー!そんな歴史があったの!?」と驚かれるはずです。単なる手品の掛け声だと思っていた言葉に、こんなにも深い歴史と意味が隠されていたなんて…。そう思うと、何気なく使っている言葉の中にも、まだまだ知られざる物語が眠っているのかもしれませんね。

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