パトカーがなぜ『白黒』なのか知ってる?法律で決まっていない衝撃の事実

雑学

パトカーが白黒になった3つの理由

「白と黒のパトカーって、なんでこの色なんだろう?」子供だけでなく、大人でも一度は考えたことがあるのではないでしょうか。実は、パトカーが白黒になった理由は主に3つあります。

まず1つ目は、一般車との区別をつけるためです。パトカーが日本に登場した1948年頃、当時の一般車のほとんどが白一色でした。そのため、パトカーも白一色では一目で警察車両だと判別できませんでした。緊急車両として、遠くからでもすぐにパトカーだと分かる工夫が必要だったのです。

2つ目は、道路事情への配慮です。当時の日本では道路の多くが未舗装。雨が降れば道路は泥だらけになり、車体の下部が汚れてしまいます。そこで考えられたのが、汚れの目立ちにくい黒色を下半分に配置するアイデアでした。この実用的な発想が、現在も続くデザインの基礎となっています。

3つ目は、アメリカの影響です。戦後の日本は、さまざまな面でアメリカの制度を参考にしていました。パトカーのデザインもその1つで、アメリカで使用されていた白黒パトカーを参考に、日本でも採用することになったのです。

意外と新しい!パトカーの歴史と進化

当たり前のように街を走るパトカーですが、日本での登場は意外と最近のことなのです。戦前の警察は主に自転車や白バイ(※1)での警らが中心で、四輪車による巡回は行われていませんでした。

第二次世界大戦後、社会の混乱に伴って犯罪が多発。警察はより広範囲で効率的な警らの必要性に迫られました。そこで1949年、浅草警察署で初めて試験的にパトカーが導入されることになったのです。

最初のパトカーは、アメリカから譲り受けた白一色のフォード車でした。両側には「移動警察」という文字が墨で書かれていたといいます。このシンプルな姿からは、現在の迫力ある白黒パトカーの姿は想像もできないかもしれません。

試験運用の成果は予想以上に大きく、翌1950年には正式にパトカー3台による自動車警ら隊が発足。その後、一般車との区別を明確にするため、下半分を黒く塗装する現在のデザインが採用されました。そして1955年、この白黒の配色が全国で統一され、現在に至っています。

※1:白バイとは、警察が使用する白色のオートバイのこと。かつては赤色で「赤バイ」と呼ばれていましたが、ヨーロッパやアメリカの影響を受けて白色に変更されました。

パトカーの”白黒”に関する意外な事実

実は、パトカーの白黒カラーは法律で厳密に定められているわけではありません。道路交通法施行規則では「容易に識別できるように塗装すること」という規定と、「車体の全部もしくは上半分を白色に塗る」という基準だけが定められています。つまり、白と黒の組み合わせは「伝統的なデザイン」という位置づけなのです。

これに対して、同じ緊急車両でも消防車は法律で「朱色」と定められ、救急車は「白色」と明確に規定されています。パトカーにこのような厳密な色指定がないのは、時代や地域によって柔軟な対応ができるようにという配慮があったからかもしれません。

世界のパトカーはこんなにカラフル!日本の白黒は珍しい?

日本の白黒パトカーは、世界的に見るとかなりシンプルな部類に入ります。例えばアメリカでは、州や地域によって様々なデザインのパトカーが活躍しています。警光灯(※2)も赤と青の組み合わせが一般的で、色覚障がいの方への配慮も含まれているそうです。

ヨーロッパに目を向けると、さらにバラエティ豊かです。ドイツの銀と緑の組み合わせ、イギリスのオレンジと青のストライプ、イタリアの青と白のツートンなど、それぞれの国で特徴的なデザインが採用されています。

こうした世界各国のデザインを見ると、日本の白黒パトカーはとてもスタイリッシュで無駄のない印象を受けます。実用性と視認性を両立した日本のパトカーデザインは、ある意味で日本のものづくりの特徴を表しているのかもしれません。

※2:警光灯とは、パトカーの屋根に設置された赤色灯のこと。緊急車両であることを示すシンボルとして、遠方からでも確認できるよう工夫されています。

進化を続けるパトカーの”姿”

時代とともにパトカーの形も進化を続けています。かつては大型セダンが主流でしたが、現在では用途や地域に応じて様々な車種が採用されています。市街地では小回りの利く軽自動車の「ミニパト」、山間部ではSUV、高速道路ではスポーツカーなど、環境に合わせた車種が選ばれているのです。

特に注目を集めているのが、高速道路を巡回する覆面パトカー(※3)です。一般的なセダンタイプに加え、スポーツカーも導入され、速度違反の取り締まりに活躍しています。外見は一般車そのものですが、内部には最新の装備が詰め込まれているそうです。

※3:覆面パトカーとは、外見は一般の車両と変わらない警察車両のこと。主に交通取り締まりなどで使用されます。

意外と知らない!白黒パトカーにまつわる”面白雑学”

車体の塗り分けには、もう1つ面白い話が隠されています。最近のパトカーでは目立たなくなりましたが、かつては黒と白の境界線に細い赤いラインが入っているものがありました。これは事故防止のための工夫で、夜間でも車体の輪郭が分かりやすいように配慮されていたのです。

また、パトカーの「白」も実は一般車と少し違います。警察では視認性の高い特殊な白色を使用しており、夜間でもはっきりと確認できるよう工夫されているのです。このこだわりは、緊急車両としての役割を果たすための重要な要素となっています。

パトカーデザインの”うっかりNG集”

白黒のツートンカラーは、実は警察の専用色ではありません。一般の車両を白黒に塗装すること自体は違法ではないのです。しかし、以下の3点は厳密に禁止されています。

  • 赤色灯の設置や使用
  • 警察のマークや「POLICE」の表示
  • サイレンの装着

映画やドラマの撮影で使用される「劇用車」(※4)では、これらの規制に対応するため、撮影時以外は赤色灯にカバーをかけたり、警察マークを外したりして公道を走行しています。

※4:劇用車とは、映画やドラマの撮影用に特別に用意された車両のこと。本物のパトカーと同じ外観を持ちますが、法律に従って一般道では警察車両と誤認されない工夫が施されています。

パトカーの”白黒伝説”を次世代に伝えよう

このように、当たり前のように見ていた白黒パトカーには、様々な工夫と歴史が詰まっています。単なる色の組み合わせではなく、時代背景や実用性、国際的な影響など、多くの要素が重なって今の姿になったのです。

次に白黒パトカーを見かけたとき、「なんであの色なの?」と子供に聞かれたら、ぜひこんな話をしてみてはいかがでしょうか。道路が未舗装だった時代の知恵や、一般車との区別を付けるための工夫など、パトカーの歴史は日本の戦後復興期を語る上でも興味深い話題となるはずです。

白黒パトカーは、これからも時代とともに進化を続けていくことでしょう。しかし、その基本的なデザインコンセプトは、70年近く前に確立された実用的で賢明な選択として、私たちの街に欠かせない存在であり続けるのではないでしょうか。

パトカーの歴史と変遷
出来事
1949年 浅草警察署で初のパトカー導入(白一色のフォード車)
1950年 パトカー3台体制で自動車警ら隊が正式発足
1955年 現在の白黒ツートンカラーが全国で統一
白黒デザインが採用された3つの理由
理由 詳細
識別性 当時一般的だった白色車両との区別を明確化
実用性 未舗装路での汚れが目立ちにくい黒色を下部に採用
国際的影響 アメリカのパトカーデザインを参考に採用
パトカーの色に関する規定と規制
項目 内容
車体の色の規定 上半分が白色という規定のみ(白黒の組み合わせは法的義務なし)
一般車での模倣可否 白黒塗装自体は可能
禁止事項 赤色灯の設置・警察マークの使用・サイレンの装着
他の緊急車両との違い 消防車は朱色、救急車は白色と法定

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