『ふりかけ』の歴史が面白い!薬剤師が変えた白いご飯の楽しみ方

雑学

白いご飯が一変!『ふりかけ』が生まれた由

「ふりかけがないと、ご飯が進まない!」という経験をお持ちの方も多いのではないでしょうか。実はこの便利な食品、その始まりは今から約100年前。深刻な食糧難とカルシウム不足に直面していた大正時代に遡ります。

当時の人々の健康を願う真摯な思いから生まれた「ふりかけ」には、意外にも感動的な物語が隠されているのです。

薬剤師が考案!栄養補給から始まった100年の物語

大正時代初期、熊本県のある薬剤師が画期的な発明をします。それが現代のふりかけの原点となった「御飯の友」でした。

開発者の吉丸末吉氏は、当時深刻だった子供たちのカルシウム不足を何とかしようと、魚の骨を粉末にして美味しく食べられる方法を研究。カルシウムを効率的に摂取できる上、保存も効く画期的な食品を生み出したのです。

栄養価の高さと美味しさを両立させた秘密

吉丸氏が特にこだわったのは、栄養価だけでなく「美味しさ」でした。いくら栄養があっても、子供たちが食べてくれなければ意味がありません。

そこで、魚の苦手な子供でも美味しく食べられるよう、ごまや青のりを加えて風味を整えました。さらに、薬剤師ならではの発想で、薬瓶を模した八角形の瓶(※1)に入れて販売。この独特な容器は、乾燥を防ぐ実用的な役割も果たしていました。

栄養補給食として開発された「御飯の友」は、口コミで評判を呼び、地域の人々の間で愛用されるようになります。やがて、この画期的な発明は全国へと広がっていくことになるのです。

※1:八角形の瓶 – 薬剤師が使用するフラスコをイメージして作られた容器。見た目の特徴だけでなく、口が小さいことで内容物の乾燥を防ぐ機能も備えていました。

全国へ広がる人気!ふりかけ文化の発展物語

大正時代に誕生したふりかけは、その後、日本の食文化に大きな影響を与えていきます。特に戦時中は「露営の友」や「旅行の友」といった携帯食として重宝されました。軽量で栄養価が高く、長期保存が可能という特徴が、当時の人々の食生活を支えたのです。

実は、ふりかけという名称が正式に使われ始めたのは、意外にも昭和34年のこと。それまでは「○○の友」という名称が一般的でした。全国ふりかけ協会(※2)の設立とともに、この親しみやすい呼び名が定着していったのです。

※2:全国ふりかけ協会 – 1959年に設立された業界団体。ふりかけの規格や品質基準の策定、普及活動を行っています。

子供たちの心をつかんだ商品開発秘話

昭和30年代後半、ふりかけは大きな転換期を迎えます。それまで大人向けの高級食材として扱われていたふりかけが、子供たちの人気食品へと姿を変えていったのです。

その先駆けとなったのが、1959年に発売された「のりたま」でした。それまでのふりかけとは一線を画す甘みのある味付けで、子供たちの心をがっちりつかみました。さらに1963年、アニメ「エイトマン」のシールを封入するという画期的な販促策を実施。この戦略が大成功を収め、ふりかけは一気に子供たちの定番おかずへと躍り出たのです。

時代とともに進化する味と形

高度経済成長期に入ると、ふりかけの種類は爆発的に増えていきました。「すきやき」「かつお」といった定番の味に加え、「カレー」「ピザ」など、和洋折衷の新しい味も登場。さらに、フリーズドライ(※3)技術の導入により、より本格的な味わいを楽しめるようになりました。

また、「生ふりかけ」と呼ばれる新しいジャンルも誕生。ちりめんじゃこやワカメ、昆布などの海産物をそのまま使用した、より素材の味わいを活かした商品も人気を集めています。

※3:フリーズドライ – 食材を凍結させた状態で真空乾燥させる技術。素材の風味や栄養価を損なわずに保存できる特徴があります。

世界が注目!異文化との出会いが生んだ楽しみ方

日本の食卓に欠かせないふりかけは、近年、海外でも注目を集めています。特にアメリカでは、「furikake」という日本語がそのまま通じるほど。ハワイではすでに定番調味料として親しまれ、本土でもポケ丼ブームとともに人気が急上昇しています。

さらに驚くべきは、海外での独創的な使い方です。ハンバーガーの具材に振りかけたり、ポップコーンに和風の味付けとして使用したり。中には「furikake味のグラノーラ」といった意外なアレンジも生まれています。日本では考えもしなかった新しい楽しみ方が、むしろ海外から逆輸入されているのです。

グローバル化で広がる可能性

高級レストランのシェフたちも、ふりかけに注目しています。ニューヨークのある有名レストランでは、サーモン料理の仕上げにふりかけを使用したメニューが大人気に。グルメ雑誌で「2021年最も注目されたレシピ」にランクインするなど、世界の食のトレンドに影響を与え始めています。

『ふりかけ』にまつわる意外な物語

実は日本以外にも、ご飯に振りかけて食べる文化を持つ国があります。例えばインドには、豆類とスパイスで作る「チャツネ」(※4)と呼ばれる保存食があり、日本のふりかけと似た使い方をします。食文化の共通点を見つけると、なんだか親近感が湧きませんか?

今や世界中で愛されるふりかけですが、その始まりは一人の薬剤師による人々の健康を願う優しい発想でした。栄養補給からスタートし、時代とともに進化を続けてきたふりかけの歴史には、日本の食文化の知恵と創意工夫が詰まっています。

次に白いご飯を食べるとき、ふりかけの向こうに見える100年の物語に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。きっと、いつものふりかけがより一層美味しく感じられるはずです。

※4:チャツネ – インド料理の伝統的な調味料の一つ。スパイシーな味わいが特徴で、ご飯やカレーのお供として使用されます。日本のふりかけと同様、保存がきく実用的な食品として重宝されています。

ふりかけの歴史年表
時代 出来事 特徴・影響
鎌倉時代 「楚割」「花鰹」の登場 ご飯にかける食文化の始まり
大正時代初期 「御飯の友」誕生(フタバ) カルシウム補給目的、八角瓶での販売開始
1916年 「旅行の友」発売(田中食品) 軍部からの要請で開発された携帯食
1925年 「是はうまい」発売(丸美屋) イシモチと昆布を使用した全国展開商品
1959年 全国ふりかけ協会設立
「のりたま」発売
「ふりかけ」の正式名称確立
子供向け商品の先駆け
1963年 アニメキャラクターとのコラボ開始 子供向け商品として定着
主な商品分類と特徴
種類 代表的な商品 特徴
伝統型 御飯の友、旅行の友 栄養補給重視、シンプルな味わい
子供向け のりたま、キャラクター商品 甘みを加えた味付け、楽しい見た目
素材重視型 生ふりかけ、ちりめん系 素材の味わいを活かした製法
現代風 フリーズドライ使用商品 本格的な味わい、食感重視
海外での活用例
地域 使用方法 特徴的な活用
ハワイ ポケ丼、ご飯料理 日常的な調味料として定着
アメリカ本土 ポップコーン、グラノーラ スナック菓子のフレーバーとして活用
高級レストラン 魚料理の仕上げ等 新しい調味料としての活用

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