1円玉の製造コストは高い?
日本で流通している硬貨のうち、1円玉は製造にかかるコストが額面を上回っていると言われています。
実際のところ、硬貨や紙幣を作るのにかかる原価については、「貨幣に対する信任を維持するため」と「貨幣の偽造を助長するおそれがある」ことから、造幣局は公表していません。
しかし、原料となるアルミニウムの価格と製造経費・枚数などをふまえて計算すると、「1円玉1枚につき3.1円のコストがかかる」と推測されているのです。なんと、額面のおよそ3倍!
しかも、現在は円安や戦争などの影響で原料価格や輸送コストが上がっているため、実際はもっとかかっている可能性もあります。
1円玉以外の硬貨を作る時のコスト
それでは、1円玉以外の硬貨を作る時にかかるコストはどうでしょうか。こちらも原料と製造経費などを元に、1枚あたりのコストが推測されています。
- 5円=約10.1円
- 10円玉=約12.9円
- 50円玉=約12.1円
- 100円玉=約14.6円
- 500円玉=約19.9円
実は、1円玉以外にも、製造コストが額面を超えているのではと推測されている硬貨が存在しています。
ちなみに、500円玉については新貨幣が発行されており、新500円玉の製造コストは「34.92円」だとする見方もあるようです。旧500円玉よりも製造コストが高くなっているのは、偽造防止の強化がされており、より複雑な製造方法に切り替わったからと考えられています。
紙幣を作る時のコスト
紙幣については、2024年7月から新しいデザインのものが発行されるようになりました。千円札から一万円札まで、ほぼ変わらないとされている製造コストは、「1枚あたり約20.4円」。
以前の紙幣の製造コストが「1枚あたり約18.1円」と推測されていたことを思えば、こちらも新500円玉と同じく高くなっているようです。
コストが高くなっている背景としては、輸入に頼っている用紙の原料価格が上がっていることや、偽造防止のために新しく紙幣に追加された「3D(3次元)ホログラム」の特殊技術の影響があるのではと言われています。
「1円玉はなくすべき」の議論が勃発
1円玉のように、額面よりも作るコストが高い硬貨については、たびたび「廃止するべきでは?」という議論がなされてきました。
最近になって再びこの廃止論がSNSなどで話題になったのは、アメリカ合衆国のトランプ大統領が、「製造に2セント以上かかる1セントコインの製造を中止する」という指示を出したとするニュースが流れたからです。
要は、「無駄なコストがもったいない」「納税者に負担がかかる」ということですね。実際にヨーロッパやカナダなどでは、少額の硬貨が廃止された実例もあります。
しかし、それでは日本でも1円玉がすぐになくせるのかというと、そう簡単にはいきません。例えば、店舗で使われているレジなどの機器を一斉に修正する必要が出てくるなど、社会への影響が大きいためです。
1円玉の未来はどうなる?
今後、1円玉がどのようになっていくのかは、額面よりも3倍はかかっている製造コストのことを考えると気になるところです。
ところが、消費税が導入され、1円玉の製造枚数が27億枚を超えたという1990年に比べると、現在の製造枚数は格段に少なくなっていることも考えておく必要があります。財務省の報道発表では、2024年度に作られた1円玉は、50万枚をちょっと超える程度。
この傾向は数年前から続いていて、なおかつ流通量の問題も出ていないことから、今後も製造枚数が大幅に増えることはないかもしれません。1円玉の将来については、ぜひこれからも注目して見ていきましょう。