不在票の端っこに「ネコ耳」を発見
荷物の配達時に受け取れなかった場合に入っている不在票は、多くの人が見たことがあるはず。クロネコで有名なヤマト運輸の不在票(ご不在連絡票)は、黄色をメインカラーとしたお馴染みの用紙です。
そんなヤマト運輸の不在票が、一時期SNSなどで話題となりました。その理由は、不在票の端っこに、可愛い「ネコ耳」を思わせるギザギザの切り込みが入っていたから!
さすがクロネコヤマトならではのデザインです。ところが、不在票にこの三角のギザギザが入れられるようになったのは最近ではなく、実は1997年から採用されていたものなのだそう。
しかも、不在票の一部をネコ耳状にしたのは、「可愛くしたいから」というだけではありませんでした。そこには、配達業者からのちょっとした心配りが込められていたのです。
目の不自由な方への配慮でギザギザに!
ヤマト運輸が不在票の端の一部をギザギザにした最大の目的は、目の不自由な方でも宅配の不在通知がきていることを認識できるようにするため。
目が見える人であれば、用紙を見て不在票であることを確認できますが、目の見えない(見えにくい)人には不在票と他の郵便物の区別がつきづらいという難点があります。
また、用紙の色や記載されている文字が見えないと、他社の不在票もとても似た形式で作られているため、どこに連絡をすれば良いのかもわかりません。
そのため、ヤマト運輸では「クロネコ宅急便」のイメージが一般に広まっていることから、触っただけでわかるネコ耳状の三角の切り込みを不在票に入れることにしたそうです。
発案はクロネコヤマトの社員さん
元々、こういった困りごとがあるのを伝えてくれたのは、視覚障がいを持ちながらヤマト運輸に勤める1人の社員さんでした。
その社員さんの友人には同じく視覚障がいがある一人暮らしの方がいたのですが、その方は不在票が混じっていても用紙を認識できず、荷物を受け取れなかったという経験をしたことがあったのだそうです。
その上、不在票に気づけたとしてもどの配達業者からなのかわからず、自分で各業者の最寄りの営業所番号を調べ、電話で順番に確認するという作業に追われなければなりませんでした。
それを聞いてヤマト運輸は改善に乗り出したのですが、よくある点字付きのデザインにする案はボツになったのだとか。というのも、目の不自由な方でも点字が読めるのは一部の人のみだったからです。
そのため、点字ではなく、視覚障がい者のニーズにも配慮しつつ、誰でもわかるデザインを目指して、ネコ耳つきの不在票が誕生しました。
ユニバーサルデザインは日本のあちこちに
こういった「ユニバーサルデザイン」は、よく見れば日常生活のあちこちに取り入れられています。
例えば、出入口が取っ手付きのドアではなく自動ドアであるのも、ユニバーサルデザインを取り入れた構造の1つです。障がいの有無、性別、年齢、人種に関わらず、公平に出入りしやすく使えるようになっていますよね。
ヤマト運輸の不在票もまた、さまざまな条件の人が再配達などのサービスを利用しやすいようにと、あらかじめ思いやりを込めて作ったユニバーサルデザインの1つというわけです。
ヤマト運輸の不在票にご注目!
ヤマト運輸の不在票に取り入れられた不思議な切り込みは、クロネコの耳をイメージして作られた心遣いあふれるデザインであることをご紹介しました。
しかし、このことを知らなかったという人も多いのではないでしょうか。もしも周りに知らないという人がいたら、ぜひ話題にしてみてください。
不在票に込められたちょっとした一工夫を知るだけで、誰かの困りごとが解消されるかもしれません。