そもそも「人工イクラ」ってなに?
イクラと言えば「鮭(サケ)の卵」として有名ですが、市場には天然物ではない「人工イクラ」も流通しています。
人工イクラとはその名の通り、海藻から抽出されたアルギン酸ナトリウムやカラギーナン、食用油などを用いて人工的に作ったもので、日本の化学メーカーが医薬品用のカプセルを研究していた際に偶然生み出されました。
かつては天然のイクラが市場に出回る量が少なく、高級品だったため、赤く着色して見た目も味もそっくりにコピーされた人工イクラには大きな需要があったのです。
本物のイクラと人工イクラの見分け方
しかし、本物のイクラと人工のイクラがそっくりなのであれば、どうやって見分ければ良いのでしょうか?ここからは、天然物のイクラと人工イクラの見分け方をご紹介します。
1.見た目の違い
まずは「見た目」の違いです。人工イクラは、天然のイクラに比べると、全体的にやや薄いオレンジ色をしています。
また、人工イクラの中心にある目玉のように見える部分は、多くの場合、軽い油で作られた油滴です。そのため、イクラの粒を転がした際に、この油滴が中でコロコロと動きやすいのが特徴です(天然イクラの胚は動きません)。ただし、人工イクラの種類によっては、目玉のような中心部分がないものもあります。
見た目の違いについては、天然のイクラと比較してみると分かりやすいという程度であり、水産業に関わる人であってもパッと見て判断することは難しいとも言われています。
2.味の違い
続いて、天然のイクラと人工イクラの味の違いです。人工イクラを食べてみた人の多くが感じるのは、天然物に比べて磯の風味やイクラらしいコクがないという点でしょう。
どちらかと言えば、イクラとしてのおいしさよりも、味付けに使われている醤油の風味が際立っていると感じる人もいるようです。
また、プチッと弾ける食感は、天然のイクラの方が楽しめます。そのため、人工イクラを料理で使う場合は、イクラ丼などのメイン食材としてではなく、彩りのために使われるケースが多いかもしれません。
3.熱湯に入れた時の違い
本物のイクラと人工イクラを見分けるには、熱湯をかける方法が最も簡単です。
なぜなら、天然のイクラの中身はタンパク質でできているからです。本物のイクラであれば、熱湯に入れると内部のタンパク質が溶け出し、お湯が白濁します。
一方の人工イクラは、内部にタンパク質がほとんど含まれていないため、白濁することはありません。
ただし、本物のイクラでも漁期の違いで卵の膜の部分が固く、さっと熱湯にくぐらせる程度では変化が見られないものもあるので、確実に見分けたいのであればしっかりとお湯につけて見てみてください。
最近では人工イクラよりも鱒イクラが人気
かつては高級な天然イクラの代替品として活用されていた人工イクラも、現在では一般の人が気づかずに購入できるほどの量は出回っておらず、ほとんどが業務用となっています。
その背景にあるのは、人工イクラの代わりに食べられるようになった「鱒(マス)イクラ」の存在です。
鱒イクラはやや小ぶりなものの、同じサケ科の魚というだけあって、多くの人が想像する「秋鮭」からとれたイクラと見た目はよく似ています。味については濃厚さなどに違いがあり、好みは人それぞれですが、価格は秋鮭イクラよりも安いというメリットがあり、広く親しまれています。
回転寿司のイクラ軍艦や、スーパーで販売されているイクラの商品は人工イクラだという情報がまことしやかにささやかれていますが、これは誤情報です。しかし、「秋鮭イクラ」かというとそうではなく、お手頃で人気の鱒イクラが使われている可能性は十分にあります。
本物のイクラと人工イクラを比べてみよう
もしも人工イクラを入手する機会があれば、見た目や味、熱湯に入れた時の変化などから、本物のイクラとの違いをぜひ確かめてみてください。
また、最近さまざまな場所で販売されている「鱒のイクラ」と「秋鮭のイクラ」を食べ比べてみるのも面白いかもしれませんね。