『ナチュラルチーズ』と『プロセスチーズ』
ピザやパスタ、ワインのおともに欠かせない「チーズ」。チーズには「ナチュラルチーズ」と「プロセスチーズ」の2種類が存在します。ただ、なんとなく名前は知っていても、その違いを正確に説明できる人は少ないかもしれません。実はこの2つ、製造方法も風味も大きく異なり、それぞれに魅力があるんです。
今回は、ナチュラルチーズとプロセスチーズの違いをわかりやすく解説。読み終わるころには、チーズがもっと身近に感じられるかもしれませんよ。
『ナチュラルチーズ』とは
チーズは大きく分けて「ナチュラルチーズ」と「プロセスチーズ」の2種類があり、日本の法律「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令(乳等省令)」でもこの区分が明確に定められています。つまり、どんなチーズも、どちらかのカテゴリーに属しているというわけです。
まずナチュラルチーズは、生乳やクリームなどを酵素や乳酸菌の力で固め、乳清(ホエイ)を取り除いたあと、熟成させたり、そのまま食べたりして作られます。原料や発酵の方法、気候や熟成期間などの違いによって無数の種類が存在し、味や香り、食感も実に様々。
モッツァレラやクリームチーズのようなフレッシュタイプ、白カビが特徴のカマンベール、しっかり熟成させるゴーダやチェダーなど種類が豊富です。
『プロセスチーズ』とは
一方、プロセスチーズは使いやすさと保存のしやすさに優れた実用的なチーズ。原料にはチェダーやゴーダといったナチュラルチーズが使われ、それらを一度加熱して溶かしたうえで再び固めることで作られます。
加熱処理により熟成はストップし、味や香りが安定しやすくなるのが特徴。また、製造時の温度調整や混ぜ方、さらには添加物の工夫によって、溶けやすさや粘り具合といった性質もコントロールできます。
形状の自由度も高く、スライス状、スティック状、個包装のキャンディタイプなど、用途に応じた成形が可能です。さらに、加熱処理によって菌が死滅するため、ナチュラルチーズに比べて保存性が向上し、製品によっては常温で流通・保存が可能なものもあります。
こうした特性を活かし、プロセスチーズは家庭はもちろん、外食産業や学校給食、惣菜製造など多くの現場で重宝されています。
ナチュラルチーズからプロセスチーズが誕生した
ここで少しチーズの歴史を紐解いていきましょう。
チーズのルーツは、紀元前にまで遡ると言われています。人類は長い歴史のなかで、牛や山羊、羊の乳を様々な方法で加工し、各地の気候や風土に合わせて、ナチュラルチーズを生み出してきました。
やがてチーズの生産技術が発展。19世紀にはナチュラルチーズの工場生産が始まり、製造の安定性や品質管理の重要性が高まっていきました。さらに殺菌の研究も進み、20世紀初頭にはナチュラルチーズを加熱して溶かし、保存性を高める「プロセスチーズ」の製法が登場したそうです。
こうして誕生したプロセスチーズは、加工のしやすさと長期保存の利便性から注目され、改良が重ねられていきました。味や食感、形状のバリエーションも広がり、日本では家庭の食卓でも身近な存在となりました。
今回の雑学、チーズを食べるときにでも思い出してみてください。もしかすると、いつもよりチーズが美味しく感じられるかもしれませんよ。