世界最速の生き物は「スピロストマム」
世界最速の動きをする生き物について考えた時に、まず真っ先に思い浮かぶのは陸地を走ったり、空を飛んだりする生き物ではないでしょうか?
しかし実際には、微生物の1種であるスピロストマム属(日本名・ネジレグチミズケムシ属)の「スピロストマム・アンビグウム」が地球上で最も素早い動きをすると考えられています。
単細胞生物の速すぎる動き
スピロストマムはごく小さな単細胞生物で、池や湖でよく見られるほか、下水処理場で水質悪化の原因となる有機物を分解する役割も担っている意外と身近な生物です。細長い体で動く姿は、人によってはちょっと気持ち悪さを感じるかもしれません。
そんなスピロストマムが素速く動く瞬間とは、どこかへ移動する時ではなく、何らかの刺激を受けて体をぎゅっと縮める時!まばたきの約100倍のスピードで、自分の体を一気に40%程度にまで小さくする瞬間は、人間の目ではとても追いきれないほどです。
もしも人間がこれほどの速さで体を動かすとしたら、引力の影響で気を失ってしまうのはもちろん、体に大きなダメージを負ってしまいます。
素速い動きの解明が人間界に役立つかも?
この目にもとまらぬスピロストマムの動きの仕組みを解明しようとする研究者たちも増えているようです。
人間を含めた脊椎動物の動きは、筋肉に含まれるタンパク質の活性によって支えられていますが、それだけではスピロストマムのように速く動くことはできません。
少ないエネルギーで素速く体を縮めるスピロストマムの体の仕組みが解明できれば、これをロボットの開発やナノテクノロジーの発展に役立てられるかもしれないと期待されています。
「移動」にかけては世界最速!陸・海・空の生き物たち
ここからは、「移動」に関して世界最速を誇る地球上の生き物たちの姿も見ていきましょう。走る・泳ぐ・飛ぶという点においては、スピロストマムに勝る速さを備えています。
陸の世界最速は「チーター」
陸上を走る生き物として世界最速と言われているのは、「チーター」です。大型ネコ科の動物の中では小柄で細身の体つきですが、その分速く走ることに特化しています。
チーターが全速力で走ると、最高時速は110キロにもなると言われており、100メートル走をしたらおよそ3秒でゴールしてしまうのだそう。人間では、たとえ世界記録保持者であっても、チーターの走る速さにはとても追いつけません。
海の世界最速は「クロカジキ」
海の中で最も速く泳ぐことができる生き物として、時速129キロという記録を持っている生き物は「クロカジキ」です。25メートルのプールを泳ぐのに1秒もかからないというスピード力は、速く泳ぐことで有名なマグロも負けてしまいます。
ちなみに、仲間である「バショウカジキ」にも時速110キロという記録があり、カジキの仲間がどれほど速く泳げるのかが分かるというものです。
空の世界最速は「ハリオアマツバメ」と「ハヤブサ」
ところが、陸と海のチャンピオンたちも、空を飛ぶ「ハリオアマツバメ」や「ハヤブサ」といった鳥たちの飛ぶスピードにはかないません。
「水平」に飛ぶ速さではハリオアマツバメの時速170キロ、獲物めがけて「垂直」に急降下するように飛ぶ速さではハヤブサの時速389キロが世界最速です。
世界最速の意外な生き物のスピードにびっくり!
世界最速の生き物たちをご紹介しましたが、いかがでしたか?体を縮める時の動きではありますが、最も速い動きを見せたのはまさかの単細胞生物であるスピロストマムでした。
移動するということにかけては、チーターやカジキ、ツバメやハヤブサのスピードが勝ちますが、スピロストマムの速すぎる動きには研究者たちも大注目しているようです。
スピロストマムの速さを生み出す体の仕組みを解明することがこれからどんな風に人間社会に生かされていくのか、楽しみに待つことにしましょう。