女性と男性では衣服のボタンの位置が違う!
女性が男性用の服、男性が女性用の服を着る時、ボタンが付いているデザインだった場合は、着用しようとしてふと違和感を感じたことはありませんか?
シャツなどに代表されるボタン付きの服では、自分から見て女性用は左側に、男性用は右側にボタンが付いていることが多いのです。
そのため、男女が衣服を交換し、あえて異性の服を着ようとすると、いつもとは「ボタンの位置が逆」になっていることから、「何だか着づらい…」という感想を抱くことも少なくありません。
それでは、いったいなぜ性別によってボタンの位置が異なるのでしょうか。そこには服飾の歴史が関係していました。
女性と男性でボタンの位置が逆の理由
ボタンが付いた衣装の歴史は、13~14世紀頃から始まったと言われています。当初、ボタン付きで縫製や脱ぎ着に手間がかかる服は、貴族を始めとした上流階級のものでした。
男女でボタンやボタンホールの位置が逆になっているのは、この上流階級の人々ならではの文化や風習が大きく関わっているようです。
男性のボタンが右側なのは自分で着やすくするため
ボタンが付いた服、そして上流階級と言えども、男性は衣服を自分で着替えるのが当然のことでした。
すると、現在と同じく一般的な利き手として右利きが多かった当時、1つずつボタンを外したり留めたりするには、右側にボタン、左側にボタンホールがあった方が着替えやすかったようです。
また、懐に入れていた武器を右手でサッと取り出せるように作られていた軍服を元にして、右側にボタンを付けたとも言われています。
女性のボタンが左側なのは着せてもらう文化の名残り
一方で女性の場合は、衣服の着替えを自分では行わず、使用人に着せてもらうことが前提だったという違いがあります。男性用の衣装に比べて、複雑な仕様になっていることが多い女性用の衣装は、自分だけで着るには困難でした。
着せてくれる使用人が右利きだった場合、向かって右側(着用する本人にとっては自分の左側)にボタンが付いていた方が、外したり留めたりするのに便利だったというわけです。
ちなみに、女性用服のボタンの位置が左側となっている理由には、授乳や乗馬を行う時にちょうど良いからという説もあります。赤ちゃんを抱っこしたまま、利き手である右手を使って胸元をくつろげるには、左側にボタンがあった方がスムーズでした。
また、馬の左側に自分の両足をそろえて垂らす横座りの姿勢で乗馬を行う時には、ボタンを左側で留めていたことで前方から吹く風が服の中に入り込みにくく、寒さによる影響を減らせるというメリットがあったそうです。
最近はボタンの位置にこだわらない服も多い
ところが最近では、女性用や男性用にこだわりすぎない衣服の販売方法も多くなってきました。
いわゆる男女どちらでも着られる「ユニセックス」が普及し、ボタンの位置を右側に統一しつつも、前合わせが左右どちらかに傾きすぎないようなデザインにしているものもよく見かけます。
さまざまな体型の人が幅広く1つのデザインの服を共有しやすくなり、「もっと小さい(大きい)サイズがあればいいのに…」と悩まずに済むのはとても良いことです。また、同性同士だけでなく、異性同士で衣服をおそろいにできるのも素敵なポイントですね。
服を着る時にはボタンの位置を見てみよう
女性用と男性用の服でボタンの位置が逆になっているのは、服は「自分で着る」ものか、それとも「誰かに着せてもらう」ものかという、上流階級の人々のファッションの歴史に由来していることをご紹介しました。
理由を知ってみると、思わず「なるほど」と納得してしまいますね。ボタンが付いている服を自分で着たり、店頭で見たりする時には、ボタンの位置や前合わせの仕様にぜひ注目してみてください。