サラダ油の「サラダ」は原料ではなく使い方を示した名前

天ぷらに唐揚げ、野菜炒め。サラダ油という名前なのに、実際には火を使う料理で登場することも少なくありません。それなら、いったい何が「サラダ」なのでしょうか。
答えは原料ではなく、使い方です。1924年に発売された「日清サラダ油」は、サラダ料理などに加熱せず使えることから、その名が付けられました。
「サラダ」という植物が入っているわけでも、サラダ専用の油という意味でもありません。
いまでこそ、油と酢などを合わせてドレッシングを作ることは珍しくありません。しかし当時の日本では、食用油は主に揚げ物など加熱する料理に使われていました。
つまり「サラダ」は油の中身を表した名前ではなく、当時としては新しかった使い方を伝える言葉だったのです。
1924年には「生で使える油」が新商品の売りになった

現在の感覚なら、「食用油を生で使えることの何が珍しいの?」と思うかもしれません。
ところが1924年、日清製油(現在の日清オイリオグループ)が「日清サラダ油」を発売したころは、それ自体が商品の特徴になりました。
当時発売されたのは、精製度を高めた大豆油です。大豆特有の青臭さを抑え、生の料理にも使いやすい油に仕上げられていました。
いまでは当たり前に見える「加熱せずに使える」という性質が、約100年前には商品名で伝えるほどのセールスポイントだったわけです。
なお、1924年は「サラダ油」という言葉そのものが生まれた年ではありません。日本語では1903年にすでに使用例があり、英語にも「salad oil」という表現があります。1924年は、日本で初めて「日清サラダ油」という商品が発売された年です。
サラダ油に由来する名前は、後のお菓子にも見つかります。亀田製菓の「ソフトサラダ」などでは、サラダ油をからめて塩をまぶした味を「サラダ味」と呼びました。
同社は、当時「塩味」とするよりも洋風でおしゃれなイメージを打ち出せるとして、この名前を付けたと説明しています。
いまのサラダ油には「0℃で5時間30分」の基準がある

では、現在「サラダ油」と呼ばれているものは、どんな油なのでしょうか。
サラダ油は、特定の植物だけから作る油ではありません。大豆サラダ油、なたねサラダ油、こめサラダ油、ごまサラダ油など、原料の異なるものがあります。
共通するのは、サラダ油として求められる精製度や品質を満たしていることです。
なかでも面白いのが低温での基準です。サラダ油は、低温で固まりやすい成分を取り除くなどして、冷たい料理にも使いやすく作られています。
JASでは、0℃で5時間30分たっても清澄な状態を保つことが基準です。
「サラダ」という何気ない名前の裏側に、「0℃で5時間30分」という具体的な数字があるのです。
もちろん、サラダ油はサラダ専用ではありません。揚げ物や炒め物にも使えます。「サラダ」という名前は現在の用途を限定するものではなく、生でも使いやすい油として登場した歴史を伝える名前として残っています。
スーパーで「サラダ油」という文字を見かけたら、その向こうには「生で使える油」が新しかった約100年前の食卓があります。
何気ない商品名が、少し違って見えてくるのではないでしょうか。
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