「踊り場」はもともと踊る場所を指す言葉だった

階段の途中に設けられた、段差のない平らな部分を「踊り場」と呼びます。
名前の由来は一つに定まっていませんが、手がかりになるのが「踊り場」という言葉の古い使われ方です。
国語辞典では、もともと人が踊りをする場所を「踊り場」と呼んでいたことが確認できます。この意味での用例は江戸時代中ごろに見られ、階段の一部を表す建築用語としての用例よりも古いものです。
つまり、「踊り場」は最初から階段専用の言葉だったわけではありません。
先に存在した「踊りをする場所」という言葉が、後に階段途中の平らな場所にも使われるようになったとする説明があります。
ただし、誰がいつ最初に階段へこの言葉を当てはめたのかは、はっきりしていません。古い意味から階段用語へ移ったと考えると分かりやすいものの、命名の経緯まで確定しているわけではないのです。
階段の踊り場の由来にはいくつかの説がある

階段の平らな部分を「踊り場」と呼ぶようになった理由には、ほかにもいくつかの説があります。
よく知られているのは、階段の途中で人が向きを変える姿を、踊る動きに見立てたという説です。
折り返し階段では、平らな場所まで上がった人が体の向きを変え、再び次の段を上ります。その動きが、くるりと身を返す踊りのように見えたというわけです。
この説と結びついているのが、鹿鳴館(ろくめいかん)とドレスの話です。
裾の大きなドレスを着た女性が階段で向きを変え、スカートがひるがえる様子から「踊り場」と呼ばれたと説明されています。
ただし、鹿鳴館でこの言葉が生まれたことや、鹿鳴館に日本初の踊り場が造られたことを示す確かな資料は確認されていません。
印象的でよく知られる話ではあっても、名前の発祥として断定するのは難しい説です。
このほか、階段の段の上では踊れなくても、広く平らな部分なら手振りを中心とした踊りはできるからという説や、「オドリ」を「重ねて踏む」という言葉に結びつける説もあります。
どの説が唯一の正解なのかは分かっていません。ただ、資料から確実にたどれるのは、「踊り場」がもともと踊りをする場所を指し、階段用語より古くから使われていたことです。
方向転換やドレスの話は、その名前を説明する説の一つとして見るのが自然でしょう。
踊り場は足を休めて向きを変える場所

踊り場は、名前の面白さだけでなく、階段を安全で使いやすくするための役割も持っています。
長い階段の途中に平らな場所があれば、いったん足を止めて休めます。折り返し階段では、そこで進む向きを変えることもできます。階段を直線のまま長く延ばさず、建物の限られた空間へ収めるためにも役立ちます。
また、長い階段を途中で区切ることで、万が一足を滑らせたときに下まで転落する危険を抑える働きもあります。そのため、建物や階段の条件によっては、法令でも踊り場の設置が求められています。
普段は何気なく通り過ぎる場所ですが、踊り場は単なる階段の余白ではありません。足を休め、向きを変え、上り下りの動きをいったん切り替える場所です。
次に階段を使うとき、名前にまつわる説を思い出せば、いつもの空間が少し違って見えるかもしれません。
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