節分にイワシを飾るのはなぜ?鬼も逃げる「臭い」と「トゲ」の最強タッグ!

雑学

「え、イワシを飾るの?」意外と知られていない節分の風習

「節分といえば豆まきでしょ?」そう思っている方も多いはずです。でも実は、節分には地域によって全く異なる風習が残されているんです。その中でも特に興味深いのが、イワシの頭を飾るという不思議な習慣。一見すると「なんでイワシ?」と首をかしげたくなりますよね。

実はこの風習、平安時代からの由緒正しい伝統文化なんです。「柊鰯(ひいらぎいわし)」(※1)と呼ばれるこの飾りは、特に西日本を中心に今でも大切に受け継がれています。奈良県では今でも多くの家庭で見られる光景だとか。

※1 柊鰯(ひいらぎいわし):柊の小枝に焼いたイワシの頭を刺した飾り。地域によって「焼嗅(やいかがし)」「やっかがし」「柊刺し(ひいらぎさし)」などとも呼ばれる。

思わず目を引く!独特な見た目の正体

玄関先に飾られた「柊鰯」を初めて見た人は、思わず足を止めてしまうかもしれません。焼いたイワシの頭に、トゲトゲした柊の小枝が刺さっている姿は、確かにちょっと驚きますよね。でも、この一風変わった組み合わせには、先人たちの知恵が詰まっているんです。

江戸時代の浮世絵にも描かれているこの風習。当時の人々は、なぜイワシと柊を選んだのでしょうか?その理由を知ると、思わず誰かに話したくなるような面白い発見がたくさんあります。

イワシと柊、意外な出会いのはじまり

平安時代の『土佐日記』には、正月の門口に飾った注連縄(しめなわ)に、柊の枝と「なよし」の頭を刺していた記録が残っています。「なよし」って何だと思います?実はボラという魚のこと。つまり、最初からイワシだったわけではないんですね。

では、いつからイワシになったの?なぜイワシが選ばれたの?その理由を知れば知るほど「へぇ~!」と唸ってしまうような、おもしろい歴史が見えてきます。

イワシと柊で鬼退治?面白すぎる節分

「イワシと柊で鬼退治」と聞くと、まるでおとぎ話のように思えますよね。でも、これには先人たちの緻密な観察と知恵が隠されているんです。

イワシが持つ意外な力の正体

イワシってどんなイメージをお持ちですか?多くの方は「小さい」「安い」「臭い」といった印象を持っているかもしれません。実は、まさにその特徴が鬼退治に一役買っているんです。

昔の人々は、イワシの特徴的な臭いに注目しました。焼くと強い臭いを放つイワシ。この臭いが邪気を払うと考えられたんです。確かに、強い生臭さは鬼も近寄りたくなさそうですよね。

さらに面白いのは、イワシの語源にまつわる説。「弱し(よわし)」や「卑し(いやし)」から来ているという説があるんです。なぜなら、イワシは陸に上げるとすぐに弱ってしまう上、当時は身分の高い人があまり口にしない魚だったからだとか。

柊の意外な活躍ぶり

一方の柊。葉の縁にトゲのある、見た目も力強い常緑樹です。このトゲが「鬼の目を刺す」という物理的な役割を担っているんです。

面白いのは、イワシと柊の組み合わせについて、2つの説が伝わっていること。

  • 1. イワシの臭いで鬼を追い払い、柊のトゲで撃退する
  • 2. イワシの臭いで鬼を誘い出し、柊のトゲで目を刺す

どちらの説も、イワシと柊のそれぞれの特徴を見事に活かしていますよね。

知られざる「香り」の力

実は地域によって、イワシと柊に加えて、ニンニクやラッキョウ(※2)を一緒に飾るところもあるんです。これらも強い香りを持つ食材。香りで邪気を払うという考えが、いかに重要視されていたかがわかりますね。

この「香り」による邪気払い。実は平安時代の宮中でも、似たような習わしがありました。陰陽師(※2)が行う「追儺(ついな ※3)」という儀式では、特別な香りを使って邪気を祓っていたんです。

では、次は「ヒイラギイワシ」という呼び名の由来について、さらに面白い発見をご紹介していきましょう。

※2 ニンニクやラッキョウ:どちらもユリ科の植物で、強い香りと薬効で知られる。古くから邪気払いの効果があるとされてきた。
※3 陰陽師:平安時代、占いや天文観測、邪気払いなどを行った官職。安倍晴明が有名。
※4 追儺(ついな):宮中で行われた節分の儀式。現代の豆まきの起源とされる。

「ヒイラギイワシ」の呼び方にも深い意味がある

「柊鰯(ひいらぎいわし)」。漢字で書くとなんだか格式高く見えますが、実は地域によって実にさまざまな呼び方があるんです。それぞれの呼び名には、その土地の人々の暮らしや知恵が詰まっています。

地域が育んだ魅力的な呼び名たち

西日本では「焼嗅(やいかがし)」「やっかがし」「やいくさし」「やきさし」など、イワシを焼いた時の香りに注目した呼び方が定着しています。まるで匂いが聞こえてきそうな名前ですよね。

これらの呼び名の「かがし」という部分には、「臭い」という意味が込められています。でも、ただ臭いというだけではありません。その香ばしい匂いで邪気を払うという、しっかりとした目的があったんです。

意外な発見!地域ごとの個性

面白いことに、関東地方では柊とイワシの頭に「豆柄(まめがら ※5)」を加えるスタイルが生まれました。豆まきの文化が強い地域だからこその工夫かもしれませんね。

奈良県の吉野町には、ちょっと変わった言い伝えが残っています。「一本だたら ※6」を防ぐために節分にイワシを飾るのだとか。地域によって、イワシを飾る理由も実にさまざま。これぞまさに、日本の文化の奥深さですね。

現代の私たちからすると「なんでイワシ?」と思えるこの習慣。でも、当時の人々は身近にあるものを知恵深く組み合わせて、立派な魔除けに仕立て上げたんです。その工夫の精神は、今でも各地で少しずつ形を変えながら受け継がれています。

イワシを飾る文化は、地域によって実に多様な発展を遂げてきました。では次は、イワシを飾る地域と食べる地域の違いについて、さらに興味深い発見をご紹介しましょう。

※5 豆柄(まめがら):大豆の収穫後に残る茎の部分。節分の豆まきに使う大豆にちなんで飾られるようになった。
※6 一本だたら:一人で食事をすること。当時は縁起が悪いとされ、これを避けるための習慣が各地に残っている。

イワシを飾る文化圏、食べる文化圏、それぞれの理由

節分のイワシ、実は地域によって「飾るもの」と「食べるもの」に分かれているんです。その違いには、それぞれの土地ならではの面白い背景があります。

イワシを飾る地域の特色

西日本、特に関西地方では「柊鰯」を飾る文化が色濃く残っています。なかでも奈良県は、今でも多くの家庭で玄関先にイワシの頭を飾る習慣が生きています。

江戸時代の浮世絵や古い文献を見ると、関東でもイワシを飾る風習は広く見られたようです。特に面白いのが、東京近郊での独自の進化。柊とイワシの頭に加えて「豆まきの豆柄も一緒に飾る」という工夫が生まれたんです。

福島県から関東一帯でも、この風習の痕跡が見られます。ただし、飾る期間は地域によってかなり異なります。「節分の日だけ」という地域もあれば、「小正月から立春まで」「2月いっぱい」「来年の節分まで」と、実にバラエティ豊か。

イワシを食べる地域の知恵

一方、西日本の一部地域では、イワシを食べる習慣が根付いています。そこには、先人たちの健康への知恵が隠されているんです。

なぜイワシを食べるのか?それは、節分が旧暦の大晦日にあたり、厳しい寒さの中で春を迎える時期だったから。DHA(※7)やカルシウムが豊富なイワシは、冬を乗り切るための貴重な栄養源だったんです。

現代の栄養学でも注目される栄養価の高さ。でも昔の人は、そんな科学的な知識がなくても、経験的にイワシの価値を知っていたんですね。

文化圏の意外な共通点

面白いことに、飾る文化圏も食べる文化圏も、「イワシの力で邪気を払う」という考えは同じなんです。飾る地域では「外からの邪気を防ぐ」、食べる地域では「体の中から邪気を追い出す」という具合に、アプローチが違うだけ。

伊勢神宮では、今でも正月に売られる注連縄に柊の小枝が挿してあるそうです。神聖な場所でも受け継がれているこの習慣。改めて、その文化的な重要性が感じられますね。続いて、イワシと柊にまつわる意外な言い伝えについてご紹介します。

※7 DHA:ドコサヘキサエン酸の略。魚油に多く含まれる必須脂肪酸で、特に脳の発達や機能維持に重要とされる栄養素。

イワシと柊が生んだ意外な言い伝えの数々

節分のイワシには、思わず「へえ~」と声が出てしまうような言い伝えがたくさんあります。中でも特に興味深いのが「イワシの頭も信心から」(※8)ということわざ。一見、節分とは関係なさそうなこの言葉にも、実は深い意味が隠されているんです。

※8 イワシの頭も信心から:取るに足らないものでも、信じる気持ちがあれば価値があるという意味のことわざ。節分のイワシ飾りが由来とされている。

イワシにまつわる面白い言い伝え

「臭いものに蓋をする」という言葉、よく聞きますよね。でも節分では、むしろ「臭いもので邪気を払う」というおもしろい発想の転換が行われています。イワシの強烈な臭いを、逆に活かしてしまうという知恵です。

さらに面白いのが、イワシの語源説。「弱し(よわし)」からきているという説があります。陸に上げるとすぐに弱ってしまうイワシ。でも、そんな「弱い」存在が、実は強い邪気払いの力を持っているという逆転の発想。古人の遊び心が感じられますよね。

柊が織りなす不思議な物語

柊にまつわる言い伝えも実に興味深いものです。トゲのある葉を持つ柊は、古くから魔除けの力があるとされてきました。「火事除け」の意味もあったとか。常緑樹である柊は、冬でも緑を保つことから「永遠」や「不滅」の象徴としても扱われていたそうです。

実は伊勢神宮の注連縄に使われている柊には、もう一つ面白い特徴があります。普通の柊と違って、葉にトゲがないんです。神様の住まう場所では、攻撃的な要素を取り除くという考えがあったからだとか。こういった細かな配慮にも、日本人特有の繊細な感性が表れていますね。

いにしえの知恵を現代に伝えよう!イワシと柊の面白話

イワシと柊の組み合わせから生まれた節分の風習。「なぜイワシなの?」という素朴な疑問から始まって、そこには日本の文化や歴史、先人たちの知恵が詰まっていることがわかりましたね。

この風習の面白さを誰かに伝えるなら、こんな切り口はいかがでしょう?

  • イワシの臭いと柊のトゲで鬼退治!という意外な組み合わせ
  • 地域によって異なる呼び名や飾り方の違い
  • 飾るか食べるか、その土地ならではの知恵
  • 伊勢神宮のトゲなし柊という意外な事実

私たちの身近にある風習の中に、こんなにも奥深い物語が隠されているなんて、素敵だと思いませんか?あなたも、誰かにこの話をしてみませんか?きっと、「へえ~!」という驚きの声が返ってくるはずです。

【節分いわしの基本情報】
項目 内容
正式名称 柊鰯(ひいらぎいわし)
歴史 平安時代から続く伝統行事
地域別呼び名 ・西日本:焼嗅(やいかがし)、やっかがし、やいくさし
・その他:柊刺し(ひいらぎさし)など
基本的な材料 ・柊の枝
・焼いたイワシの頭
・地域により豆柄(まめがら)なども
飾る期間 ・節分の日だけ
・小正月から立春まで
・2月いっぱい
・翌年の節分まで
※地域により異なる
【地域による節分いわしの特徴】
地域 特徴 独自の習慣
西日本
(特に関西)
・柊鰯を飾る文化が色濃い
・イワシを食べる習慣も
・焼嗅(やいかがし)などの独自の呼び名
・奈良県では現在も多くの家庭で実施
関東地方 ・柊とイワシに加え、独自の進化 ・豆柄(まめがら)を加える
・飾る期間が地域により多様
東北地方 ・福島県から関東にかけて伝播 ・地域により飾り方や期間が異なる
伊勢神宮 ・神聖な場所ならではの特徴 ・注連縄に柊を挿す
・トゲのない柊を使用

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