打ちづらい配列になっているキーボード
キーボードでローマ字入力をする時に、慣れていないうちは「どうしてABC順に並んでいないんだろう」「何だか打ちづらいな・・・」と思う人も多いのではないでしょうか。
上から順に文字列を見てみると、「QWERTYUIOP」「ASDFGHJKL」「ZXCVBNM」と並んでおり、規則性はないように見えます。
このキーボードの配列は、左上段のキーの並びから「QWERTY配列(クワーティはいれつ)」と呼ばれ、タイピング初心者が難しさを感じてしまうポイントの1つ。指をあちらこちらに動かしながらキーボードを打つのは、簡単なことではありません。
タイピングの効率も良くはなさそうなのに、いったいなぜこの配列になったのでしょうか。
キーボードがQWERTY配列の理由
キーボードがQWERTY配列である理由は、諸説あります。ここからは、現在までキーボードにQWERTY配列が用いられているわけをご紹介しましょう。
タイプライターから引き継がれたため
パソコンのキーボードは、手動式の英文タイプライターの流れを引き継いで作られています。
当初、タイプライターのキーの配列はABCの順序を少し改良した状態で並べられていましたが、電信学校や電信会社に売り込まれると、受信したモールス信号を文字起こしする際にこの並びでは不便だという意見が寄せられました。
その結果、英語でよく使われる文字は中央に寄せられることに。さらには、「er」や「ed」、「th」など、綴りとして並んで出てくることが多いキーもすぐに打てるようそれぞれの近くに集められ、QWERTY配列の基礎が誕生しました。
最終的には、開発者に特許使用料を支払いたくないがために「M」の位置が下段に移動されるという世知辛い事情も加わり、今のキーボードと同じ並びになったと言われています。
他にも、タイプライターは速く文字を打ちすぎるとアームが絡んで故障してしまうことがあったため、わざと打ちにくいキーの配列にしてタイピングの速度を落としたという説もあります。しかし、「er」などの文字が近くに配置されている点を見ると、定かとは言えないようです。
「TYPEWRITER」と入力しやすくするため
こちらも確実ではありませんが、セールスマンがタイプライターを売り込む時に、「TYPEWRITER(タイプライター)」という単語を素早く打てるようにQWERTY配列にしたという説も存在します。
上段のキーを見てみると、確かに1列で単語が完成する並びになっており、スマートに文字を打ってプレゼンテーションするセールスマンの姿は、お客さんの目には魅力的に映ったかもしれません。
他社製品への乗り換えを防ぐため
そして、タイピングの練習を必要とする文字配列は、他社製品への乗り換えを防いだ側面があるのではとも考えられています。
キーボードの配列は、これまでにQWERTY配列以外にもたくさん開発されてきました。しかし、せっかく練習して速くタイピングできるようになったのに、他社の違う配列のキーボードを購入してもう一度練習し直すのは、購入者からすればかなり億劫ですよね。
QWERTY配列じゃないキーボードの配列もある
他に知られているキーボードの配列には、入力スピードを効率化させた「Dvorak配列」や、タブレット端末などで両手の親指を使って打ち込むことを想定した「KALQ配列」などがあります。
いずれもまだQWERTY配列に取って代わるような普及率ではありませんが、どちらもQWERTY配列よりも速く打ち込めるという理由で、個人が好みに合わせて選んでいることもあるようです。
キーボードの不規則な並びには理由があった
キーボードの文字の配列が複雑なのは、タイプライターの開発の歴史に関わっていることをご紹介しました。
英字だけでなく、カナ文字の配列に関しても、元はカナ入力ができるタイプライターを元にキーが配置されています。
今後、QWERTY配列ではないキーボードがメジャーになることがあるのか、新たな発明を楽しみに待つことにしましょう。