人ではなく柱で数える日本の神様、その理由に驚きの歴史が
「伊勢神宮には何柱(なんばしら)の神様がいらっしゃるのでしょうか」
神社の案内板でこんな表現を目にしたことはありませんか?神様を数えるとき、私たちは「1人、2人」とは言いません。代わりに「1柱、2柱(ひとはしら、ふたはしら)」という数え方をします。
これは日本独特の表現方法です。欧米の宗教では神は唯一の存在として扱われることが多く、そもそも数える概念自体があまりありません。しかし日本では、八百万(やおよろず)の神々という言葉が示すように、たくさんの神様の存在を認める文化が古くからありました。
では、なぜ神様を「柱」で数えるのでしょうか。この数え方の背景には、日本人の自然観や信仰の歴史が深く関わっているのです。
神様と柱が結びつく3つの重要な理由
日本人が神様を柱で数えるようになった理由は、主に3つあります。いずれも日本古来の信仰や文化と密接に結びついています。
まず1つ目は、古代からの樹木信仰です。日本人は古くから、特に大きな木に神様が宿ると考えてきました。樹齢何百年という巨木は、まさに天と地を結ぶ柱のような存在でした。現代でも神社には御神木が存在し、大切に守られているのはこの考え方が受け継がれているからです。
2つ目は、柱を神聖な存在として扱う伝統です。例えば、長野県の諏訪大社で7年に一度開催される御柱祭。樹齢数百年の巨木を神様の依り代(よりしろ)として奉納する壮大な祭りが、今でも続けられています。また、伊勢神宮の正殿中央にある「心御柱(しんのみはしら)」も、神様の依り代として特別な意味を持っています。
3つ目は、家の大黒柱に対する信仰です。かつての日本人は、家の中心となる太い柱に神様が宿ると考えていました。「大黒柱」という言葉が、今でも家族を支える大切な存在を表す比喩として使われているのは、そんな信仰の名残なのです。
知っておきたい神様の6つの数え方、使い分けにも意味がある
「柱」「座」「神」「体」「尊」「位」
実は神様を数えるのに使われる単位は「柱」だけではありません。場面や状況によって使い分けられる6つの単位があり、それぞれに独自の意味や由来があるのです。
まず代表的なのが「柱(はしら)」です。これは神様の人格や魂を表現するときに使われます。例えば「天照大神一柱(あまてらすおおみかみひとはしら)」というように、神様の存在そのものを数えるときに使います。神社の案内でよく目にするのは、まさにこの「柱」という単位です。
次に「座(ざ)」。これは神様が鎮座している場所や、ご神体として祀られている状態を数えるときに使います。「この山には三座の神様が鎮座している」といった具合です。平安時代に編纂された『延喜式神名帳』では、全国の神社の神様を「座」で数えています。
「神(しん)」という数え方もあります。「天神七神」のように、特定の神様のグループを数えるときによく使われます。ただし、これは比較的新しい数え方だと言われています。
お守りやお札も神様に関係する独自の数え方がある
神社で授かるお守りやお札には、また違った数え方があります。これらは神様の分身とされ、「体(たい)」という単位で数えます。「お守りを一体(いったい)授かる」という言い方は、このためなのです。
「尊(そん)」は、主に仏様を数えるときに使う単位です。「阿弥陀如来一尊(あみだにょらいいっそん)」というように使います。神仏習合の影響で、神様に使われることもありますが、これは比較的まれです。
最後に「位(い)」。これは人間が神様になった場合の数え方です。例えば、菅原道真が天神様として祀られる場合、「天神一位(てんじんいちい)」と数えることがあります。
このように数え方が細かく分かれているのは、日本人が神様との関係を非常に丁寧に考えてきた証とも言えるでしょう。一般的な会話では「柱」を使っておけば間違いありませんが、場面によって使い分けられる豊かな表現があるのは、日本語ならではの特徴です。
神社で使う道具や建物にも独自の数え方がある
神様を取り巻く文化の深さは、神社で使われる様々な道具や建物の数え方にも表れています。例えば、お神輿は「基(き)」で数えます。これは動かせない重要なものを数える単位で、「一基のお神輿」というように使います。
絵馬には面白い特徴があり、二通りの数え方があります。通常は「一枚、二枚」と数えますが、馬の代わりとして奉納する意味を重視する場合は「一体、二体」と数えることもあります。これは、かつて生きた馬を神様に捧げていた習慣が、絵馬という形に変化した名残なのです。
仏壇には「基」「台」「本」という3つの数え方があります。「基」は動かしにくい重要なものという意味、「台」は家具としての側面、「本」は職人の作品という意味が込められています。それぞれの見方によって使い分けられているのです。
神様の数え方から見える日本人の繊細な心づかい
神様の数え方を知ると、そこには日本人特有の繊細な心づかいが見えてきます。「柱」「座」「神」「体」「尊」「位」という6つの単位は、それぞれが神様との関係性や状況を表現しているのです。
これは、自然と共に生きてきた日本人が、目に見えない存在への敬意を言葉で表現してきた知恵とも言えます。神様を数える単位が複数あるのは、決して複雑にしたいがためではなく、それだけ丁寧に神様と向き合ってきた証なのです。
現代でも、神社に参拝する際には「柱」という数え方を知っておくと、案内板や説明文をより深く理解することができます。また、お守りやお札を授かるときに「体」という単位を使えば、神社の方々との会話もより適切なものとなるでしょう。
このような日本独自の数え方の知識は、単なる雑学ではありません。それは私たちの先人が、目に見えない存在との関係を大切にしてきた歴史の証でもあるのです。あなたも、神社で見かける案内や説明に、新たな発見があるかもしれません。ぜひ、周りの人にも教えてあげてください。そうすることで、日本の伝統文化の素晴らしさを、より多くの人と共有することができるはずです。
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