『侍』と『武士』
歴史ドラマや時代小説、さらにはゲームやアニメでもよく目にする「侍」と「武士」。なんとなく同じようなイメージで使われがちですが、実はそれぞれに由来や意味の違いがあるのです。
侍とは
「侍（さむらい）」の始まりは、奈良時代よりも前にまでさかのぼるとされています。元々は「見張る」「見守る」といった意味を持つ言葉が時代とともに形を変えていったそうです。その過程で「さもらう」「さぶらう」といった表現に変化。平安時代には「身分の高い人のそばに仕えている者」という意味合いを持つようになります。
その後、「～する者」を指す言い回しと結びつき、「さぶらひ」「さぶらい」と呼ばれるように。「さむらい」という発音が一般化したのは室町時代から戦国時代にかけてのことです。
当初は武士に限らず、貴族などに仕える様々な職業の人々も「侍」と呼ばれていました。しかし、時代が進むにつれて「侍」は主に武力をもって仕える武士を指す言葉として定着しました。
武士とは
「武士」は、武力を生業とする人々を指す言葉。侍と違い仕える相手がいるかどうかに関係なく、戦うことを本分としていれば、たとえ浪人のように主君のいない者でも武士と呼ばれていました。
また、武士を「もののふ」と呼ぶことがありますが、これは古代の「物部氏（もののべし）」に由来するとされています。「物」は武器や戦の道具を指し、「部」はそうした役目を担う人々の集まりを意味しており、「もののふ」は武器を扱う戦いのプロという意味合いを持っていたそうです。
『侍』と『武士』の違い
現代では「侍」と「武士」という言葉はほぼ同じ意味で使われることが多いですが、元々の意味には違いがありました。
「侍」とは、本来、身分の高い人物のそばで働く人を指しており、貴人に仕えるような上位階級の武士を指す言葉だったとされています。とはいえ、必ずしも戦う役割を持っていたわけではありません。昔は貴人のそばに使えていれば武士以外の職業も侍と呼ばれることがありました。
一方で「武士」は、武力を生業とする者のこと。身分の高さや仕える相手がいるかどうかに関係なく、戦いを本職とする人を指していました。武器を持って戦う者全般を指す言葉です。
江戸時代以降、武士が将軍や大名に仕えるようになると、武士と侍の境目が曖昧になり、両者がほぼ同じ意味で使われるようになったといわれています。
