海賊が眼帯をする理由とは?ケガだけでは語れない意外な説

雑学

海賊の眼帯は暗闇対策だったという説

海賊といえば、片目を覆う黒い眼帯。剣やピストルと並んで、「海賊らしさ」を感じさせるアイテムの一つです。

普通に考えれば、戦いで目を負傷したからだと思いたくなります。ところが、眼帯にはまったく別の理由だったという有名な説があります。

それが、片目を暗闇に慣らしておくためという説です。

明るい甲板にいる間は、片方の目を眼帯で覆っておく。そして暗い船内へ移ったら眼帯を外し、暗さに慣れていた目を使う。ずっと光を浴びていた目より、暗い場所を見やすくするという発想です。

まるで映画に出てきそうな海賊の知恵ですが、そんな使い方は本当にできるのでしょうか。

眼帯を外せば暗い船内でも見えやすくなる

明るい屋外から暗い映画館へ入った瞬間、足元や座席がよく見えなかった経験はないでしょうか。それでも、しばらくすると暗いままなのに周囲が見えてきます。

これが「暗順応」です。目は明るい場所から暗い場所へ移っても、一瞬では暗さに対応できません。暗い環境で見えやすくなるまでには時間がかかります。

ところが、片目をあらかじめ光から守っておけば、その目は暗さに対応した状態を保ちやすくなります。明るい光を見る必要があるときに片目を閉じ、その目の夜間視力を保つという方法も知られています。

海賊の暗順応説も同じ発想です。明るい甲板では片目を覆い、暗い船内へ入ったら眼帯を外す。両目とも明るさに慣れてしまった状態より、暗い場所へ対応しやすくなるというわけです。

もちろん、眼帯を外した瞬間に真っ暗闇が昼間のように見えるわけではありません。それでも「片目だけ暗さに慣らしておく」という方法そのものには、科学的な合理性があります。

暗順応説は史実として確認されていない

ここまで聞くと、「なるほど、だから海賊は眼帯をしていたのか」と納得してしまいそうです。

しかし、この説には大きく欠けているものがあります。

海賊が本当にやっていた、という歴史的な裏付けです。

眼帯で片目の暗順応を保つ方法には根拠がありますが、昔の海賊がその目的で眼帯を常用していたことを示す確かな歴史的証拠は確認されていません。

「眼帯を使えば暗闇に備えられる」と「海賊が実際にそうしていた」は別の話なのです。

理屈が海賊の生活にぴたりとはまるからこそ、事実のように感じやすいのかもしれません。暗順応説は、科学的に可能なことがそのまま歴史的事実になるわけではない、という少し意外な雑学でもあります。

片目の損失に銀貨100枚を定めた記録もある

では最初に想像した、「ケガした目を隠していた」という話は間違いなのでしょうか。

こちらは、すべてが作り話というわけではありません。海賊を含む船員のなかには、実際に片目の視力を失った人がいました。

さらに興味深いのが、17世紀のバッカニアについて残された記録です。そこには、航海で負傷して身体の一部を失った場合の補償額まで細かく記されています。

右腕なら600、左腕なら500、右脚なら500、左脚なら400。そして、片目を失った場合には「pieces of eight」と呼ばれるスペイン銀貨100枚という補償が定められていました。

目や手足を失うことは、物語を派手にするための設定だけではありません。あらかじめ補償額を決めておくほど、当時の海上生活では現実的な危険だったことが伝わってきます。

この記録だけで「海賊の眼帯は負傷が理由だった」と一般化することはできません。

ただ、暗順応目的だった史実は確認されていない一方で、片目を失う危険そのものは確かに存在していました。

眼帯は海賊の定番イメージになった

それでも私たちは、海賊と聞けば眼帯を思い浮かべます。歴史上の海賊がそろって眼帯をしていたわけではないのに、なぜこれほど強いイメージが残ったのでしょうか。

そこには、小説や舞台、映画などで繰り返し作られてきた「海賊らしい姿」が関係しています。後世の海賊像に大きな影響を与えた作品として知られるのが、ロバート・ルイス・スティーヴンソンの『宝島』です。

ところが、ここにも面白いズレがあります。

海賊の代表格として知られるロング・ジョン・シルバーは、原作では眼帯をしていません。

現在の「眼帯をした海賊」は、一人の有名な海賊の姿をそのまま受け継いだものではありません。文学や舞台、映像作品のなかで海賊らしい特徴が重なり、次第に「これぞ海賊」という定番の姿へ育っていきました。

海賊の眼帯には、暗順応という科学的に筋の通った説があります。片目を失う危険が現実だったことを示す補償記録も残っています。

しかし、どちらか一つを「海賊が眼帯をした本当の理由」と決めることはできません。

史実ともっともらしい説、そして後世の創作が重なって、現在の「眼帯をした海賊像」が形づくられてきたと考えると、その定番スタイルの見え方も変わってきます。

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