フォークの歯が4本になったきっかけはスパゲッティ

食卓でよく見るフォークは、歯が4本のものが一般的です。あまりにも見慣れているため、「フォークとはそういう形」と思いがちですが、最初から4本歯が当たり前だったわけではありません。
4本歯のフォークが広まった理由としてよく語られるのが、スパゲッティとの関係です。
一説では、18世紀のナポリ王の宮廷で、外国の賓客にスパゲッティをふるまう際、手づかみではなく上品に食べられる道具が求められたとされています。
当時のスパゲッティは庶民的な食べ物でもあり、手で食べられることもありました。しかし、宮廷の食卓ではそうはいきません。
そこで、麺を絡め取りやすく、口へ運びやすい形として、4本歯のフォークが注目されるようになったといわれています。
昔のフォークは肉を刺す・押さえる道具だった

もともとのフォークは、現在のようにさまざまな料理を食べるための道具というより、肉を刺したり、切り分けるときに押さえたりする役割が中心でした。そのため、2本歯や3本歯でも十分に使えたのです。
大きな肉のかたまりを押さえる、皿の上の食材を突き刺すといった使い方なら、歯の本数は少なくても困りません。むしろ、単純に「刺す」道具として見ると、歯が多すぎない方が扱いやすい場面もあります。
ただし、2本歯のフォークには、歯と歯の間から食べ物が落ちやすいという弱点もありました。刺すだけなら足りても、細かい食材を支える、すくう、口へ運ぶとなると、より安定して食べ物を受け止められる形が必要になります。
こうして、フォークの歯は3本、4本へと増えていったと考えられています。
スパゲッティを上品に食べるには3本歯では足りなかった

スパゲッティは、今ではフォークで巻いて食べるのが自然に感じられる料理です。しかし、細長い麺は、肉のように刺して固定するだけでは食べにくい食材です。
3本歯のフォークでも、食材を刺したり支えたりすることはできます。ただ、スパゲッティを巻き取ろうとすると、麺が歯の間からすり抜けたり、まとまりにくかったりします。
麺を上品に食べるには、刺す力よりも、絡めてまとめる力が必要でした。
歯が4本になると、麺が引っかかる場所が増えます。フォークをくるくる回したときに麺がほどよく絡み、ひと口分をまとめて口へ運びやすくなるのです。
3本から4本への変化は、単なる本数の違いではなく、「刺す」道具から「絡めて運ぶ」道具への変化でもありました。
5本や6本は口に入れにくく広まりにくかった

では、麺を絡めやすくするなら、5本や6本の方がさらに便利なのではないかと思うかもしれません。実際、歯の本数が増えれば、食べ物を支える面は増えます。
ただし、歯が増えるとフォークの先端は横に広くなります。そうなると、口に入れにくくなったり、ひと口で扱うには大きすぎたりします。食べ物を集めやすくても、口へ運びにくければ食事の道具としては使いにくくなってしまいます。
4本歯は、麺を絡める力と口へ運びやすい大きさのバランスがよかった形だと考えられます。多ければ多いほど便利なのではなく、食べやすさにはちょうどよい本数があったのです。
フォークの本数を見ると食べ方の工夫が見えてくる

一般的な食事用フォークは4本歯が多いものの、すべてのフォークが必ず4本というわけではありません。料理や用途によっては、今でも2本歯や3本歯のフォークが使われることがあります。
たとえば、ケーキ用のフォークや魚料理用のフォーク、貝類を食べるための小さなフォークなどは、形や歯の数が少しずつ違います。
これは、食材を切る、ほぐす、刺す、すくうといった動きに合わせて、使いやすい形が変わるためです。
そう考えると、フォークの歯の数は単なるデザインではありません。
肉を押さえる道具だったフォークが、スパゲッティを絡めて食べる道具としても使いやすく変化したように、食器の形には、その時代の食べ方や料理との付き合い方が残っています。
次にフォークを手に取ったときは、歯の本数にも少し目が向くかもしれません。


