『オペラ』と『ミュージカル』
オペラとミュージカル。華やかな舞台で繰り広げられる歌や演技。どちらも似ているようで、実はルーツや演出方法、音楽の使い方などに大きな違いがあります。
今回は「オペラ」と「ミュージカル」の違いをわかりやすく解説。観劇をもっと楽しむためにも、それぞれの特徴をしっかり押さえておきましょう!
ルーツ
まず、オペラの起源は16世紀末のイタリア・フィレンツェにあります。当時、古代ギリシャの悲劇を復興しようという動きの中で、音楽家や詩人たちが集まり、新しい芸術表現としてオペラを生み出しました。
最初の作品とされるのは、ヤコボ・ペーリによる「ダフネ」ですが、現存する楽譜は残っていません。その3年後、メディチ家の娘マリアがフランス王アンリ4世へ嫁ぐ祝典で「エウリディーチェ」が披露されました。こちらはペーリとカッチーニが音楽を担当し、現存する最古のオペラ作品とされています。
この頃のオペラはシンプルな構成でしたが、次第に舞台装置や演出が豪華になり、観る者を圧倒する壮大な作品が増えていきます。
一方で、ミュージカルの起源は前述した「オペラ」と、そこから発展した「オペレッタ」です。壮大なオーケストラと歌声で物語を紡ぐ、格式高い芸術だったオペラを、もっと気軽に楽しめる舞台にしたのが「オペレッタ」です。オペラより短く、内容も軽やかでユーモアを交えたオペレッタは、庶民にも親しまれるようになりました。
その後、オペラやオペレッタは海を渡り、アメリカへと伝わります。そこで、当時人気だったミンストレルショー(黒人の文化を模したパフォーマンス)や、さまざまな出し物を詰め込んだヴォードヴィルなどの大衆エンターテインメントと融合。こうして新たに生まれた舞台芸術が「ミュージカル」です。
発声
ミュージカルとオペラの最大の違いは「声の出し方」にあります。
ミュージカルでは、私たちが日常的に耳にするような自然な声や裏声を活かして歌われます。役者は歌うだけでなく、踊ったり激しく動いたりしながら演じるため、声をしっかり届けるためにマイクが欠かせません。
一方、オペラでは「ベルカント唱法」と呼ばれる独特の発声法が用いられます。これは、喉に無理なく響きを広げることで、マイクなしでもホールの隅々まで声を届けられる技術です。動きが少ないオペラでは、演者が全身を使って声を響かせることに集中するため、特別な事情がない限りマイクを使うことはありません。
演出
ミュージカルとオペラでは、作品の中で特に重視される要素が異なります。
ミュージカルでは、ストーリーの進行に合わせた音楽や演出が重要とされています。歌、演技、ダンスなど、さまざまな要素が調和していることが、作品の質を決定づけます。
一方、オペラでは歌唱が中心となります。登場人物の感情やストーリーは、セリフではなく歌によって表現されます。物語の進行に加え、感情の細かな表現も歌で行われるため、ダンスが必要な場面では、専門のダンサーが登場して演技を補完します。
音楽
ミュージカルでは、ロック、ポップス、ジャズなど、さまざまな音楽ジャンルが取り入れられています。最近では、事前に編集された音源を本番で流すスタイルが主流となっています。
一方、オペラではクラシック音楽が使われ、劇中のセリフや感情を歌で表現するのが特徴です。オペラでは、通常、生演奏のピアノやオーケストラが伴奏を担当します。
オペラやミュージカルを見に行ったときに今回の雑学を思い出してみよう
今回の雑学を振り返ってみましょう。
オペラは16世紀末、イタリア・フィレンツェで古代ギリシャ悲劇の復興を目指して誕生したとされています。一方、ミュージカルはオペラやオペレッタがアメリカに渡り、ミンストレルショーやヴォードヴィルと融合して生まれました。
ミュージカルは動きながら歌うためマイクが必要ですが、オペラはベルカント唱法を使用し、マイクなしで声を届けます。
また、ミュージカルでは音楽や演出のバランスが重要で、オペラは歌唱が中心です。音楽に関しても違いがあり、ミュージカルはロックやジャズなど多様、オペラはクラシック音楽が主に使用されます。
今回の雑学、オペラやミュージカルを観賞したときにでも思い出してみてください。