将棋の歩兵の裏はなぜ「と」なのか?
みなさん、将棋はお好きですか?将棋で遊んだことがある方ならお分かりだと思いますが、将棋の駒のひとつ「歩兵」の裏には『と』と書かれた文字があります。どうして歩兵の裏に『と』と書かれているのか…その理由、気になりませんか?
実は、この『と』が書かれた背景には様々な説があるのです。
【諸説1】「と」ではなく「金」のくずし字説
まずは、少しだけ歩兵のおさらいをしましょう。歩兵は表側に「歩」、裏側に「と」が書かれている駒。基本的に前に1マスずつしか進めませんが、相手の陣地に入ると裏返り「金」と同じ動きができるようになります。このように裏返って動きが変わった歩兵を「と金」と呼び、「と」と省略されることも多いです。
そのため、実は「と」に見える文字は、金のくずし字なのではないかという説です。正直、いくら”くずし字”とはいえ、「金」を「と」だと思うのは無理がある気はしますが理には適っています。
【諸説2】「今」のくずし字説
数ある説の中で有力なのが、この説。前述した「金」という漢字は「きん」だけでなく「こん」とも読みます。昔の日本には、同じ読み方をする文字同士を同じように扱う文化がありました。
このことから「きん」や「こん」と読む「今」を「金」の代わりに使ったとされています。また、駒の裏に書かれている文字は、崩した草書体の「今」だと言われています。たしかに、「今」のくずし字であれば『と』に見えなくもなさそうです。
【諸説3】「止」の字を略した「と」という説
最後に紹介するのは歩の裏側に描かれているのは「止」の略字である「と」であるという説。略字というのは、文字を簡略化して書いたもの。
歩兵の裏を「止」にした理由については、歩兵の「歩」という字が「止」と「少」を合わせてできていたから。「歩」の一部を取って裏側に「止」と略すことで「歩兵が成った駒だ」と一目で分かるようにしたのではないかと言われています。そこからさらに略字化して『と』になった可能性があります
さらに、歩兵の駒は全体的に数が多め。製作時、裏側に「金」と書くのは正直手間だったでしょう。そこで「止」の略字を使って「と」を書いて省略したという説もあります。
歩兵を見かけたら今回の雑学を思い出してみよう
正直なところ、今回紹介した説のどれが正解なのかは現代においても明確にはなっていません。ただ、「今」のくずし字説が有力候補であるとされています。みなさんは今回紹介した説の中でどれが一番しっくりきましたか?
将棋の歩兵を見かけたら、ぜひ今回の雑学を思い出してみてください。